林桂選

2004年1月20日上毛新聞掲載


冬薔薇トロイカの鈴近づきぬ
松井田小5年 上原  茜
【評】冬薔薇(ふゆそうび)と、トロイカの鈴の取り合わせ。物語性と美学を一つのデーブルの上に並べたような作品です。大人顔負けです。
田の色もかれた色に染まってる
安中後閑小6年 内堀  舞
【評】枯れた景色は田の中にも及んでいます。刈田となり、周りの風景と一体となっているのです。人工的な田も冬は自然の一部に返ります。
さざんかの花びら落ちる朝の庭
富岡高瀬小6年 築山 芙実
【評】椿(つばき)と違って花びらとなって散るサザンカ。枯れ色が多い冬の庭では、ひときわ目立ちます。朝の庭の目新しい色として描かれています。
火をつつきパチパチ音するはくしゅだね
倉淵川浦小6年 丸山 友見
【評】火の粉が上がり、はじける音を、拍手(はくしゅ)の音のようだと気づきました。火は何に拍手をしているのでしょうか。
待ちどおしいねぼうしていい冬休み
群馬上郊小6年 丸田ひかる
【評】冬休みを心待ちのは、人さまざま。寒い朝早く起きなくてもよくなる冬休みを待つのも、人には褒(ほ)められないけれども大切な本音。
飼育小屋とてもつめたい冬の朝
大間々南小6年 杉山  輝
【評】冬の朝の飼育当番でしょうか。小屋には朝の寒さが満ちています。当然、そこに飼われている動物もその寒さにたえているのです。
じっくりと空を見つめるクリスマス
富岡西中1年 瀬間 将英
【評】じっくりと空を見つめる姿勢は、クリスマスの感慨(かんがい)がもたらしたもの。いつもの空も、クリスマスの日は別の空です。
冬の朝白鳥が鳴く物語
小野上中1年 佐藤紗也加
【評】冬の渡り鳥としてやって来る白鳥。新潟県の瓢湖(ひょうこ)が有名です。朝鳴きの声に、白鳥がもっているドラマ性を「物語」で表現しています。
白菜の色見て冬の寒さかな
小野上中1年 一場  萌
【評】畑の白菜か、台所に洗い上げられて白々とした白菜か。ともあれ、冬の野菜は、冬の表情を持つことを感得した詩的感性は鋭い。
影長しポケットの冬あふれけり
小野上中2年 佐藤  陽
【評】寒さでポケットに手を入れていても、なかなか暖かくなってこない手。その姿が、夕日に長い影となって伸びています。
犬達が遠吠え冬が近くなる
小野上中2年 佐藤  陽
【評】犬の遠吠えが冴(さ)えた空気を伝わって響いてきます。「達」ですから、遠く離れて鳴き交わしてるのでしょう。冬の空気が震えます。
ティッシュにも寒さ到来冬の風
小野上中2年 佐藤 俊樹
【評】「ティッシュにも寒さ到来」の感覚は鋭い。薄い紙にも冬の寒さがあるのです。「冬の風」は疑問。飛躍したイメージが欲しいところ。
先生の朗読早い師走かな
小野上中2年 佐藤 俊樹
【評】「先生の朗読早い」と「師走」のイメージが付きすぎて、通俗的なのが残念。でも、先生の朗読に感じている違和感は面白い。
白菜を円くしている北風や
小野上中2年 佐藤 弘起
【評】「円くしている」が秀抜。北風に耐えるために、硬く幾重にも巻き円くなる白菜。北風の寒さに耐える姿が、そのまま白菜の姿です。
鉛筆を削り直して風を書く
小野上中2年 野村 大樹
【評】「風を書く」が秀抜。恐らく風を細い線で表現しようとしているのでしょう。そのために、鉛筆の芯(しん)を細くとがらせているのです。
空いっぱい太陽おちてく秋の夕暮
安中第一中2年 鷹巣 由枝
【評】「空いっぱい」がいい。大きな夕焼けを伴い、大きな夕日となって落ちてゆく、秋の暮れの感じが、うまく表現されています。
秋深き田んぼにのこるわらのたば
安中第一中2年 今井 優平
【評】今は田んぼで脱穀作業までできるような時代になりました。田んぼに残された藁(わら)の姿に感じる秋の深さは、現代的でもあります。
空風が音立て通る上毛(かみつけ)を
群馬大附中2年 細谷 綾那
【評】上州は空っ風の通り道です。山の斜面を下りて勢いを増しながら、音を立てて吹き抜けてゆきます。「もがり笛」という季語もあります。
テスト後の沈んだ自分の顔目立つ
下仁田東中3年 神戸 恵理
【評】思うようにいかなかったテスト。自分の顔が沈んでいるのが、自分でも分かります。その顔がまわりから孤立しがちなことも。
卒業が近づくイチョウの葉っぱかな
小野上中3年 平方 彰人
【評】色づき、散り敷いているイチョウの葉。どこからともなく寂寥(せきりょう)がこみ上げます。それが卒業を控えた身の感傷へ流れて行くのです。
テスト中くもる黒板見つめてる
小野上中3年 吉沢 隆弘
【評】黒板のくもりは、自身の心のくもりでもあります。思うように解けないテストに、頭も上がって前の黒板とのにらめっこになっています。
テスト中川のかなしさ感じてる
小野上中3年 佐藤 良輔
【評】「川のかなしさ」が唐突。しかし、得体の知れない悲しさに突然襲われたことは確か。テストの出来不出来の次元ではなさそうです。
地球儀を意味なく回す雨の日や
小野上中3年 尾池 真人
【評】雨の日の徒然(つれづれ)に、地球儀を回します。地球儀は色の模様となって回り、やがて地球儀となって止まります。「意味なく」の寂しさ。
霜降りて地面がくもり影できぬ
小野上中3年 樋田 真美
【評】「ぬ」は打ち消しの「ず」の意味なのでしょう。それにしても、霜の地面を「くもり」と言い、影の不在を指摘する詩的視力は立派。
帰り道鍋の具浮かべて歩いてる
高崎片岡中3年 加藤 頌子
【評】漫画の描写ならば、夕焼け空にお鍋が浮かんで湯気を立てていそうな場面です。今日は鍋の具に帰ることが、家に帰ることです。
手編みはね気持ちを伝える最終兵器
高崎片岡中3年 春山  優
【評】「最終兵器」が面白い。女の子はいかに恋の戦略家であるか、その面目躍如たるものがあります。男の子が無防備に思えるから不思議。
草さえも秋の香りにそまりけり
水上中3年 眞庭 大介
【評】「さえも」は小さなものをあげて、大きなものを類推させる用法。一面の秋の香りを、草の香りを詩的して想像させるのです。
草っ原霜がキラキラ光ってた
富岡南中3年 岡田 和貴
【評】枯れた草の葉に降りる霜。葉を縁取るように白くなり、朝日に輝きます。「草っ原」という口語表現が「キラキラ」に見合っています。