鈴木伸一選

2004年6月8日上毛新聞掲載


自販機で炭酸選ぶ季節かな
小野上中2年 佐藤 未菜
【評】この「季節」は、夏以外に考えられませんね。炭酸のはじける泡が、若い作者のイメージにいかにも似合っているという気がします。
何気ない星空青く皐月かな
小野上中2年 唐沢 秀行
【評】いつもの星空。でも、確かに皐月(さつき)ならではの青い星空なのです。季節というのは、このように何気なく実感されるものなのでしょう。
新緑に照らされてるのは青い鳥
小野上中2年 飯塚 仁美
【評】「青い鳥」は現実の存在というより、作者のイメージと受け取る方がよさそうです。メーテルリンクの童話なども連想されますね。
十二時のコップに注ぐ五月かな
小野上中2年 長久保徴子
【評】「五月」という名の炭酸飲料を注いだような感じ。このさわやかなイメージには、夜ではなく、昼の「十二時」がふさわしいですね。
夕がたのつばめはいつも天を舞う
小野上中3年 佐藤 俊樹
【評】「天を舞う」がいい。これはツバメを一旦、自分の内面に取り込み、再び映像化したものでしょう。だから「詩」があるんですね。
そよ風と暑さが交じるテニスかな
小野上中1年 斉藤 俊介
【評】全力でプレーしているときの暑さと、一息入れたときの風の涼しさ。どちらも心地よいものだということが、実感として伝わります。
校庭の夏のにおいのどまんなか
沼田西中3年 桜井あゆみ
【評】「どまんなか」という大胆な表現が、いかにも若々しい。夏という季節を全身で感じ取っている作者が、何だかまぶしく見えます。
水たまり星が映れば平和かな
沼田西中3年 市橋 雅史
【評】作品の背景には、この地球が決して平和ではない、という思いがあるのでしょう。水たまりに星が映る日を、ぜひ迎えたいものです。
家々を若葉が包む五月かな
沼田西中3年 水野 翔平
【評】若葉の緑に包まれた家々が、ぱっと目に浮かびます。正攻法の書き方で、初夏の季節感をしっかりととらえている点が好印象です。
はつらつと青い一刻光る汗
沼田西中3年 深代 優美
【評】「青い一刻」は、青春の時間を比喩(ひゆ)したものでしょうか。二度とない青春時代をはつらつと、さわやかな汗と共に謳歌(おうか)してください。
新緑と深い緑の高台寺
下仁田中3年 田村亜津紗
【評】豊臣秀吉の正室北政所(きたのまんどころ)が眠る、京都の高台寺。木々の浅い緑色と深い緑色が重なって、より一層美しいハーモニーを奏でています。
ハイキング足がはずんで鳥みたい
高崎片岡中1年 茂木 瑞葵
【評】小鳥などがぴょんぴょん飛び跳ねるようなイメージかな。ハイキングを全身で楽しんでいる感じが、ユーモラスに描かれています。
若草の色に染まった河川敷
高崎片岡中1年 川島 佑介
【評】見るからにすがすがしい河川敷の情景を、素直に表現。運動するもよし、のんびりと寝転がるもよし。川島君なら、どうしますか?
どこまでも遠くに響く蝉の声
境南中3年 関口 理紗
【評】セミの鳴く木に近づくと、また遠くの木から聞こえてくる別のセミの声。作者とセミとの間の埋め難い距離感が、どことなく切ない。
夏休み宿題忘れて日焼する
境南中3年 田村 和英
【評】もちろん、宿題は常に頭を離れないのです。つまりこの句は、「宿題なんか忘れたい」という作者の願望の表明ということでしょう。
そよ風に風鈴なれば夏休み
富岡南中3年 飯塚 稚菜
【評】風鈴の涼やかな音色から、飯塚さんの夏休みは始まるのです。日常生活の一こまに詩情を見出せるのは、飯塚さんの心が豊かな証拠。
夏の空見上げて私はスイミング
月夜野中3年 野村 未来
【評】背泳ぎをしているのでしょうか。スポーツの厳しさよりは、むしろのんびりとした楽しさを感じます。「見上げて」の働きでしょう。
夕暮れてはだしにつめたい由比ヶ浜
下仁田小坂小6年 神戸詩央里
【評】修学旅行の俳句として、とてもよくできています。「はだしにつめたい」と自分の体験を具体的に書いたので、説得力があるんです。
日がつよく木陰日陰と順に行く
下仁田小坂小6年 岩井  力
【評】「木陰日陰」というリズムが印象的。日ざしをよけながら歩いて行く様子が、よく分かります。暑い日は、私も同じことをしますよ。
半僧坊先生みえてほっとした
前橋若宮小6年 阿部 弘樹
【評】鎌倉建長寺の奥にある半僧坊(はんそうぼう)へ続く、長い石段。ちょっと心細くなったところに先生の顔が見えて、本当にほっとしたことでしょう。
友達がしおりおとして風もなく
前橋若宮小6年 春山 未夢
【評】修学旅行のしおりを、友だちが落としてしまったのです。一生懸命になぐさめている春山さんのやさしい気持ちが、よく出ています。
長谷寺の見はらし台に春の風
前橋若宮小6年 小渕 雅史
【評】鎌倉の長谷寺にある見晴らし台から、相模湾がよく見えますね。心地よい春風に旅の疲れもしばし忘れる、修学旅行での一こまです。
ホームラン打ってみたいな夏の空
前橋桃川小6年 千葉 寿郎
【評】野球好きなら、一度はこう思うよね。真っ青な夏の空に、大きな弧を描いて飛んでゆく白球。想像しただけで、わくわくしてきます。
シャボン玉おくじょうこえて雲の上
前橋桃川小6年 田子 基琳
【評】現実のシャボン玉は、すぐ割れちゃうけど、心の中のシャボン玉は、雲の上にだって飛んでゆきます。童話のような、夢のある俳句。
しゃぼん玉ぐにゃりとまがったにじかかり
前橋桃川小6年 鯉渕 杏子
【評】シャボン玉に虹が見える、では平凡。でも「ぐにゃりとまがった」は、鯉渕さん独自の発見。発見のある俳句は、読んで楽しいです。
春の風東照宮に気持ちよく
新田綿打小6年 小林 頌太
【評】日光東照宮かな。尾島町の世良田東照宮かな。どちらも立派なお宮で、広い境内(けいだい)に立つと、春風がいかにも気持ちよく感じられます。
春の風いつかはきっとつかめるよ
新田綿打小6年 富沢 達貴
【評】「春の風」は、夢や希望の象徴のようにも思えます。勉強に運動にがんばって、いつの日か、その手に春風をつかみ取ってください。*新田綿打小の作品は、大川浩子先生に指導していただいたものです。