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神流川のきらめきから光化学の世界へ 豊かな人材を生む環境を大切に

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研究の原点は神流川の水面

 東京工業大大学院教授であり、同大環境プロジェクトのメンバーである渋谷一彦さんも、群馬県に生を受けた一人。
 万場町で生まれ、生後4カ月ほどで神奈川県へ移ってからも母の実家がある万場町を頻繁に訪れていた。「そこでの体験が私の研究の源」と渋谷さん。神流川でハヤをとったり、岩場で遊んだり。水面がキラキラと光る様と、連続的に流れる川音が印象に残った。一方、引っ越し先近くにある海は、水面こそ同じように輝いているものの、リズムのある波音を奏でている。光と音に興味を持った渋谷さんは、光化学の道へ進んだ。

研究を重ねて環境と安全を守る

 「環境に恵まれました」と話す東工大時代。後に文化功労者となる田中郁三名誉教授から光と化学のロジックを詳しく学び、ますます光の魅力に取り付かれた。新しいものが開発されたと聞けば、世界中どこへでも飛んでいき、未開の分野に挑んだ。その結果、量子化学の分野では世界レベルの研究者に上り詰めた。アメリカの専門誌には、今も渋谷さんの論文が最も進んだ研究として掲載されている。現在は東工大が進める環境プロジェクトのメンバーとしても活躍。健康へのリスクを低減させる、オゾンと水の濃度についての研究を重ねている。
 同時に、草津にある草津白根観測所(東工大火山流体研究センター)のセンター長も務める。ここは化学的手法に物理学的手法等を加えて活動的火山を観測し、噴火の予測の高度化を図って災害を軽減させることを目的とした施設。実際、気象庁にも避難勧告を出す基準となる情報を流し、人々の安全に寄与している。

テーマを見つけて一生懸命

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 今でも時折、群馬に足を運ぶ渋谷さん。以前と変わらぬ神流川のきらめきを目にするたび、心がふんわりと温かくなるのを感じる。赤城・榛名・妙義をぐるりと見渡すと、たまらなくうれしい気持ちになる。単に環境ということでなく、豊かな人材をはぐくむ土壌としてもきれいなふるさとを残していくことが大切、と言う。
 職業柄、未来ある若い人と接することが多い渋谷さんは、こう話す。
「やりたいこと、良いテーマを見つけて一生懸命やる。すると必ず見えてくるものがある」
 渋谷さんの言葉に後押しされ、何かを見いだした人が大勢いる。そういう人たちによって生まれた知と技に、私たちの安全や安心は支えられている。

 

【プロフィール】

しぶや・かずひこ 1947年万場町(現神流町)生まれ。東京工業大理学部化学科卒業、同理学研究科化学博士課程修了。カリフォルニア大博士研究員、東京工業大助手、ルール大客員研究員、カリフォルニア大日米協力研究員を経て、88年東京工業大助教授、99年より現職。夢は、天気予報ならぬ化学物質予報の実現。「気候の変動につながる人間の予知能力を高めたい。専門分野で世の中に恩返しできれば」と話している。