鈴木伸一選

2004年3月16日上毛新聞掲載


青空が手の中いっぱい春の午後
下仁田東中3年 長瀬 裕美
【評】屈託のない若々しい想像力に、好感を持ちました。気持ちのいい春の青空は、4月からの作者の新生活を祝福しているかのようです。
空みあげ青が広がる今日の午後
下仁田東中3年 〓島 貴子
【評】前句と似たところもありますが、それでもこの伸びやかな作品世界は、やはり魅力的です。ただ、季節を明示した方がよかったかも。
君の背に思い出感じる春の日だ
下仁田東中3年 加部 美旬
【評】卒業が目前に迫り、見るものすべてが大切な思い出に感じられます。中でも「君」という存在は、作者にとって特別なものなのです。
羽広げ睦月の風は思うまま
小野上中2年 佐藤  陽
【評】轟々(ごうごう)と空を吹き渡る風のイメージが、「羽広げ」でしょう。同時に、人知を超えた自然の意思のようなものも感じられる、巧みな句。
秒針が春との距離を近づける
小野上中2年 茂木  光
【評】刻一刻と春が近づいてくるという感じを、うまく表現しました。冬から春へ、どこかでカウントダウンが始まっているのでしょう。
げた箱に並ぶくつ見て春の風
高崎片岡中3年 原田 葉子
【評】げた箱に並ぶ靴を見ただけで、苦楽を共にした級友一人一人の顔が浮かぶのでしょう。卒業間近のさびしさが、よく伝わってきます。
春風がからの教室通りぬけ
高崎片岡中3年 並木 瑠美
【評】並木さんたちが卒業した後の教室は、本当にこの句のような感じでしょう。そんな情景を想像しただけで、切ない気分になりますね。
体育館春一番が響いてる
安中一中2年 真下 卓矢
【評】外では春一番の強風が吹き荒れ、その音が、体育館の中にも響きます。学校生活を通してとらえた季節感が、的確に描かれています。
三月はたくさん笑って過ごしたい
安中一中2年 鈴木 ゆり
【評】年度末はいろいろな行事が重なり、気持ちもどことなく落ち着かないものです。この句には、そんな自分を鼓舞する意図もありそう。
窓わくに写したような春の空
安中一中2年 鷹巣 由枝
【評】窓わくを額縁にして、窓ガラスのキャンバスに写し取ったような、美しい空。いかにも春らしい心なごむ情景を、素直に描きました。
春の空βカロチン摂取せよ
安中一中2年 富沢  司
【評】「春の空」から「β(ベータ)カロチン」へと急転換する意外性がいい。「摂取せよ」の命令口調も効果的。
梅の花静かに歩く夜の道
安中一中2年 山崎 加穂
【評】ウメの匂いを確かめながら、静かにゆっくりと歩く。せわしない日常を離れた、貴重な時間です。
山茶花(さざんか)にサッカーボールかくれてた
榛東中1年 丸橋 裕太
【評】情景が鮮明に見える点がいい。ボールを探していたときの切なさと、ようやく見つかった瞬間の喜びの両方が、よく伝わってきます。
杉の木が天まで届く冬の空
榛東中1年 星野伊津美
【評】冬空に向かって、真っ直ぐに伸びたスギの巨木。見る者の気持ちも、自然と引きしまるようです。
風変わり別れの日へと近づいた
藤岡小野中3年 篠宮 一司
【評】「風変わり」がいい。厳密に言うと無季ですが、ただ冬から春へ、そして早くも卒業式という季節の推移は、確かに伝わってきます。
教室の窓に背を向け春感じる
富岡南中3年 新井 友紀
【評】背中にあたる陽光のあたたかさで、春の到来を確かめます。日常の中の小さな幸せといった感じ。
忘れ雪桜の下に残ってる
水上中2年 市川 友梨
【評】春になっても、まだサクラの木の下に消え残っている雪。雪の多い地域に暮らす人ならではの目が、しっかりと生かされた作品です。
春来ると歩く楽しみまたふえる
水上中2年 鈴木 美優
【評】歩くのに、特別な目的はない方がいいですね。ただ歩くことを楽しみ、目に映るものや聞こえてくる音を、虚心に受け取りましょう。
あおげどもあおぎきれない桜かな
境南中2年 新穂 偉文
【評】いくら見上げても、全てを視野に収めることができないほど大きなサクラの木。自然は偉大です。
あたたかな風につつまれ一年生
前橋桃川小5年 高橋 伶奈
【評】あたたかな春風は、一年生の子どもたちを祝福し、守っているのです。高橋さんたち上級生も、きっと同じ思いでいることでしょう。
春の日はジャンケンしなくもチョウがおに
前橋桃川小5年 下田まりも
【評】下田さんのまわりを、鬼ごっこをするかのようにひらひらと飛ぶチョウ。春らしい、楽しい俳句。
寒い朝信号待ちの長いこと
前橋若宮小6年 書上  奏
【評】この気持ちは、とてもよく分かりますね。登校時でしょうが、こうして日常の中から俳句を書けるのは、書上さんの心が豊かな証拠。
がんばるぞ卒業式の呼びかけを
富岡高瀬小6年 安藤亜由美
【評】卒業生から在校生への呼びかけでしょう。小学校での最後の大役を、いい思い出にしてください。
どんど焼きポンポンなるよ竹の音
群馬国府小6年 森山 千聖
【評】炎が勢いよく上がり、中のタケが爆(は)ぜてポンポン鳴ります。にぎやかなどんど焼きの様子が、臨場感豊かに描かれています。
今年こそ絶対バナナ食べてやる
渋川古巻小6年 高橋 優子
【評】苦手な食べ物は十人十色だけど、バナナというのは珍しいかも。ひとがおいしそうに食べているのを見ると、ちょっとくやしいよね。
春が来てぼくも変わるがみんなも変わる
榛東南小6年 星野 大智
【評】変わるというのは、成長するということ。新中学生としての決意に、私も応援したくなりました。