シリーズ<8>  2007年5月23日掲載
 
<プロフィール>

●うちやま・まさひろ
1971年、群馬県入庁。環境保全課長や食品安全会議事務局長を経て、2004年4月、県教育委員会教育長に就任。群馬大学工学研究科修士課程修了。前橋市出身。

●いけだ・ひでひろ
1969年、群馬県入庁。秘書課長、保健福祉課長、企業局長、産業経済担当理事など歴任。2006年6月、県学校給食会理事長に就任。北海道大学経済学部卒。前橋市出身。
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給食は「よのなか」を考える時間。
群馬県教育長(県学校給食会長)
地場産物を給食に取り入れています。
財団法人群馬県学校給食会理事長
脱脂粉乳の時代から、地場産物の食材を積極的に取り入れるなど、質も内容も大きく変化している近年の学校給食。多忙なお二人にスケジュールの合間を縫って、その役割や今後の方向性などについて語っていただきました。(群馬県庁24階の教育長室にて)
 ■多岐にわたる学校給食の役割■
まず、内山教育長に伺います。学校給食も長い歴史がありますが、学校給食が果たしてきた役割や目標についてお聞かせください。
(内山) 学校給食は戦後間もなく始まりましたが、そのころは大変な時代で、子どもたちに少しでも栄養のある食事を与えようと考えられました。私の時代は、粉ミルク、つまり脱脂粉乳がずいぶん役に立ったと言われますが、当時と比べて食生活も改善されていますよね。こうした中、今の学校給食の役割は何だろうと考えると、一つは食事の時間としてみんなで食べることが大きい。お互いにコミュニケーションをとったり、食べているものについて話をしたり…。学校給食にはいろいろな役割があると思いますね。

東京杉並区で民間から初の校長になった藤原和博さん(2003年4月就任)は、「よのなか科」をつくりましたよね。考えてみると、給食の時間は「よのなか科」のようなもので、給食を食べながら材料についていろんな話題が出てくる。普通の授業にはないような、子どもたちがいろいろなことを考える時間。給食はそういう役割が大きいのかなと思います。
学校給食も時代とともに変遷し、役割も変わってきているということですね。次に池田理事長、今の学校給食会の取り組みについてお聞かせください。
(池田) 学校給食は多くの役割を持っていると思いますが、学校給食会として一番着眼しているのが、「児童、生徒の健全な心身の育成」ということです。学校給食会の事業目的として、二つの柱があります。一つは、「学校給食用物資の適正円滑な供給」です。念頭に置いているのは、「安心・安全」、それから、栄養バランスのとれたおいしいものを、安定的にできるだけ低価格で供給していくこと。さらに、地産地消として、なるべく地場産物を活用した給食を供給したいと思っています。

もう一つはソフト面で「学校給食の普及・充実事業」です。県教育委員会では、10月24日を「学校給食ぐんまの日」また、10月を事業推進月間と定めています。学校給食会では、この事業推進月間に地場産物を利用した場合、1人当たり20円を助成するほか、「学校給食ポスターコンクール」にも協力しています。

学校給食の対象は義務教育である小中学校の児童生徒、特別支援学校の盲・聾・養護学校の小・中学部など、また夜間課程を持つ高校の児童・生徒等で、約19万食を供給しています。
今年度から、給食の範囲は義務教育から幼稚園まで広がったということですが。
(池田) 学校給食の業務処理基準が廃止され、原則、義務教育だけの提供から業務が広げられました。ちょうど、市町村から公立の幼稚園にも提供してほしいという要請があり、県教育委員会と相談し、今年度より供給することになりました。この4月の段階で、13市町村44園、3,800人以上の園児が食べています。安心・安全で、おいしく、単価が安いので、これからさらに増えるものと考えています。
 ■「50のルール」と「ぐんま食育こころプラン」■
最近、食育について盛んに言われますが、県ではどのようなことに取り組んでいますか。
(内山) 子どもたちに日常生活の正しい習慣を身に付けてもらいたいと、県教委では「ぐんまの子どものための50のルール」を作成しました。「早寝早起き」「三食しっかり食べる」「家のお手伝いをする」など、日常生活の普通のルールです。こうしたルールをしっかり身に付けることは、学力向上よりも必要であり、具体的に進める上でも、学校給食の時間は非常に意味があります。例えば、お箸(はし)の持ち方一つにしても、言ってみれば文化だと思うんですよ。でも、お箸を満足に持てない子どももいる。そうしたことを少しでも直していくためにも、みんなで一緒に食事をすることは大事だと思いますね。

食育といっても、難しく考えずに、この食べ物がどこからきているのか。それこそ、「よのなか科」のようなものです。地場産だけではなく、外国から来ているものもあるでしょう。授業などいろいろな場面で子どもたちが一つ一つ調べていくことができれば、極めて具体的な勉強になっていくのかなあ、という感じがしますね。食育というのはそういうことだと思います。

今年から栄養教諭を配置されたそうですが。
(内山)

法律ができたこともあり、各教育事務所ごとの学校に栄養教諭を6人配置しました。学校には家庭科の先生もいるし、食べ物に関しては理科の時間もありますが、栄養教諭には食育などを中心になってやってもらいたいと思います。

学校給食会では、食育についてどのように考えていますか?
(池田) 今、教育長がおっしゃった食育の行政部分では、私も県食育推進会議の一員ですから認識しているのですが、県の食品安全会議が食育基本法に基づき、食育推進計画「ぐんま食育こころプラン」を作成しました。「食の大切さを理解して、食を通じて豊かな人間関係を育む」を理念に取り組んでいます。

また、食育に直接関与する部分では、いわゆる地産地消ですね。地場産物を活用した食材を提供しています。例えば、主食のお米は、県内産のコシヒカリ、ゴロピカリ、あさひの夢を、4:4:2の割合で混合した新米を提供しています。一等米が6割以上、二等米が4割以下なので、たいへんおいしいと評価されています。パンは、44種類のうち、8種類はダブル8号という群馬県が開発した県内産小麦で作っています。パンは今は8種類ですが、年々増やしていきます。めんは、きぬの波が7割、農林61号が3割と、主食はすべて県内産です。また、おかずなどは12種類を地場産で作っています。大粒の納豆をはじめ全製品が、児童生徒、学校栄養士からもたいへん評判です。

また、学校給食会が法人化されて今年の2月28日、50周年を迎えました。8月9日に県民会館で記念式典を行う予定で、8月9日から11日までの3日間は展示会をやりたいと考えています。学校給食のレプリカを展示するほか、食育の理念や地産地消をパネルとして出すなど、学校給食だけでなく、より広げたものとして展示して多くの人に給食や食育について理解を深めていただこうと計画を立てています。
(内山) 話を聞いていると、子どもたちは結構いいものを食べていますね。私のころは、脱脂粉乳ですからね(笑)。
地元の食材がずいぶん、給食に取り入れられていることがわかりますね。昔と比べて給食がおいしくなり、子どもたちからも人気のようです。
(池田) 今はメニューが豊富です。全国的にも朝ごはんを食べてこない子どももいますから、非常にいい栄養源になっていると思います。
 ■地場産物を使ったメニューも積極的に開発■
地元の食材は、さらに増やしていく方向なのでしょうか。
(池田)

そうですね。平成14年度より、学校給食会の中に地場産物活用開発委員会を設置して、学校栄養士の方に委員をお願いし、おもにおかずのメニューを考えてもらっています。また、校長先生や学校栄養士、共同調理場長などの代表者による物資委員会においても、先程の主食に係る開発に取り組んでくれています。学校給食は、生産量の少ないものは馴染まないため、産地と相談しながら、安定して出せるもの、また、給食としてふさわしいものを二つの委員会を中心に検討して取り入れています。毎年、2、3品開発されています。

学校給食の地場産の割合は、将来的にはどうなりますか?
(池田) 国の指針では、食材数で平成16年度の21%を平成22年度までに30%以上を目指すとされています。どの県もこれに準じて取り組んでいると思います。
 ■給食費の徴収システム改善を■
今、給食費の未納が増えているそうですね。
(内山) 給食費は、当然、保護者が払わないとならないものです。家計が厳しい家庭には市町村で手当てをしているので、払えないということは前提としてないんです。ですから、今、給食費の未納で問題になっているのは、払えないのではなく、払わない方なんですね。
未納金額はどのくらいあるのですか?
(池田) 群馬県で5,100万円、全国では22億円あります。給食費というのは、月当たり小学校で約4,100円、中学校で約4,800円。1日に直しますと、小学校で230円、中学校で270円位です。
(内山) 県教育委員会としては、徴収のシステムにも問題があるとし、公費会計できちっと予算立ててやったほうがいいと、市町村長さんにもお願いしているところです。できるところから取り組みたいと考えています。
 ■心に残るおふくろの味■
古里の味とか、心に残る味はどんなものでしょうか?
(内山) うーん、考えちゃいますね。心に残る味となると、土地から引き出されるものではなくて、母親が作ってくれたものでしょうね。私の母親はいろいろ作りましたが、母から妻、さらに子どもへと伝承されているのはギョーザなんです。こーんな(10aくらい)大きいギョーザ!皮から全部手作りです。私の母のお姉さん、つまり私の伯母が、満州に行っていて現地の人に習ったんですね。それを伯母が持ち帰って母に伝えて、母が妻に教えて、妻が子どもに教えて。もう最初とは味がぜんぜん違うんですけどね。でも、いつになっても私は好きで、友人が遊びに来たときも出します。すごく大きいから、昔は3つ食べましたが、今では2つも食べるとおなかいっぱいです(笑)。皮は地粉で伸ばして、中身はキャベツではなく白菜が原則です。ある程度焼いて、それからは蒸すので、普通のギョーザのイメージとはちょっと違うかもしれませんね。小さくして水ギョーザにしたりもします。私も作りますよ。
理事長さんはいかがですか?
(池田) 私も郷土料理的なものというより、おふくろの味ですね。昔は病気にでもならないと卵が食べられないような、貧しい時代でしたからね。やはり、おっきりこみとか、けんちん汁でしょうかね。おやつには、「じり焼き」って知っていますか?粉にみそを入れて焼くだけ。あれは、うまかったですね!
おふたりとも、群馬の特産物、小麦が関係していますね。
(内山) そうですね。手打ちうどんも大好きですね。それと、これは余分な話ですが、私の場合、バナナ。小さいときは、バナナなんて病気になったときぐらいじゃないと食べられなかったですよ。小学生のときは、早く一人前になって働いてお金を稼いで、山盛りバナナを自分の前に置いて食べたいと思っていました。(笑)今でも、私にとってバナナは特殊なものです。そういう意味では、今の子どもは、何でも手に入りますから、かわいそうですね。
(池田) 話題の地産地消でいうと、ギンヒカリや上州牛はなかなかのもの。また、吾妻を中心に盛り上がっているイノシシも、においがなくてやわらかくておいしかったですよ。
群馬は農業県だなあと実感するのはどんなところですか。
(内山) 話がちょっとズレるかもしれないけれど、昭和40年代に、リゾート開発の話が出たとき、私は今でいう環境保全課にいました。そのとき私は、「群馬県はこのままほっておけば、いい観光地になる」と言ってきましたけど…。できるだけ、今の自然を保っていく必要がある。それには農業だと思いますね。
(池田) 群馬の農業といえば、標高の非常に低いところから高いところまで、多種多様な野菜や果物が採れることでしょうね。生産量が全国5位までのものが25品目も入っています。首都圏の台所と言われますが、まずは群馬の台所となり、県民に安心安全なものを喜んで食べてもらいたい。群馬は概して宣伝が不得意でうまいものがあってもなかなか伝えられないでしょう。群馬でちゃんとレシピを作って、それが普及すれば郷土料理も増えるし、群馬の農もより発展すると思います。それには、県民にもっと食べてもらうことが大事だと思いますね。
ありがとうございました。

(聞き手 上毛新聞社広告局副理事・編集部長 渡辺佳幸)