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酉年の1月、ニワトリの日(28日)に、養鶏農家に生まれた都丸社長。小さい時から創業者のおじいさまに「家業を通じて世の中に役立つ人になる」ことを言われてきたそうです。天職とこころえ、「この仕事に携われることを本当に幸せに思っています」と言い切る笑顔が、まぶしく見えました。
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| ■日本人は世界一の卵好き■ |
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寒さが厳しくなってきましたが、都丸社長が今一番おいしいと感じる食べ物は何ですか? |
| (都丸) |
私はフグが好きなんですよ。肉か魚かとなると魚のほうが好きで、魚の中で何か一つ選ぶとなると、フグですね。
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卵はどうでしょうか?毎日、食べますか? |
| (都丸) |
もちろん、毎朝、食べています。朝ごはんに生卵を食べますね。当社の卵はもちろん、他社のものを買ってきて比べたり、毎朝、1つずつ生卵を食べています。殻の状態や中身のしまり具合、匂いなど、プロなりにいろんなチェックの仕方があるんです。そのほか、牛丼、すき焼き、おでんなども食べるので、毎日、最低2個は卵を食べていると思います。 |
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卵というと、高コレステロールという話がよく出ますが。 |
| (都丸) |
コレステロールは、以前はトータルコレステロールで表示されていましたが、今はHDLコレステロールとLDLコレステロールの二つに分かれています。気をつけなければならないのは、LDLコレステロール。卵で摂取されるのは、HDLコレステロールです。また、科学的にも、血中のコレステロール値と健康状態を調査すると、コレステロール値がある程度高い人のほうが寿命は長く健康だと実証されています。
昨年も日本鶏卵生産者協会が、アメリカのコレステロール研究の第一人者を招へいし、「コレステロールフォーラム」として、栄養士や医師に呼びかけて全国各地でフォーラムを開きました。その先生はこう言うんですね。「日本は世界で一番卵の消費量が多い。一年に330個食べる世界一の卵好きである。その食文化の日本人が世界一の長寿。それこそ、卵が体にいいという壮大な実験ではないか」と。アメリカでも、コレステロールの問題で卵の消費が急激に落ちたことがありましたが、近年は増えています。 |
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卵の食べ方では、どういう調理法が一番好きですか? |
| (都丸) |
一番おいしいと思うのは生卵ですね。生のままで食べるのは日本独自の食文化です。必ず醤油(しょうゆ)をかけるでしょ。醤油のこうじと卵の相性は最高なんですね。私は生醤油ではなく、だし醤油を使います。これが、またおいしい。ちょうど、新潟の知り合いから新米が届いていますから、炊き上がったご飯に生卵をかけて食べる、これが最高ですね。 |
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ご自分で料理をされることはありますか? |
| (都丸) |
私は養鶏家の息子ですから、子どものころは母親も忙しく、昼間、おなかがすいたら自分でチャーハンを作ったりしていましたし、学生のときも自炊していました。今は、家で食事することが、ほとんどないんですね。それでも、ときどき家にいる日曜日、洗いものとか、粗っぽいきざみ仕事とか手伝います。結構、上手ですよ!(笑) |
| ■ふ化・育成・採卵を一貫生産■ |
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会社概要を伺います。創業は大正14年ということですが。 |
| (都丸) |
この地域は養蚕のメッカで全部桑畑でした。どんどん桑の葉を切っておカイコさんにくれるわけですから、ものすごく肥料が必要なんです。化学肥料はありませんでしたから、今では信じられないと思いますが、イワシやニシンなどの魚を買ってきて畑に敷き込んだんです。肥料にこれだけの費用がかかるのでは、もうからない。肥料を自給するにはどうしたらいいか―。明治33年生まれの私の祖父・都丸但一は、「養鶏なら卵も肉も売れるし自給肥料もできる」と、25歳のとき養鶏を始めた。それが当社の始まりです。 |
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それは、興味深いお話ですね。社長は3代目ということですが、ご就任になられたのはいつですか?
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| (都丸) |
平成3年に父が63歳で亡くなりました。当時、私は34歳でしたが、跡継ぎとして社長に就任しました。
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卒業してすぐ、家業に就かれたのですか? |
| (都丸) |
大学を出てすぐにカナダに行き、約6カ月、種鶏(しゅけい)管理やふ化など養鶏の一般の技術を勉強しまして、帰ってきてから数カ月間、四国や九州の同業者のところで研修しました。翌年の春には戻り、それからずっとここにいます。
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卵の生産量というのは、どのくらいですか? |
| (都丸) |
卵を作るには、大きく分けて「雛(ひな)を作る(種鶏・ふ化)」「雛を育てる(育雛(いくすう)・育成)」「卵を産ませる(採卵・養鶏)」の3つのプロセスがあります。 まず、種鶏を常時、雌12万羽とその1割の雄で受精卵を作ります。受精卵の生産は1年間に約3000万個、それをふ化して約1000万羽の雌雛を生産し、北は青森から西は岡山まで販売しています。
約200万羽は、卵を生むところまで育て、関東甲信越を中心に販売。そのうちの約60万羽は当社の農場に導入します。現在、採卵・養鶏農場は3農場100万羽で、毎日約80万個、約50トンの卵を採卵し、主として西東京から神奈川に販売しています。源流から末端まで徹底した衛生管理をし、一つの資本で一貫生産している、それが当社の大きな特徴です。
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農場はどちらにありますか? |
| (都丸) |
群馬県内と、福島県には3農場あります。県内は、赤城山と榛名山の中腹にあり、種鶏農場が5農場、ふ卵工場が1カ所、育成農場が7農場、採卵・養鶏農場が3農場、鶏ふんの処理場が2カ所、パッキングセンターが1カ所、養牛が1農場です。 |
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全国的にもかなり大規模だと思いますが。 |
| (都丸) |
雛の部門では全国3位、育てる部門は10位以内、卵を産ませる部門では、20位ぐらいでしょうかね。それを全部一貫生産している企業としては全国3位ですね。 |
| ■鶏の能力と労働生産性の向上■ |
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トータルに管理する立場として、ご苦労な面があると思いますが。 |
| (都丸) |
一貫してやることの大変さは、どの部分もだれのせいにもできない、全部自分の責任ということですね。リスクもあるし、責任重大です。
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かなり徹底したシステムが構築されているのでしょうね。 |
| (都丸) |
皆さんが想像できないほど徹底してやっています。毎年、検査費用だけで何千万円もかかりますね。年間200〜300万の費用で通り一辺の検査をして、「すべて安全です」と言うような、そんな簡単なものじゃないんですよ。 |
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最近は、食の安全安心と、消費者も関心が高くなっていますが、かなり気を使う部分ですね。 |
| (都丸) |
アメリカの例でいえば、「鳥インフルエンザでは養鶏場はつぶれない」といいます。ただ、サルモネラ菌など細菌性の疾病を出した場合、もう立ち直れないですね。世間の評価というのは、ウイルスの感染など防ぎようのないものは許される。ただ、自分の責任の下にきちんと管理すれば防げる疾病や汚染などを引き起こしてしまった場合は許してくれないです。でも、それを確保するのは、難しいんですね。規格や規制がどんどん厳しくなっていますから。結局、それに対応できる生産者はものすごく限られてくる。そのためには、ある程度の歴史と規模が必要なんですね。実際、全国的に養鶏場の数は10年に1割減っています。 |
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卵は庶民に親しまれている食べ物で、いつも「価格の優等生」と言われていますが。 |
| (都丸) |
優等生というのは飛び級して上がるんですよ、いつまでたっても上がらないんだから、劣等生というほうが正しい(笑)。
昭和30年代初頭と比べても価格は下がっています。一番大きな理由は、為替です。日本では飼料穀物はほとんど自給できません。鶏の飼料では殻を作るために与える炭酸カルシウム以外は、トウモロコシや大豆のしぼりかすなど輸入穀物に頼っています。例えば、為替が360円から110円と、3分の1以下になっている。卵を作るためのえさのコストは50〜60%。60%が3分の1になれば20%になり、40%コストダウンできるということはあります。
もう一つは、鶏の能力自体の改良です。かつては卵150万トン作るのに毎年1億5000万羽の雛が必要だったのが、今は250万トン作るのに1億ちょっと。1キロの卵を作るえさは2.7キロから2.2キロへ。さらに、鶏自体が頑丈になり、年をとっても能力が衰えないなど、1羽の鶏から産ませることができる卵の量、1キロのえさから卵に変換する能力は高まっています。
さらにもう一つは、われわれの努力。以前は、1年間の一人の労働力で卵80トン生産できると言われましたが、今は400トン以上と、労働生産性はかなり高くなっています。そのため、日本の農業の中で唯一国際競争力があるのは採卵養鶏だといわれています
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| ■科学的に裏づけされた安全性■ |
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トマルの卵はどんな特色がありますか? |
| (都丸) |
ブランド卵として、遺伝子組み換えをしていないトウモロコシや、ポスト・ハーベストフリー(収穫後無農薬)の穀物、木酢酸を添加した飼料を使った卵などもあります。しかし、私が一番伝えたいのは、特別変わったことではないけれど、これだけ源流から末端まで衛生管理をきちんとやって、それを全部一つの資本の中で行っているということなんです。
われわれ農業者としての大きな使命は、科学的に安全な卵を安定的に大量に供給すること。それを派手なパフォーマンスや派手なキャッチフレーズではなく、一つひとつ確実にやっている。それを評価してもらえることが一番うれしいんです。
今後は病院や老人ホーム、幼稚園など科学的な安全性の裏づけが必要なお客さまに積極的に卵を販売していきたいと思い、今、始めているところです。 |
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アンテナショップ「うっふボーノ」は、卵と加工品の販売のほか、卵料理を提供するレストランもありますね。 |
| (都丸) |
卵の販売に力点を置いていく意味からも、ここに来てもらえばトマルの卵が買える場所として作りました。もう一つは、採卵養鶏業界も、ものすごいスピードで軒数が減っている。そうした中でわが社が、卵屋の作ったシュークリーム、クッキー、ジェラート、プリンを販売し、地域で小売をして養鶏場を続けていこうとする人たちの理想になればと思い始めました。県内外から視察も来ますし、加工品の作り方はいつでも教えたいと思います。 |
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人気商品はなんでしょうか? |
| (都丸) |
やはりシュークリームですね。ロールケーキとかプリンとかいろいろ考えて提供しています。養鶏場というと昔のイメージを引きずっている人たちがいると思うんですが、なるべく早く払拭したい。だから、外観も明るいデザインの建物になりました。よく「結婚式場みたい」と言われますよ(笑)。 |
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最後に、今後のトマルの方向性を伺えますか? |
| (都丸) |
わが社のアイデンティティーは、「養鶏報国(ようけいほうこく)―鶏を養い国に報いる」。これは私の祖父の都丸但一が、創業40周年のときに掲げた言葉です。
私は養鶏とは非常に社会的に意義のある日本にとってなくてはならない仕事だなあと感じますし、この仕事に携われることを本当に幸せに思っています。そのために、一番優先しなくてはならないのは、やはり社員の幸せですね。現在トマルグループの社員は130人。もっと社員が幸せになる環境をいかに作るか。規模拡大は避けて通れない部分であり、無理せず徐々に組織としての体裁を整えていくことを今、一番に考えています。
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すばらしいお考えを伺いました。本日は大変ありがとうございました。 |
(聞き手 上毛新聞社広告局副理事・編集部長 渡辺佳幸)
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