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こいずみ・たけお
1943年、福島県の酒造家に生まれる。東京農業大学で醸造学を学び、82年から同大教授。醸造学、発酵学、食文化論専門。農学博士。食の冒険家。全国地産地消推進協議会会長。小説も含めた著書は共著も合わせて90冊以上ある。 |
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| 昔から親しまれてきた日本独自の酒なのに、近年消費量が落ち込んでいる日本酒。そして、意外に知られていない日本酒の世界。醸造学の専門家である東京農業大学の小泉武夫教授に日本酒の魅力、そして群馬の地酒がなぜおいしいかについて、お話を伺いました。 |
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| ■酒蔵が遊び場だった■ |
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蔵元にお生まれになったと聞きましたが。 |
| (小泉) |
(研究室の七斗入り酒樽3本を指差し)これ全部、実家の酒ですね。もう全部飲んで空になってしまいました(笑)。今も福島県の郡山で続いています。
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子どものころから日本酒の環境に親しんでらっしゃったんですね。 |
| (小泉) |
遊びの場がほとんど蔵の中でしたからね。桶やタンクの陰に隠れてよく遊びました。 |
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そのころは、酒蔵は活気のある時代だったんでしょうか。 |
| (小泉) |
もうすごかったですね!一年のうち半分は酒を造っていましたね、あの時代は。日本の歴史の中で、私が小さいころが一番酒が造られたんじゃないでしょうかね。日本で酒が一番売れた時代は、昭和52、53年、880万石といわれましたから、大変な量でしたね。 |
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それが、今や日本酒の消費量は大変落ち込んでしまいました。その原因は何だと思われますか。 |
| (小泉) |
やはり、一つは食生活の洋風化があるでしょうね。それとなんといっても焼酎の台頭が一番大きいでしょうね。日本は、この45年の間に、油の消費量が非常に多くなったんです。だいたい3.4倍ぐらいになりました。油の量が増えると、辛い酒が合うんですね。旧態依然のあんまり甘い酒はどうも料理に合わないというのか、お酒の嗜好までもが変わってきたんじゃないでしょうかね。それと同時に、「焼酎は体にいいんだ」といったことが流布的に広まり、焼酎がますます売れるようになりました。 |
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そういった背景があり、日本酒の好みが甘口から淡麗辛口へと変わってきているのですね。 |
| (小泉) |
そうですね。でもね、ここに来て、焼酎の伸びが少し鈍化してきましたし、特にこの冬から鍋ブームとか和食ブームが来ていますから、もう少しで日本酒も戻ってきますよ。また、もう一つは、アメリカ市場では、日本酒が右肩上がりで伸びていますものね。日本酒は素晴らしい!と。なぜかというと、日本料理の世界そのものにアメリカやヨーロッパの人たちがものすごく興味を持っている。和食という世界は、素晴らしいんだ、ヘルシーだ、栄養のバランスがとれていると、非常に日本食がブームになってきて、和食のお酒は日本酒ですから、日本酒は海外で大変人気が出てきています。 |
| ■日本人好みの酒の風格■ |
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日本酒の魅力について語っていただけますか? |
| (小泉) |
なんといっても日本酒は日本料理に一番合うということですね。私は、西洋料理はあまり食べませんから。ワインもほとんど飲んだことありません。醸造学の先生なのに(笑)。それから、ビールもあまり飲みません。おなかがポンポコポンになってしまって(笑)。焼酎は日本酒と同じ麹酒ですから飲みますが、やはり、日本酒はいろんな世界があるでしょう、淡麗辛口もあれば、濃厚な酒もある。馥郁たる麹の匂いもあれば、果物の匂いもある。もういっぱいあるじゃない。極端にいうと、日本酒のメーカーは全国におよそ1700社ありますが全部味が違うわけでしょう。そういう意味からしたって日本酒のほうが奥が深いですよ。 |
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日本酒の歴史はそうとう古いのでしょうか? |
| (小泉) |
そうですね。日本酒というのは、中国や韓国の影響をまったく受けずにできた酒です。日本人が作った独自の民族酒なんです。醸造方法も全然違います。 |
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日本酒の味わいについて伺えますか? |
| (小泉) |
米の酒ですから、米を食べている日本人には米のお酒が一番合うわけですよ。アメリカでは麦のパンを食べているので、 ウイスキーやビールが合う。そういうもんです。日本酒は、味もとってもまろやかだし、熟成をする前の酒と熟成した後の酒で、ものすごく味わいが違うでしょう。米の酒だからこそ、素晴らしいものができてくるわけです。
それに、なんといっても日本酒は日本料理に抜群に合いますからね。例えば、お刺身。醤油(しょうゆ)や味噌(みそ)の料理もそうだし、今、ちょうどおいしいサバの味噌煮にはやっぱり日本酒!と考えると、やっぱり日本の気候風土にはぐくまれた料理の食材とともに日本酒は育ってきたわけです。味も日本人好みの風格を持っているんじゃないでしょうか。
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自分に合うお酒や、おいしい酒を発見するにはどうしたらいいでしょうか。 |
| (小泉) |
お酒は嗜好品なので、自分の好きなタイプの酒を探すのが大事ですね。自分に合った酒を自分で見つける。それが一番おいしい酒じゃないですか。お酒の知識を深めるのも楽しみですね。 |
| ■地酒は旅の楽しみ■ |
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現在、農水省の全国地産地消推進協議会の会長をされていますが、日本酒も地産地消ということで、地元の酒を飲むことは大事だと思いますが。 |
| (小泉) |
昔から「地のもの」というのは、そこの気候風土や食文化に一番合っているんですね。だからここの酒でここの料理というのが昔からの日本人のこだわりです。地元で飲む酒はまた格別ですね。ですから、「旅に酒あり、肴(さかな)あり」。その土地の食文化と触れ合い、旅の情緒を楽しむ。そうすることで、なお、酒がおいしいということですね。
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群馬は温泉が豊富で、観光群馬を目指しています。 |
| (小泉) |
旅館では地酒を出すことは、お客さんに対する鉄則であり、サービスですよ!やっぱり群馬に行ったら群馬の酒です。私なら群馬に行ったら、熱々の味噌田楽を食べながら、群馬の地酒を燗酒にしてね、ペロロンと食べながら、コピリコンとやるんだ。こういうのがうまいんだよ!
一度、水沢うどんを肴に酒を飲んだら、うまかったね!それから、館林のほうの蔵元に行ったら、ウナギとナマズの蒲焼きを出してくれたけど、うまかったなあ!やっぱり、地元においしい酒はいっぱいありますし、ちゃんと肴がくっついてくる。上州牛や下仁田ネギ、こんにゃく、それに最後にうどんを入れて、全部地元の食材で作ったすき焼きなんかと、辛口の地酒をキュッと飲むなんて粋なもんですよ。これぞ、旅の楽しみです。
それとね、一人で飲んでもだめですね。地酒を飲むときは、土地の人と一緒に笑いながら飲むのが最高!ですね。 |
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蔵元に望むことは、どんなことでしょうか? |
| (小泉) |
いいものを造ったら必ず報われます。なぜ日本酒が衰退したかというと、大手のメーカーが全国画一の日本酒を作り過ぎてしまったから。どこで飲んでも同じような日本酒となり、「なんだ日本酒ってこんなもんか」と、まったく特徴がなくなってしまった。そうすると、日本酒の風格とかその土地に根ざす存在意義がなくなってしまった。日本酒業界は、いい酒を造れば必ず復活する。これほんとです。
全国に素晴らしいお酒がたくさんあるけれど、全国のいい蔵元の100社ぐらいでは、お酒は足りないんですよ。いい酒を造れば売れるということですよ。消費者はいいものはわかるんですね。やっぱり、その酒蔵、酒蔵で独自の技術を持っている。いい酒を造る腕のいい杜氏もいる。一所懸命、いい酒を造るように努力すべきだと思います。
今こそ、浮上のチャンスである!私はよく教え子にいうんですが、「3000石の酒を造るなら、半分の1500石にしろ。その代わり、その3000石造る分のお金を1500石に投入してみろ。ものすごくいい酒になるぞ」と。生産量を誇るのではなく、できあがった酒の質を誇るべきだと思う。そういう考えで今は、蔵元の皆さんは本当に努力していますよ。 |
| ■群馬の地酒はなぜいいか■ |
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群馬県のお酒はどうでしょうか。 |
| (小泉) |
いいお酒を造っていると思いますね。群馬のお酒はなぜいいか。3つの理由があると思いますね。
1つ目は水がいい。伏流水がある。群馬は至るところにきれいな川が流れているでしょ。酒はなんといっても水がよくないとだめです。
2つ目は、群馬は米がいい。酒米というと山田錦をよくいいますが、それは『山の田んぼの米』から名づけられている。どちらかというと山岳地帯の清涼地で育った米が一番酒米として適しているんです。
3つ目は、酒蔵が非常に底冷えするんじゃないかと思うんですね。真冬になると底冷えして、足元がカンカンカンと冷える。そういう酒蔵は非常にいい酒ができますね。
その3つが群馬にはそろっているんじゃないかなあ。だから、おいしい酒ができますよね。私もいろいろ飲みましたが、群馬の酒のタイプは非常に個性がある。それでいて軽々しい酒じゃないところがありますね。風格があるというのかな。 |
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昨年は全国新酒鑑評会で10蔵が金賞を取りました。 |
| (小泉) |
昔から、全国新酒鑑評会でも関東信越国税局酒類鑑評会でも群馬は非常に成績がいいですよ。それはさっきの3つの理由と、歴史のある蔵が多いからじゃないでしょうかね。また、経営者がいい酒造りのためにがんばりましたからね。関東の中でも、新潟、長野、群馬は素晴らしいです。それが、金賞受賞率が高いことを物語っているんじゃないでしょうか。
それと、群馬県は観光施設が非常に多いでしょう。温泉とかいろいろありますから、群馬に行ってゆっくりと地酒を楽しむ。遠くに行くより余裕ができていいんじゃないですか。
「群馬の酒は待っています。群馬のお湯は待っています。群馬の肴は待っています」だね! |
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いいキャッチコピーまで作っていただき、ありがとうございます!本日はお忙しい中、大変貴重なお話をありがとうございました。 |
(聞き手:上毛新聞みのりくらぶ編集長 中道美代子)
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