鈴木伸一選

2004年4月27日上毛新聞掲載


大そうじつくえの上も新学期
群馬上郊小5年 桜沢 美玖
【評】「つくえの上も」という発見がいい。新学期を迎えるすがすがしい気分と、勉強や運動に対する意気ごみが、素直に伝わってきます。
石の上ねこがいるだけであったかそう
群馬上郊小5年 中里 李花
【評】日光にあたためられた石の上の気持ちよさを、ネコはよく知っているのです。いかにも幸せそうなネコの顔が、眼に浮かんできます。
春風がまばたきしてるかわいいな
沼田小5年 中嶋 麻衣
【評】「春風がまばたきしてる」のように、人でないものを人のように表現することを擬人(ぎじん)法と言います。この句は、それがとても効果的。
春風と桜の花とのかい話がはじまる
沼田小5年 小材 麗加
【評】満開のサクラが春風にゆさゆさと揺れている様子を、会話に見立てたのでしょうか。「はじまる」に臨場感(りんじょうかん)があって、いいですね。
みんながね笑って通る春の門
前橋桃川小6年 高橋 卓也
【評】校門を通るだれもが、にこにことうれしそうな顔なのです。春の気持ちよさや新学期の楽しさで、自然と笑みがこぼれるのでしょう。
妹が桜の木のした一年生
前橋桃川小6年 橋本  唯
【評】お姉さんとしてのやさしいまなざしに、心があたたかくなります。サクラの花も、きっと妹さんを見守っていてくれることでしょう。
みどりをねくばっているよ春風が
前橋桃川小6年 高橋 伶奈
【評】春風は、緑の配達屋さんなのです。確かに、そんな感じがしますね。似た句は他にもありますが、これはこれで、よくできた作品。
始業式桜の木にもごあいさつ
前橋桃川小6年 小野里 彩
【評】校庭のサクラも、小野里さんと同じく、新学期が始まるのを楽しみに待っていたことでしょう。大きな声であいさつができましたか?
ランドセルしょうとりっぱな1年生
前橋桃川小6年 水出 奈美
【評】大きなランドセルを背負った1年生の姿は、とてもほほえましいものです。「りっぱな」は、水出さんのやさしさを感じさせる言葉。
花ふぶき一年生がうれしそう
前橋桃川小6年 長沼 匡洋
【評】うれしそうに花吹雪を追いかける1年生を、最上級生である長沼君が、やさしく見守っています。
梅の花ねこの手みたいてんてんと
前橋桃川小6年 八木原 忍
【評】ウメの花って、なるほどこの句の通り。始めはネコの足跡みたいに点々と花をつけているものね。
卒業だいつもつぶやくぼくじしん
安中後閑小6年 忰田 直樹
【評】自分が卒業生という立場になってみると、実にさまざまな思いが湧いてくるものです。それを、しみじみと噛みしめている忰田君。
ブランコのこぐ音春風話してる
下仁田小坂小6年 長岡 里菜
【評】「ブランコ」は、もともと春の季語なんだけど、この句のように、春風の中で揺れているのが、確かに一番似合っているみたいです。
花びらのちりゆくすがた夢のよう
下仁田小坂小6年 茂木  淳
【評】サクラが散っているのだと思いますが、その夢のように美しく、そしてはかない風情(ふぜい)は、古くから日本人の心をとらえてきました。
見上げれば音のするほど青空だ
渋川古巻中3年 登坂 直道
【評】真っ青に晴れ上がった空は美しいと同時に、硬質な緊張感にも満ちています。触れたら音を立てて崩れ落ちそうで、恐いくらいです。
ボールペン自意識過剰の春が来て
小野上中3年 佐藤 俊樹
【評】「自意識過剰」と言う一方で、それを客観的に眺める、もう一人の自分。こうして自己内面と向き合ってゆくのは、とても大事です。
おしゃべりな桜の下の笑顔かな
小野上中3年 吉沢絵理奈
【評】おしゃべりなのはサクラの花であり、作者も含めたサクラの下の人達でもあります。花見ではなく、学校風景と読む方がいいですね。
ふり返りふと思い出した花ふぶき
小野上中3年 斉藤 美穂
【評】作者にとって春という季節の記憶は、つねに花吹雪と共にあるのです。それは幻想であるだけに、一層美しく感じられるのでしょう。
新しいくつがてれてる入学生
小野上中2年 朝比奈明子
【評】真新しい靴が、喜びと緊張感が交錯(こうさく)する新入生の心の内を物語っています。1年前の朝比奈さんも、きっと同じだったのでしょう。
窓ガラス映っているのは桜かな
小野上中2年 佐藤 絵理
【評】曇りガラス越しに、サクラの色がぼんやりと見えるのでしょう。直接は見えない分、かえってイメージが美しく広がる気がします。
満開の桜に見える新入生
小野上中2年 野村 成美
【評】「満開の桜」は、ういういしい新入生の比喩(ひゆ)でしょうか。サクラを見ると新入生の姿が目に浮かぶ、という読み方もできますが…。
太陽の光で目覚める桜かな
小野上中2年 佐藤 駿一
【評】夜も幻想的で美しいけれど、朝のサクラには、ある種のういういしさが感じられ、これも魅力的。佐藤君の好みも、後者でしょうか?
すぎ去りし笑顔はいつも桜色
小野上中1年 宮 ゆりか
【評】サクラは美しさだけでなく、こうしたさびしさや切なさを感じさせる一面もあるんですね。たいへんうまい書き方に驚かされました。
今日の朝夢の話でもり上がる
小野上中1年 野村  楓
【評】睡眠中の夢ではなく、クラスのみんなで将来の夢を語り合い、盛り上がったのだと読みたい。季節を書くと、もっとよかったかも。
新しき想いをのせて吹く春風
下仁田中3年 下山 貴士
【評】新学期、そして統合による新しい学校生活のスタート。たくさんの「新しき想い」を乗せた春風が、未来へと吹き過ぎてゆきます。
快晴の校庭をまう桜かな
下仁田中3年 須江  光
【評】散ったサクラの花びらが風に乗り、校庭を舞っています。その情景が鮮明に見えてくる点が、何よりいい。「快晴」の効果でしょう。
春深し木々も色づき見上げてる
下仁田中3年 上原 聡美
【評】私達は空を見上げて、季節の推移に思いを馳(は)せたりしますが、木々も同じみたいです。自然との一体感が、素直に伝わってくる作品。
日がのびて駐輪場がさわがしい
安中一中2年 金森絵梨那
【評】学校の駐輪場だと思いますが、下校時間になっても、まだにぎやかな声が響いているのでしょう。いかにも春の暮れという感じです。
おぼろ夜の人恋しくて長電話
水上中3年 小俣 勇也
【評】ものみなおぼろげな春夜は、ふと人恋しくなるものです。そんなとき、古人は文(ふみ)で思いを伝えましたが、今は電話が代役を務めます。