林桂選

2004年2月24日上毛新聞掲載


ふとんからだっぴできない寒い朝
富岡高瀬小6年 加藤  舞
【評】「だっぴできない」がゆかい。ふとんを皮に見たてました。これは自分を虫に見たてていることでもあります。何虫なのでしょう。
笑ってる桜の花と一年生
大間々南小6年 君島 花梨
【評】「笑ってる」のは、桜の花と一年生の両方です。春を迎える人と季節の気持ちが、一つの言葉でとらえられています。
なすびでもいいから見せて初夢を
前橋若宮小6年 高  憂菜
【評】縁起のいい初夢「一富士二タカ三ナスビ」の三番目でいいから見たいのです。でも、考えれば夢に出てくるナスビは不思議な感じです。
新学期自分でぬった雑巾(ぞうきん)いびつ
前橋若宮小6年 書上  奏
【評】新学期には雑巾を何枚か学校に提出します。その雑巾を自分で縫えるようになったのです。まだ「いびつ」ですが、立派なものです。
初市にラーメン食べて帰る夜
前橋若宮小6年 上地 優美
【評】初市に夜食のラーメンを食べて帰ってきたのです。初市を書く視点がユニークで、祭りの後の寂しさも、家族愛も感じさせる作品です。
十二さいではじめてきいたじょやのかね
群馬上郊小6年 関口  彩
【評】12歳になって、初めて除夜の鐘を聞く時間まで起きていられたのです。少し大人になった気分ですね。
日光にあたって光る雪景色
妙義中1年 三田 隼人
【評】「遠山に日の当りたる枯野かな」(高浜虚子)がありますが、日があたることで見えてくる景色も違います。
新しいてぶくろをして学校へ
玉村南中1年 馬場  望
【評】「新しい」ことに対する新鮮な感覚があります。手袋が新しいというだけで、何かうれしいものです。その感覚を読者に甦(よみがえ)らせてくれます。
ふってくる雪の中には春の種
小野上中1年 佐藤 駿一
【評】雪の中に、春の種が入っているという感覚は面白いですね。すると、雪は春のための種まきになりますね。
寒くなりろうかに落ちる雪の影
小野上中2年 佐藤 一馬
【評】雪も影となってみると、その量感があらためて感じられるものです。屋根などに積もった雪の影が廊下に届いています。着眼点のいい句です。
年明けて鉛筆寝そべりだらけてる
小野上中2年 佐藤 俊樹
【評】寝そべっているのは使われていない鉛筆。だらけているのは、そのまま鉛筆の持ち主の生活態度です。ユーモラスで自嘲的(じちょうてき)な自画像です。
下校中火星を探す冬の風
小野上中2年 佐藤 弘起
【評】下校の途中で、既に日は暮れ、火星が輝き出します。火星を探して、しばし冬の風の寒さを忘れています。
つららのペン雪のキャンパス走らせる
水上中3年 田村 祥子
【評】「雪のキャンパス(校庭)」を白い紙に、氷柱をペンに見たてています。想像のようでもあり、本当にやっていそうでもあります。
一日の終わりが惜しい卒業生
水上中3年 阿部  藍
【評】一日一日が卒業に近づく日々だと思うと、一日の終わりが惜しまれるのです。一日一日を大切に生きているということでもあります。
雪の道鳥まで足あとつけている
高崎片岡中3年 岩田 菜実
【評】「まで」に投影された作者の意識がおもしろい。作者が雪に足跡をつけて遊んでいると、鳥の足跡も鳥の遊びに思えてくるのです。
息白し残りわずかな帰り道
高崎片岡中3年 熊崎 葉子
【評】白い息を吐きながらの寒さのつらい帰路。「残りわずか」という思いは、家の明かりを見たときの思いなのでしょうか。
制服を着るたび感じる卒業近し
高崎片岡中3年 樋口真梨子
【評】卒業間近、3年間着慣れた制服を着るのもあと幾日と数え始めると、当たり前のように着ていた制服への愛着が生まれてきます。
ストーブをなおして終わる午後の授業
高崎片岡中3年 片山  譲
 【評】調子の悪いストーブ。ちょっと調整するぐらいのつもりで始めたのが、なかなか直らずに思わぬ時間を費やします。ユーモラスな句。
妹の遊び声聞き受験勉強
高崎片岡中3年 松本 亮太
【評】勉強を辛いと感じているときに、身近に遊び声があると一層辛さを感じます。普段気にならない妹の遊び声も、今は別です。
悲しみも喜びもある桜道
藤岡小野中3年 篠宮 一司
【評】道に沿って人工的に植えられた桜の並木。当然そこでは悲しみも喜びも数々のドラマが繰り広げられてきたはずです。
飛ぶ鳥を見ると忘れる外の寒さ
富岡南中3年 松本 梨沙
【評】窓に仕切られた部屋から、大空を自由に飛ぶ鳥を見ていると、そこに寒さは感じられません。人間が手に入れた暖かさを考える瞬間です。
この時期は恋する乙女も休業中
下仁田東中3年 斉藤  恵
【評】「この時期」は、受験期を指しているのでしょう。しばらく「恋する乙女」の看板をしまっての勉強です。
冬の朝ガードレールを曲がったら
下仁田東中3年 里見 岳夫
【評】不思議な句。ガードレールを曲がったら、何があり何が起こるのか分かりません。でも、何かあるのです。読者の想像に任されています。