おおさわ・まさあき
1946年新田郡尾島町(現太田市)生まれ。慶応大工学部卒。尾島町議会議員(2期)を経て、群馬県議会議員(4期)。2006年、第80代群馬県議会議長。07年07月、県知事に就任。
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シリーズ<15> 2008年1月23日掲載
県民の皆さんは、群馬の農の応援団です。
群馬県知事 大澤 正明 さん
群馬県が開発したイチゴ「やよいひめ」。この日は、太田市でイチゴ栽培をしている高橋悦夫さんのハウスを訪れ、摘みたての「やよいひめ」をいただきました。あいにくの強風で、大澤知事をはじめ、全員寒さに耐えながらの取材でしたが、「大きくて、すごく甘いね」と一同、顔がほころびました。
 ■おふくろの味「煮ぼうと」■
今回、大澤知事に初めて「みのりくらぶ」に登場していただくため、どんな食べものが好きで、食と農に関してどんなお考えをお持ちなのかなどをお伺いしたいと思います。さて、最初にお聞きしますが、上州名物としてすぐに思い浮かぶ食べものといえば何でしょうか?
(大澤) そうですね。やっぱり、この地域(地元・尾島地区)では「煮ぼうと(おきりこみ)」ですね。あとは、「焼きまんじゅう」とかありますけど、煮ぼうとが一般的ですね。
旧尾島町のご出身でいらっしゃいますが、子ども時代の食生活はどのようなものでしたか?
(大澤) 昭和20年代ですから、まだ戦後の混乱期。食べるものが豊富にあったわけではないので、お腹いっぱいになればなんでも満足という時代でした。今のような飽食の時代とはまるっきり違って品数もあるわけでなく、ご飯粒をしっかり食べられれば満足という時代だったと思いますね。
そのころ食べたもので印象に残っているものはありますか?
(大澤) 煮ぼうとは、よくおふくろが作ってくれました。中学校で野球部に入っていたので、お腹が減って帰ってくると煮ぼうとがおいしくて…。煮ぼうとというのは、そのときだけじゃなく、何回か温め直すとよりおいしくなるんです。どろっとしたのをご飯にかけて食べるのが、おいしかったですね。
それが、知事にとってのおふくろの味ですか?
(大澤) そうです。おふくろの味というと「けんちん汁」もそうですね。煮ぼうとも、けんちん汁もその家々で味付けや中の具が違っていましたからね。
知事のお宅ではどんな感じでしたか?
(大澤) いろいろ入っていましたよ。サトイモ、油揚げ、ダイコン、ニンジン…いろんな具が入っていて、体によかったんじゃないですかね。
今、―番お好きな食べものというと何ですか?
(大澤) 私の地元の尾島はヤマトイモが特産なので、ヤマトイモをご飯にかけて食べるのが好きです。あと、肉も好きです。最近は、年齢とともに少し控えていますが(笑)。
 ■地酒はいろいろ飲んでいます■
普段の食生活についてお聞かせください。ちなみに今日の朝ご飯は何でしたか?
(大澤) 今朝は、焼き魚と納豆とサラダ・・・。サラダは健康面を考えて毎日食べています。あとは、おしんこ、梅干、ご飯とみそ汁ですね。外食が多いので積極的に野菜を食べるようにしています。足らなければ、青汁を飲んでいます(笑)。野菜はレタス、イチゴ、トマト…、タマネギのスライスは血圧にいいというので、食べています。
お酒は召し上がりますか?
(大澤) はい。お酒は大好きですから、毎日、飲んでいます(笑)。
群馬の地酒はどうでしょうか?
(大澤) 群馬の地酒も好きですし、飲む機会は多いです。実は家内の実家が栃木県佐野市の造り酒屋なんです。群馬の造り酒屋にも親せきがあります。ですから、お酒でも特に地酒が好きですね。地域に行ったら、そこの地酒を飲むようにしています。東毛、西毛、北毛、中毛といろいろあり、それぞれ楽しんで飲んでいます。
最近は、群馬の地酒もかなり評価が高まっていますね。
(大澤) そうですね、みんな、よく研究されていますよ。酒蔵も生き残っていくために努力していかなければ。県で開発した「群馬KAZE酵母」を使ったお酒など群馬独自のお酒も生まれています。私も地域の特徴ある地酒を飲むのは楽しみです。
ご自分で料理をされることはありますか?
(大澤) それが、料理はまったくできないんですよ。私は7人兄弟で、上から6番目、下から2番目で、上に姉が3人いたものですから、姉たちがみんなやってくれていました。また、「男子厨房(ちゅうぼう)に入るべからず」という古い時代でした。
だから、今、一人の時は非常に困っています。そんな時も、ほとんどは女房が用意してくれていますが。野菜サラダは毎日、女房が作ってくれますから、それを食べていますし、ご飯も炊いて冷凍してあるので、「電子レンジで3分30秒温める」とか(笑)、非常に大変です。もう少し習っておけばよかったかな、と(笑)。
 ■農業立県ぐんま■
群馬の農業について伺いたいと思います。群馬県は豊富な農産物が採れ、「首都圏の台所」としての位置づけが大きいわけですが、意外と県民に知られていない農産物があるように思うのですが。
(大澤) おっしゃる通りで、群馬県の農産物は、全国生産量の1位から5位までに24品目も入っていることを群馬県民もほとんど知らないと思うんですね。例えば、キュウリの生産量は全国1位。それをどのようにアピールしていったらいいのか、今いろいろ悩んでいるところです。日照時間は全国2位。標高は10メートルから1400メートルまであり、多種多様な農産物が生産できる、素晴らしく恵まれた自然環境にあります。
また、群馬県が開発した食材もたくさんあるんです。先ほどいただいた「やよいひめ」は、県の農業技術センターで品種改良したイチゴです。今までは東京市場がターゲットでしたが、これからは県内にも多く出荷されます。ブルーベリーも本県が開発した品種がありますし、ギンヒカリというニジマスもあります。
もっともっと県民のみなさんに群馬の食材を知っていただきたいですね。そして、「農業立県ぐんま」と位置づけて、群馬県のブランド力をどんどん高めていきたいと考えています。
知事が目指す「群馬の食と農」の、現在の課題は何でしょうか?
(大澤) 担い手の問題なども大きくクローズアップされていますが、やはり、認定農業者や集落営農組織など、担い手といわれる人を育成・確保しながら、農地の面的な集積を図って経営の強化に努めていかなければならないと思います。規模の拡大は、経営安定のためには大切な一つの手段ですが、若い人に魅力のある農業にしていくにはどうしたらいいか、真剣に考えていかなければならないと思います。
担い手の問題は大きいですよね。
(大澤) われわれ団塊の世代が退職後、県の農林大学校に農業を学ぼうとやってくる人がかなり多いんです。将来、この世代の人たちがどのように農業に携わってくれるか。農業を多角的に考えていく上で、貴重な人材になるだろうと思っています。
県内の地産地消の推進についてはいかがでしょうか?
(大澤) 「首都圏の台所」といわれますが、まずは、地元群馬の皆さんに安全安心な県産農産物をたくさん食べていただきたいですね。県民の支持があってこそ、全国にも広がっていけるのではないかと思います。
昨年、「新鮮!安心!ぐんまの日」(地産地消の日=毎月の第1日曜を含む金〜日曜日)を定めたので、この日には、いつも以上に、県産農産物に注目して買っていただき、家族で食卓を囲んでいただきたいですね。今の時期であれば、上州牛、白菜、こんにゃくなど、オール県産のすき焼きや鍋物ができますよ。県民の応援があれば、群馬の農業も元気になり、食料自給率の向上にもつながると思います。
 ■農産物は貴重な観光資源■
農産物の加工品や料理など、観光資源としての農業については、どのようにお考えですか?
(大澤) お酒もそうですが、旅行に行ったら温泉に入ればいいというだけじゃなく、その地域の食事をしてみたい気持ちになります。郷土料理としてどんなものがあるかというのも大切な観光につながる資源だと思います。
昨年11月、JA全農ぐんまが浅草に直売所「グッドぐんまの旬の市」をオープンさせました。群馬県も今年、仮称ですが「ぐんま総合情報センター」を東京銀座に開設する予定です。JAの旬の市とも協力しながら群馬の農産物の販売促進に努力していきたいと考えています。観光や企業誘致、地場産の農産物の販売促進の拠点として、群馬を全国にアピールしていきたいと思います。
なるほど、楽しみですね。ぜひ、知事のトップセールスで群馬の農業をアピールしていただくことを期待しております。
(大澤) 宮崎県の東国原(英夫)知事ほど知名度がないので、なかなかそれには追いつきませんけど(笑)。この前、福田首相に地元のヤマトイモを「粘り強く頑張ってください」とお届けしたんですが、非常に反響を呼びましてね。「どこのイモが届けられたのか」と話題になりました。こういう形でステップアップしていけば、もっともっと発信できるのかな、と。いろんな角度から販売促進を支援していきたいと思っています。
首相が群馬県出身ということで、非常にいい環境ですよね。
(大澤) そうですね。最近では、川場村のお米『雪ほたか』が、「お米日本一コンテスト2007」で優秀賞を受賞し、「全国 米・食味分析鑑定コンクール」の総合部門で金賞に輝きました。私も川場のお米を、「(新潟の)魚沼産よりおいしいんですよ!」と宣伝してきました。だけど、なかなか信用されない。魚沼産のほうが知名度が高いんですね。あれがブランド力なんだなと思いました。今回、川場米が賞を取り、全国的に認知されてきた。こうした機会に積極的に宣伝していきたいと思い、これも福田首相に届けました。
知事の力が、群馬の農業の発展に大きく関わってくると思います。
(大澤) 農業関係者の方たちといろいろ知恵を絞って応援していきたいと思います。今、食の安全安心が叫ばれ、消費者が非常に敏感になってきています。ブランド力を高めていくためにも、安全安心な農産物を生産していくことは一番の要だと思いますね。自給率の問題もありますし、県としても農業に誇りを持てるような環境づくりを積極的に支援し、担い手対策を含めていろいろ取り組んでいきたいと思っています。
 ■6月に本県で食育推進全国大会■
最近は、食育に人々の関心が高まっています。知事がお考えになる食育とは、どういうものでしょうか?
(大澤) いろいろ話を聞いていると食育はかなり幅が広いようですね。どこに重きを置くかは、人それそれだと思います。ただ、栄養や食品表示などの知識を吸収することも大事だけれども、私は、やはり心の問題が大切じゃないかと思うんです。農作物を作ってくれた人や料理を作ってくれた人に対する感謝の気持ち、食べ物を大切にする心を育てることが大事で、「いただきます」という言葉にその気持ちが集約されているように感じます。
飽食の時代といわれて久しいですが、こんな時代だから、食育が叫ばれている。学校、幼稚園・保育所、生産者、食品関連事業者と行政が一体となって、協力し合いながら、県民運動として食育推進に取り組んでいきたいと思います。
6月には本県で「第3回食育推進全国大会・ぐんま食育フェスタ2008」が開催されますね。
(大澤) 群馬がまだ3回目の大会ですので、ご存じでない県民の方も多いかと思いますが、開催を契機に、食育推進の機運を高め、県民運動としてより発展させていきたいと思います。
また、群馬県は農業生産県であり、生産者と消費者の距離が近いという利点を持っていますから、群馬らしさとして「農業生産現場」から「食卓」までの距離が近いことを前面に押し出し、群馬の食育の取り組みを全国に向けて発信したいと考えています。小麦を中心とした粉食文化なども、群馬らしさの素材ですから、大会を特徴づける企画として取り入れ、全国に発信できればと考えています。
最後に「みのりくらぶ」に期待すること、そして「みのりくらぶ」の読者へ向けてひと言お願いできますか?
(大澤) 本県の旬の農産物やそれを使った料理レシピなどをたくさん紹介していただきたいです。発行部数も多いし、県民にとっての貴重な情報源ですから。農業や食品産業などをはじめとして、群馬の「食」に携わる多くの方のために、積極的な情報発信をお願いします。
読者の皆さんには、農家の皆さんが丹精して育てた、安全安心な県産農産物をたくさん食べていただきたいですね。
飲食店や小売店の皆さんにも、県産の食材をたくさん活用してほしいです。それこそが、本県の農業を支える上で大事なことです。県民の皆さんは群馬の農の応援団!「みのりくらぶ」は応援団長ですね!
ありがとうございます。これからも「群馬の食と農」を伝えていきたいと思います。本日はお忙しいところ、しかも、寒風の中、大変ありがとうございました。

(聞き手 上毛新聞社広告局副理事・編集部長 渡辺佳幸)