林桂選

2004年6月15日上毛新聞掲載


はなみずきちょうちょうみたい赤と白
沼田薄根小5年 中村 愛南
【評】ハナミズキの花びらに見える部分は、実は花びらではなく萼(がく)。チョウチョウみたいに見えるはそのせいかしら。
学校のプールの中でカモ泳ぐ
前橋桃川小6年 小野里 彩
【評】学校のプールで、生徒が使わない冬の間には、カモの水泳教室が開かれていたのです。大発見です。
春の風さいみん術をかけてくる
前橋若宮小6年 川島由紀子
【評】気持ちいい春風を受けていると、なぜか眠くなります。春風は催眠術師だったのです。注意しないといけませんね。
水族館魚たちの目がみつめてる
前橋若宮小6年 小平 幸乃
【評】魚が見つめているのではなく、「目」が見つめていると言います。魚と目を合わせるという希な経験がうまく表現されています。
けしゴムといっしょに俳句を作ろうよ
前橋若宮小6年 齋藤 健哉
【評】何度も書いては消しての推敲(すいこう)を重ねての俳句作り。でも「いっしょ」という言い方に、楽しんでいる様子があります。
むらさきのふじだなの下あるいたよ
安中磯部小6年 秋野 智美
【評】「あるいたよ」で、公園などの相当大きな藤棚と分かります。高さもありそう。それが藤の花の見事なイメージに結実します。
そよ風も背中のリュックと遠足だ
甘楽小幡小6年 高木 里奈
【評】背中のリュックについてくるそよ風。遠足のさわやかな気分が的確に表現されています。
子馬見て我もまっすぐ立ち上がる
高崎片岡中1年 佐々木正乃
【評】子馬が立ち上がる場面を目撃。牧場などの体験かテレビなどの映像かは分かりませんが、それが「我も」に返ってくるところが眼目。
つばめの巣ずっと見てると顔を出す
高崎片岡中1年 逢澤  栞
【評】動物はずっと見てても見られないことが多い中で、ツバメのひなは待っていると見ることができる存在。よく感じがでています。
桜風剣道じょうにふいている
高崎片岡中1年 岡山 弘樹
【評】剣道場に吹き込む桜の香りの風。入学しての新しい部活動でしょうか。清新な気持ちも感じられる作品です。
ハイキング丘の上まで競争だ
高崎片岡中1年 井上 奈保
【評】「丘の上」は、休憩地か目的地。近く見えてくると心せいて、競争になります。最後は走り出しそうな勢いの友達まででてきます。
雨上がり道路の鏡に青い空
小野上中1年 斉藤 俊介
【評】雨上がりの青空。道路鏡にも真っ青に広がっています。鏡の中に切り取って青空が、雨後の爽快感を伝えています。
やわらかな雲のようなアカシアや
小野上中2年 佐藤 絵理
【評】アカシアの花の、もやっとした全体像を、雲に見たてて感じでています。「や」止めの他に、「よ」という止めの言葉もあります。
筆箱のチャックを光らす青い空
小野上中2年 飯塚 仁美
【評】屋外のスケッチなどでしょうか。陽光を受けて光る筆箱のチャック。視点を絞って陽光の強さを上手く表現しています。
空の色色鉛筆で書き写す
小野上中2年 一場  萌
【評】空の質感は、色鉛筆で書くのがいいのかもしれない。この句を読むと、そんな風に思えてきます。色の浅い初夏の空でしょう。
青い空今日はどんな絵を描くのか
月夜野中3年 桑原 千鶴
【評】朝の青空。今日一日の空模様が映し出されるはずです。その空を思うことは、今日一日の自分の生活を思い描くことにつながります。
陽炎の上を歩いて通う道
月夜野中3年 生方成一郎
【評】「陽炎の上を歩いて」が上手い。陽炎の立つのが見えている道。そこを行くことは、その上を歩いてゆくことに他なりません。
夏近し山の緑が金色に
下仁田中3年 新井 直人
【評】「金色に」は、太陽の光りを返す葉の輝きです。眩しいばかりの日の光の表現。なるほど「夏近し」です。
風薫る京都の町をゆっくり歩く
下仁田中3年 飯井小百合
【評】「ゆっくり歩く」の中に、旅の気分が出ています。何処かに行くのが目的ではなくて、今見ていること自体が目的の歩きです。
竹の子が高台寺にて竹になる
下仁田中3年 下山 智代
【評】竹の子は芽を出したところで、竹になるしかありません。高台寺に出た竹の子は、高台寺で竹になるのです。ユーモラスでかつ深淵な句。
妹がアカシアかかえて夜帰る
下仁田中3年 岩井 友美
【評】なぜ妹がアカシアを抱え、しかも夜返ってくるのか謎。でも、句にしたら謎めいてくる日常の断片は多いはず。句に魅力を添えます。
きり割って春日大社へ歩いてく
下仁田中3年 今井 英里
【評】「きり割って」が上手い。霧に包まれた春日大社への道も魅力的なら、その霧を動かして歩んでゆく姿も魅力的です。
夏浅しねむそうな顔の大仏様
下仁田中3年 柴田 大輔
【評】確かに大仏様は半眼の相。しかし、それを眠そうだと自分の仲間を見つけたように思うのは、夜遅くまで起きていた柴田君の問題。
母の日に祖母にわたした花と愛
沼田西中3年 金井 寛子
【評】母代わりに育ててくれたお祖母さんへの感謝の気持ちなのでしょう。フィクションかノンフィクションかは分かりませんが、心に残る句。
空気食べ背骨ができる鯉のぼり
沼田西中3年 水野 翔平
【評】類句の多い作品ですが、この句のいいところは「背骨ができる」というオリジナルの見たてがあるところ。
野球帽かぶって彼も夏めいて
沼田西中3年 木内 貴大
【評】「彼も夏めいて」の突き放した批評にユーモアが宿ります。暑さ避(よ)けの野球帽を被るようになった友。ここにも夏があります。
青空やゆらりゆらりと雲は行く
沼田西中3年 野上 沙織
【評】「ゆらりゆらり」にゆったりとした時間があります。人間とは違う時間が雲には流れています。
桃の実よもこもこどんどんうまくなれ
小野上中3年 野村 美幸
【評】「もこもこどんどん」は呪文の言葉。野村さんのオリジナルなのか、物語か何かで知ったのかは不明ですが、面白い。
また明日また明日私の夕陽
小野上中3年 斉藤 美穂
【評】中七が字足らず、下五が字余り。この変則のリズムが、夕暮れの感傷的な気分をよく表現しています。
太陽が向日葵のひかりあびている
境南中3年 須藤  翔
【評】ヒマワリの花の明るさの誇張表現として、これ以上のものはないでしょう。太陽よりも明るいヒマワリ。
滝の音キャンプに行くたび耳に入る
境南中3年 高橋 直人
【評】滝の音が聞こえる林間のキャンプ場。いる間中滝の音が響き続けています。「耳に入る」が無意識の中での音の感じをよく伝えています。
へやの中風鈴ゆびでならしてる
富岡南中3年 永峰 克麻
【評】風のない部屋の風鈴。指で弾いて音を出します。部屋の中も相当暑くなってきていそうです。徒然の孤独な所行とは違いそう。