林桂選

2004年2月10日上毛新聞掲載


雪だるま一人ぼっちの夜がくる
群馬国府小6年 蜂須賀早貴
【評】既にこのコラムでも類句を掲載していますが、それでも雪だるまに寄せる思いは蜂須賀さん個人のもの。この想像力を大切に。
霜月の登校班の白い息
群馬国府小6年 大澤 里沙
【評】霜月(旧暦の十一月)の朝、白い息をはずませながら、班のみんなが元気に登校する姿が思い浮かびます。
妹が葉っぱの山をふみしめる
群馬国府小6年 大山 菜摘
【評】かき集められたか、吹き寄せられた枯れ葉の山。妹がその中に入って遊んでいるのです。乾いた落ち葉の音を楽しんでいます。
秋の風きもちよさそうにながれてく
藤岡美九里東小6年 木村  亮
【評】他を一切書かないで、「秋の風」の様子だけを書いています。単純化した表現が、面白い表現効果を生んでいます。
冬の中生き生き生きてる緑の木
榛東南小6年 小山絵梨花
【評】多くの木が葉を落としている冬。緑を残す木がひときわ目立つ季節です。中七のリズムが楽しい作品です。
家の中たたみの部屋に冬がある
小野上中1年 小池 芳法
【評】畳の部屋は客間なのでしょうか。家の中で生活感のない部屋は、寒々と感じるものです。「冬がある」の断言がいい。
くるみパン冬の風を感じたよ
小野上中1年 朝比奈 亨
【評】「くるみパン」と「冬の風」の取り合わせの妙。意外と思われる組み合せが、新しい世界を生み出します。秀作です。
だるま市多くの人の夢集う
群馬大附中2年 桑原 孝彰
【評】夢を託すだるまを買い求めるために、市に集まる人々。それは多くの人の夢が集まっていることでもあります。視点のいい句。
からっ風VS僕の帰り道
群馬大附中2年 中山 聡文
【評】「からっ風」と「僕の帰り道」の対決です。空っ風の中の帰路を、愉快な見たてて表現しています。辛さも緩和されるかもしれません。
空広く寒さの光る朝陽かな
前橋第二中2年 重原 由佳
【評】「寒さの光る」が上手い。空一面に満ちている冬の冷気。朝陽のまだその寒さを解かすことができていません。
停電で星たち深く光りけり
小野上中2年 唐澤 聖美
【評】停電で地上に闇が拡がります。そこにいつもに増して深い光りとなって降り注ぐ星たち。「深く」が効果的。
針葉樹冬の寒さがつきささる
小野上中2年 佐藤 俊樹
【評】針葉樹の葉が、冬の寒さの中で一層「針」の鋭さを増して感じられます。冬の寒さを、針葉樹の姿に見つける感覚のよさが光ります。
ポケットに毎日集まるあたたかさ
小野上中2年 佐藤  陽
【評】「毎日集まる」が上手い。思わずポケットに手を入れる冬の寒さ。暖かさはその都度、ポケットに集合して待っていてくれるのです。
雪降れば林の声ぞ響きける
小野上中2年 佐藤  陽
【評】降る雪によって一層静寂を増した林の中。その中で響く声。猟師か山仕事の人達の声を考えるのが一番いいのでしょうか。
川を背に三年生と話する
小野上中2年 佐藤  陽
【評】「川を背に」の無意味性が何とも不思議な句。「川を見るバナナの皮は手より落ち」(高浜虚子)を思い出させます。
目かくしをしてかんじる寒さかな
小野上中2年 佐藤 一馬
【評】視覚をふさぐことによって動き出す他の感覚器官。それが、感じることができなかった外の世界の新しい姿を見つけてくるのです。
かんそういも皮をむいた日曜日
小野上中2年 小野由香里
【評】乾燥芋作りのお手伝いをして、一日が終わった日曜日です。生活の中から、季節を発見していて貴重。季節感は身近にあります。
テスト中俳句考え秋の空
小野上中3年 尾池 真人
【評】「秋の空」に、「上の空」や「飽き」をかけています。技巧的な作品で見事ですが、テストの先生は別の感想を持つことでしょう。
真っ白の中や君の手ほっかほか
水上中3年 飯酒盃里紗
【評】「真っ白の中」は雪の世界。このぼかした表現が、「君の手」の像をよりはっきり読者に印象づけます。恋の句にしてユーモラス。
雪合戦みんなが本気で僕ねらう
水上中3年 鈴木 泰輝
【評】雪合戦で、みんなに狙(ねら)われるキャラクターはありそうです。目立ちたがり屋で、自分の存在をアピールしませんでしたか?
霜柱選んで歩き学校へ
富岡南中3年 茂木 草介
【評】類句が多い作品ですが、「選んで歩き」の上手さがこの句のいいところ。中学生の作品というのにも、別の感慨があります。
温める手はどことなく淋しそう
下仁田東中3年 柴  美咲
【評】温める手は、冷え切った手でもあります。その手が持っている表情を「どことなく淋しそう」と言っています。感覚のいい句です。
雪の中校庭三人走ってる
下仁田東中3年 高橋 暢人
【評】走っている三人は、部活か、雪を喜んでの遊びのパフォーマンスか。ともあれ、みんなの視線を集めていることは間違いありません。
年始めあわてて雪が降り積もる
下仁田東中3年 市川 篤弘
【評】「あわてて」が面白い。「新(あら)たしき年の初めの初春の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)」(大伴家持)があります。
雲もなしはるか彼方の夏の山
川場中3年 宇敷 彩香
【評】夏の大きな風景を、それにふさわしいのびのびとした表現で書いてます。冒頭「雲もなし」の断言が効果的。