

広い工場内。世界のほとんどの自動車メーカーで使用されている「スクラップベーラー」の試運転が行われていた。
2年後に創業200年を迎える高崎市の小島鉄工所。自動車のボディーを形作る際に使用する大型油圧プレス機などを製造している。世界のほとんどの自動車メーカーが使う機器も製作しており、“群馬発世界”を実践している本県を代表する「ものづくり企業」の一つだ。鉄鋼や建設機械などとともに一時は衰退の危機に瀕(ひん)した業界だったが、ブラジル、ロシア、中国などの急速な発展により、近年は再び受注が相次いでいる。とはいえ、製品を作る過程で使用される機器のため、一般消費者にはなじみが薄い。実際はどんなことをしているのか見学した。

プレス機の一部。人と比較すると巨大さが分かる。
プレス機は、工業用油を使う「液圧(油圧)」と「メカニカル(機械式)」の2種類に大別される。同社が製造するのは油圧のみだが、メカニカルに匹敵するスピードで動く能力を持ったプレス機を開発するなど「高速化」を成功させている。
JR群馬八幡駅近くの八幡工場は敷地面積約3万8400平方m。工場内に入ると、その広さだけでなく、天井の高さにも圧倒される。アジア最大とされる加圧能力1万5000tのプレス機のサイドフレーム(支柱)が目に飛び込み、地上11mにある天井クレーンが運ぶ部品の巨大さに驚く。まるでガリバーの世界だ。
従業員は主に機械、組み立て、溶接の3部門に分かれて作業。組み立ては造船所のドックのような巨大な穴「ピット」で行う。基本は工場内で作業するが、大きさによっては発注者の工場などで組み立てることもあるという。

明治時代に開発製造されたしょうゆ醸造用の水圧機
途中、ピットに置かれていた茶褐色の小さなプレス機が目に留まった。周囲のプレス機と比べれば「子供サイズ」だが、同社の液圧プレスの原点である明治時代に開発製造した、しょうゆ醸造用の水圧機だと知り、言い知れぬ感動を覚えた。
続いて、人だかりができていた高さ3mほどの機器をうかがうと、自動車のボディー製作時に余った鉄板を処理する「スクラップベーラー」の試運転の真っ最中だった。ドラム缶5杯分が40秒ほどで40cm大の立方体の塊となり機械から出てきた。世界のほとんどの自動車メーカーで使用されているという“名機”だ。
ステンレスキッチン、自動車、リニアモーターカー、ロケットなど身近な物から夢のある製品の製造を支える同社。児玉正蔵社長は「ユーザーの要求を聞くだけでなく、こちらから提案もし、今後もより高度な技術でより優れた製品づくりにまい進したい」と話す。
【会社概要】
江戸期の1809年、鋳造業として創業。富岡市の貫前神社の天水桶、皇居二重橋の橋げたや装飾部を鋳造したほか、国産第1号の水圧機を開発した。1940年から大型油圧プレス製造を本格的に開始。一時は軍需工場となったが、戦後は国内の重電重工業に機器を納入。国外企業との技術提携も図り、エレクトロニクスや航空機分野にも進出した。