長年、本社宣伝担当を務め、、16年のロングセラーとなった「秋味」をはじめ多くの新商品の企画や宣伝に携わる。2004年9月、群馬支社長に着任。05年9月、群馬統括支社に組織変更。山梨県富士吉田市出身。
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シリーズ<3> 2006年9月20日掲載
群馬の「うまい!」を応援します。
キリンビール群馬統括支社長 加々美 晶 さん
「みのりくらぶ」(9月20日発行号)の紙面写真は、収穫時期に合わせ、今年(2006年)6月に前橋市内の農家の大麦畑で撮影をしたものです。
この日は、忙しい執務の合間、統括支社2階にある会議室でインタビューに答えていただきました。ここでは、時々「ビールの教室」が開催されるので、面白そうなビールグッズ≠ェ、いろいろと並んでいました。
 ■富士山を見ながら育つ■
群馬に赴任されて、どのくらいですか?
(加々美) 2年になります。
ご出身は?
(加々美) 山梨県の富士吉田市生まれです。富士五湖があって、山があって・・・。だからよく、川や湖で泳いだり、山で遊んだり。雪が降るのでそり遊びもしました。田舎なんだけど、観光地なので、東京化されている感じでしょうかね。
毎日、富士山を見て育ちました。もちろん、静岡県側からも見えますが、手前みそで、富士吉田から見る富士山が一番きれいですね。校歌には必ず出てきます。朝、起きたら、富士山が見えるし、学校の教室からも見える。どっしりと生活の中にありました。
ふるさとの味、「食」の思い出といえば?
(加々美) うどんですね。もともと、富士山のふもとは土地が肥えていないため、あまり名産物がなくて。特に、うどんはよく食べました。富士吉田のうどんは、最近、脚光を浴びているんですが、しょうゆ味で、すごくコシが強く、キャベツと油揚げが入っています。お祭りやお祝い事の料理といえば、赤飯にうどん、それからマグロの刺身。海がないので、お刺身、イコール、マグロなんですよ。群馬も蚕が盛んですが、富士吉田は、「甲斐(ルビ・かい)絹」といいまして、機織りのまちなんです。家内工業で、奥さんが働いて、だんなさんがうどんを打つ。家庭の味がそのままうどん屋になった、看板のない普通の民家の店がそこらじゅうにあるんです。
 ■群馬のシンボルって?■
これまで、転勤でどのような土地を歩いてこられたんですか?
(加々美) 入社して大阪、東京が長かったものですから、ほかは動いていないです。それで、2年前に群馬に単身赴任となったんです。
群馬の印象はいかがですか?
(加々美) とにかく、緑があって、自然が豊かだなあと思います。食材も豊富です。でも、特徴がないんですよね。群馬のおいしいものや観光地は何かと考えても、ぱっと思いつかない。こんにゃく、ネギも、あまりピンとこなくて。そういえば、草津温泉は福島県だと思われてるし、太田市は有名ですけど、栃木か茨城だと勘違いされていますよ。それが残念ですね。
 ■マグロにビールは最高■
今は単身赴任中ということですね。夜はお付き合いも多いと思いますけど、予定がないときはどうされていますか?
(加々美)

自分で作ったりもしますよ。凝ったものは作れないので、鍋になることが多いですね。お米をといだり、サラダを作ったり、結構、楽しみです。キャベツの千切りは大分うまくなりましたよ。スーパーでお総菜を買ったり、コンビニ弁当のときもありますが、やっぱり、自分で作った方がいいですね。

今の暮らしで、一番おいしいなあと思う食べものは?
(加々美) やっぱり、お刺身、マグロですね。マグロといっても赤身です。小さいころから食べているから、マグロだけは追求しますね。すし屋でも居酒屋でも赤身を頼みます。それから、焼き魚、かまぼこなど、魚系が好きです。ビールはなんでも合うので。刺身とビールはいいですね。
晩酌はどうですか?
(加々美) しますね。ビールやチュウハイを飲みます。家内の実家のお父さんがお酒を好きで。よく人が集まる家でして、食事といっても最初にご飯が出てきません。食卓には、まず、おつまみが並ぶんです。その食文化がそのままわが家にも浸透していて、単身赴任になっていますから、ついつい飲んでしまいますね。だから、太っちゃうんですよ(笑)。

余談ですけど、面白い話があって。「食器洗い機」って、あるでしょう。結婚した時、家内から「食器洗い機が欲しい」と言われましてね。無駄だと思ったんですけど、家内はうまいことを言うんですよ。「私は食事が終わった後、あなたと話をする時間が欲しい」と。でも、使っているのは私ですよ(笑)。家内はいろんな女性に「こう言ってみて」と教えているみたいです。逆に私は会社で同僚に勧めています。最初は「いらない」と言いながらも、だんだん使い始めて、いい夫婦関係になる・・・。すみません。ぜんぜん、違う話になりましたね(笑)。
 ■もっと元気な群馬になって■
キリンビールは群馬のビール大麦も使っていますね?
(加々美) 高崎に、ビールの原料となる麦芽を作る製麦工場がありました。群馬はもともと農業が盛んな所ですし、今でも群馬県産のビール大麦を使わせてもらっています。キリンビールが関東でビール大麦を購入しているのは、群馬と栃木。全国に10カ所ほどある生産地のうち、群馬での購入量は全国でも上位の方です。
「はばたく群馬に カンパイ」というスローガンがありますが、どんなキャンペーンを行っているのですか?
(加々美) キャンペーンというより、これは、私たちの気持ちなんです。ビールは大衆商品です。つまり、お客さまに一番接近している商品だと思います。各地に入り込んで、お客さまとコミュニケーションをとらないと、喜んで飲んでもらえません。群馬のスローガンを作ろうと考えたとき、「もっと元気になってほしい」と思い、群馬県の地形が、ツルが飛んでいる姿にたとえられることからヒントを得て決めました。
具体的にはどういうことをしているのでしょうか?
(加々美) 群馬県は食材の国≠ナす。ビール大麦も作っていただいています。ですから、地産地消を応援したい。今年からは、ザスパ草津を応援しています。単なる宣伝ではなく、その心は、「皆さんと一緒になって応援しましょう」ということ。普通は、競技場に看板ができ、宣伝効果があると考えますが、そちらは狙っていません。ですから、ザスパと契約するときも、「応援したいだけなんです」と。「選手やフロントの方々みんなと仲良くしたい。その中で、少しでもキリンビールを好きになってもらえれば、それだけでいいんです」、なーんてかっこいいこと、言ったんです。
効果は感じていますか?
(加々美) 企業ですから、売り上げも考えなければなりません。そういう意味では、この考え方は遠回りですよね。「キリンビールを売ってください。買ってください」ではなく、「皆さんと一緒の輪に入れてください。好きになってください」。でも、ちゃんと返ってくるんですよ。皆さんがいろんな機会で、「キリンビール好きです!」と言ってくれたり。ありがたいですね。このように人の中に入り込むことは大事だなあと思います。だから、私、いろんな所に行っていますよ。名刺の量といったらすごい! 名刺1箱が1週間ぐらいでなくなってしまいます。
 ■食材の国≠アピール■
先日(2006年7月末)は、JAグループ群馬と共催で「枝豆摘み取り体験」を開催し、好評でしたね。
(加々美) ありがとうございます。まずは、県民の皆さんとコミュニケーションをとりながらやりたい。それが本当の気持ちです。でもその前に、自分の地元の食材を知らなけらばならないと思うんです。地産地消ですよね。もっと地元の食材を体験してもらいたいし、それを応援したい。枝豆の前は、トマトの収穫もやりました。今後も続けたいですね。
全国で展開している「選ぼうニッポンのうまい!2006」キャンペーンで、群馬のうまい≠、今年は「上州牛」とされたのは?
(加々美) これも、応援したいからです。群馬出身の本社の社員に「上州牛」について聞いても、「知らない」とか「おいしいの?」と言われました。地元の人も、まだ、よく知らないんです。でも、応援することで、広がっていき、「上州牛って、おいしいね」「群馬に上州牛あり」となっていきます。「これでいい」ではなく、「これがおいしい」と、自信を持って勧めてほしいですね。
 ■「お客さまがすべて」です■
日本の農業の行く末を思うことはありますか?
(加々美) よく「自給自足」といいますが、実は、「自給自足」や「食育」という言葉は、あんまり好きじゃないんですよね。自分たち庶民の暮らしから離れていく気がしちゃうんです。中学生や高校生に「自給自足のため、国内のものを食べないといけないんだよ」って言うのは、経済的な発想から入っていると思います。食べる人のことを見ていない表現のように感じるんですね。「地産地消で地元のものを食べましょうよ」。そうした平易な言葉でいいと思うんですけどね。
私どもがアサヒビールにシェアを逆転された時、私たちは「あのビールに負けたくない」「あの味よりもっとおいしいものを作ろう」、そればかり考え、お客さまを見ていませんでした。お客さまが飲みたいビールを作ろうとは思っていなかったんです。だから、だめでした。今は、お客さまがすべてです。そこに気がつきました。
そうした考え方になったターニングポイントを教えてください。
(加々美) 結局、作っても売れないんですね。なんでだろう・・・と行き詰まる。そうした中で、トップから「お客さまだ」というビジョンが出たんです。それからは「一糸乱れず」というのかな、全社員の意志統一ができ、同じ方向に突き進んだんです。本当に、お客さまに接近することが大事だなあと思います。
また、「消費者」といいますが、消費する側というとらえ方で、上から下を見ている気がするんですね。友人が化粧品会社にいますが、かつて私が「消費者」と言ったところ、友人は「お客さま」と表現し、「おまえ、古いなあ」と言いました。10年たって、ようやく分かりましたよ。だから、今、うちには苦情やクレームという言葉もありません。すべて「ご指摘」です。「もっといい商品出してよ」というアドバイスだと思っています。
 ■「私の一番!」発信しよう■
ところで、余暇の楽しみは?
(加々美) サッカーです。東京で60〜70人のサッカーチームを組んでいます。平均年齢が45歳ぐらいで、上が80歳。その中では、私は小僧なんですよ。いろんな人がいるし、面白いですよ。でも、やっぱり、一番の楽しみは、終わってからのビールですね!
退職後のイメージとして抱いていることはありますか? 例えば、農業をやりたいとか。
(加々美) もともと私のルーツは農業なんです。田舎に帰ると田んぼがあります。でも、そちらにはいかないでしょうね。まだ、考えていないのですが、教えることが好きなので・・・。セカンドライフは講師みたいなことをやりたいなあと思いますね。
最後に、群馬県民に望むことは?
(加々美) 際立ったシンボルがないこともありますが、自信を持って「これだ!」と誇れるものを作っていくことが大事だと思いますね。個人でいえば、「私の一番!」でもいいですよね。県民一人一人が自信を持って「私の一番!」を発信していくのはどうですかね。
加々美さんの「私の一番!」は?
(加々美) 難しいなぁ・・・。いろいろ言っちゃいましたが、群馬はいい所だと思いますね。私は好きです。人がいいんですよね。人を受け入れてくれる心があります。私は、もともと田舎者です。皆さんの輪の中に入っていくのが好きで、入り込んでいく自信はありましたけど、それを群馬の方が受け入れてくれている―それが、一番ありがたいなあと思っています。
ありがとうございました。

(聞き手 上毛新聞社広告局次長兼編集部長 吉島一江)