鈴木伸一選

2004年2月17日上毛新聞掲載


太陽へまっすぐのびる凧の糸
水上中2年 岡田  開
【評】凧上げの伸びやかな気分を、見事にとらえました。太陽へ向かってぴんと張った糸から、自然の力がぐんぐん伝わってくる感じです。
冷えきったコンパスを持ち冬の夜や
小野上中1年 唐澤 秀行
【評】コンパスの無機質な感触ゆえに、「冷え」も一層強く意識されたのでしょう。唐澤君は、なかなか鋭い感覚の持ち主であるようです。
うわばきの冷たさ感じる朝の空
小野上中1年 朝比奈 亨
【評】夜の間に、すっかり冷えきった上履き。登校して足を入れた瞬間、冷たさが身にしみます。学校生活を通して把握された季節感です。
花占い冬の寒さを色どるよ
小野上中1年 佐藤紗也加
【評】冬景色はモノトーンという感じで、気分もつい沈みがち。そんな中、花占いが心を明るくします。占いの結果は、むろん吉でしょう。
友達の両耳見れば冬景色
小野上中1年 小池 芳法
【評】寒さで真っ赤になった友だちの両耳が、小池君にとっては最も「冬」を感じさせるものなのです。着眼点がよかったと言えますね。
青空に定規をあてて雲を待つ
小野上中2年 野村 大樹
【評】青空に定規をあてるという発想が、明朗快活で好印象。何かを計ろうという思いは、自分自身を確認することにもつながるでしょう。
雪が降り明日の予定をたててみる
小野上中2年 茂木  光
【評】雪合戦のような具体的な予定でなく、降り出した雪にふと予定を立ててみたくなった、そのときの気持ちそのものを受け取りたい句。
雪積もるなぜか持ってるマッチかな
小野上中2年 佐藤  陽
【評】「マッチ」は、作者の内面の負の部分を暗示しているようです。こうして自分という存在を掘り下げてゆくのは、とても大事なこと。
霜下りて見る電灯はにじの色
小野上中2年 宮  裕太
【評】冷たく澄んだ冬の空気の中だからこそ、電灯の虹色を見て取ることができたのでしょう。他の季節では、なかなかこうはいきません。
こおりつきテニスラケットさみしげに
小野上中2年 野村 美幸
【評】ラケットが実際に凍りついたというより、冬でテニスができないさびしさも手伝って、そのように感じられたということでしょう。
なっとうのにおいがぷんぷん春の風
小野上中2年 佐藤 舞弘
【評】納豆の独特の匂いが、ぷーんと漂ってきます。ユーモラスで庶民的な内容が、のどかな春の風にいかにもふさわしい感じがします。
友達の口笛響く冬の朝
高崎片岡中3年 西野 剛史
【評】友だちの口笛をことさら強く意識したのも、やはり冬の朝なればこそでしょう。季節感の把握が的確だから、読後の印象も鮮明です。
一月の空見て思う三年間
高崎片岡中3年 富田 裕子
【評】新年は前途への希望と共に、過ぎ去った時間も思わせます。まして中学3年生ともなれば、感慨も一段と深いものがあったでしょう。
塾へ行く背に突き刺さる虎落笛(もがりぶえ)
高崎片岡中3年 松本 龍太
【評】冬の風が竹垣などに吹き、笛のような音を立てるのが虎落笛。いかにも冷たい風を感じます。そんな中、塾へ行く作者の姿が印象的。
霙(みぞれ)降る部活の思いよみがえる
高崎片岡中3年 後藤由香里
【評】引退後も、部活への愛着は容易に消えないのです。中学3年生の心情が、率直に書かれています。
笑い声なかなか絶えない冬日和
高崎片岡中3年 茂木佳世子
【評】作者と友だちでしょうか。別の一団でしょうか。いずれにせよ、いかにもおだやかな冬晴れの日。
電線もくっきり見える冬の空
下仁田東中3年 黛  大介
【評】冬の空にくっきりと浮かぶ黒い電線。多くの人が見過ごしてしまいそうな情景も、こうして描かれると詩情を感じるから不思議です。
ねこがくる外には雪がふっている
下仁田東中3年 重田亜由美
【評】淡々とした報告口調が、読み手に情景をイメージさせる上で、かえって効果的。寒そうなネコの顔つきまで、目に浮かぶようです。
岩の影白い子供が踊ってる
下仁田東中3年 諏訪 翔子
【評】「白い子供」は雪の比喩(ひゆ)でしょうが、同時に作者が幻想した子供であってもいい。後者の方が、むしろ詩的であるかもしれません。
風花と言うより私はふっとばり
下仁田東中3年 小山 裕明
【評】「ふっとばり」は、甘楽町秋畑辺りの土地言葉。寒風に雪が文字通り「吹っ飛ばされて」くる様子を実感させる、魅力的な言葉です。
壮大な雪山見つめ深呼吸
妙義中1年 岡野 綾香
【評】壮大な景観を前にしたとき、私たちは感動したり、逆に圧倒されたり、とにかく気持ちが昂(たか)ぶります。そんなとき、まずは深呼吸。
恋をするあなたの居場所は本の中
玉村南中1年 阿部 桂子
【評】すてきな作中人物に心がときめくことって、確かにありますね。これも読書の大きな魅力の一つ。
星の空今日は風がよくふいた
玉村中央小6年 春木 弘志
【評】晴れ上がった夜空にきらめく星々。昼間の強風がやんだ後のほっとした気分が、よく伝わってきます。季節は、やはり冬でしょうね。
お正月風吹き上げてたこ上げだ
倉渕川浦小6年 丸山 友見
【評】「風吹き上げて」が、いかにもたこ上げにふさわしい。力強く、しかもすがすがしい点にも共感。