鈴木伸一選

2004年3月2日上毛新聞掲載


鳥たちが集まる場所に春がある
小野上中1年 中澤 奈美
【評】自然の中の生き物たちは、人間よりもずっと季節の変化に敏感なのでしょう。しかし、それに気づいた中澤さんの感覚も大したもの。
夕暮れの影と重なり椿かな
小野上中1年 長久保徴子
【評】シロツバキもありますが、ここでは赤い花でしょう。そこに夕闇が重なり、さらに深々とした色合いをたたえているという感じです。
金曜日なんだか冬がすぎていく
小野上中1年 樋田 将治
【評】明日から休みという安堵感(あんどかん)を覚える半面、何か気の抜けたような思いにもとらわれる金曜日。そんな作者の様子が、よく伝わります。
福寿草重なり合ってる笑顔かな
小野上中1年 佐藤 絵理
【評】黄金色のフクジュソウは、見るからに新春のすがすがしさを感じさせます。なるほど、笑顔の似合う花と言うこともできそうですね。
4時間目青いシャーペン春の予感
小野上中1年 佐藤 未菜
【評】中学生にとって、シャーペンは最も親しみを覚える日用品の一つでしょう。そうした身近なものから季節の推移をとらえたのがいい。
消しゴムで消して感じる春の色
小野上中1年 一場  萌
【評】この句も、身近なものを題材としています。こんなふうに日常の中に詩情を発見できるようになれば、俳句が一層楽しくなります。
冬のやみシャーペンの音こだまする
小野上中1年 佐藤 克紀
【評】シャーペンをノックする音が、耳の底に残っているのでしょう。それが、あたかも闇の奥から聞こえてくるかのように思えるのです。
髪なびく梅の香りの風が吹く
小野上中1年 野村 成美
【評】発想はやや類型的ですが、早春ならではのすがすがしさが素直に描かれており、好感が持てます。この風は、「東風(こち)」でしょうか。
追いかけた落ち葉の数は夢の数
小野上中2年 佐藤 俊樹
【評】むろん、はかなく消える夢もたくさんあります。が、そこであきらめてしまったら、何も実現しません。いつでも夢を持ちましょう。
夜深し空に迷った流れ星
小野上中2年 茂木  光
【評】「夜に迷った流れ星」は、作者自身の姿かもしれません。孤独感から目をそらさず、自分という存在を掘り下げていってください。
大晦日東西南北サイレンや
小野上中2年 佐藤  陽
【評】突然聞こえてきた、けたたましいサイレンの音。大晦日(おおみそか)だけに、いつにも増して不安を感じます。
俳句書く空のようにはうかばない
小野上中2年 野村 大樹
【評】俳句を書き続けるのは大変なことですが、若い人たちには、それを乗り越えてゆく力もあるはず。
首すじのマフラーはずして風を巻く
安中一中2年 佐藤有里恵
【評】「風を巻く」という表現がいい。首すじが清々(せいせい)したと同時に、まだどことなく寒さも感じているといった様子が、自然に分かります。
温かい風ふけばもうクラスがえ
安中一中2年 鈴木 ゆり
【評】学校の1年間というのは、本当に早いものです。2月半ばともなると、新年度のクラス編成が気になり出し、何だか落ち着きません。
春の空誰かが恋におちるとき
安中一中2年 宮沢 綾乃
【評】春は、恋を予感させる季節でもあります。「誰かが」という曖昧(あいまい)な表現をしていますが、恋に落ちるのは、むろん作者自身でしょう。
春光の先には梅が咲いている
高崎片岡中3年 藤田 槙子
【評】きらきらと輝く光は、「春」という季節への水先案内役なのでしょう。ウメの花の楚々(そそ)とした美しさに、心が洗われるようです。
春の水さらりさらりと手をすべる
高崎片岡中3年 阿部 裕子
【評】「さらりさらりと手をすべる」は、確かに春の水ならではの感触。春の水のみに焦点を絞り込んだ書き方が、見事に効を奏しました。
体育館外より寒い冬がある
下仁田東中3年 黛  大介
【評】冷えきった体育館は、外よりもむしろ寒く感じることがあります。「冬がある」の端的さもいい。
春の野をまっすぐ走る白線一本
富岡南中3年 今井 悠子
【評】この白線は作者の脳裡(のうり)に浮かんだ、自分の進路を指し示すものでしょう。「まっすぐ走る」に、若々しい決意のほどがうかがえます。
たくさんの表情できる雪だるま
水上中2年 桑原 成美
【評】きっと作った人の数だけ、違う表情の雪だるまがあるのでしょう。SMAPじゃないけれど、それぞれが世界に一つだけの雪だるま。
風花や猫の王子の絹の耳
松井田小5年 上原  茜
【評】「猫の王子」は、物語の主人公でしょうか。実際の飼いネコを、そう呼んでみたのでしょうか。「絹の耳」が、とてもすてきですね。
地球儀を回して止める日曜日
前橋若宮小6年 書上  奏
【評】少し退屈な日曜日。地球儀を回しては止め、いろいろな国のことを想像してみます。そのうち、退屈も忘れてしまったことでしょう。
一人だけ忘れものして俳句かく
渋川古巻小6年 高橋 優子
【評】忘れものの罰が俳句を作ることだなんて、かえってすてきだなあ、と思います。ちゃんと俳句を作った高橋さんも、もちろん立派。