林桂選

2004年6月29日上毛新聞掲載


りょこうの日木々の間に暑い日ざし
沼田薄根小5年 晴智ありさ
【評】いかにも夏の旅行。きっと早い出発時間にもかかわらず、すでに夏の日差しは樹間に広がっているのです。
雨降れば長ぐつと歩く朝の道
前橋桃川小6年 野中 沙耶
【評】「長ぐつをはいて」ではなく、「長ぐつと」であるところがいい。長ぐつは道具ではなくて、雨の日の仲間です。
雨がふりかさをひらいて下校した
前橋桃川小6年 福本 悠介
【評】「かさをひらいて下校した」の即物的な把握(はあく)は、俳句の大切な方法です。不思議を発見する眼差しでもあります。
シャボン玉虹色まわる夢のよう
前橋桃川小6年 高橋 裕子
【評】シャボン玉の表面を見ると、確かに「虹色まわる」の言葉がぴったり。表面は絶え間なく動いているように見えます。
雨のあと空みずみずしく光ってる
前橋桃川小6年 岡村理沙都
【評】雨の後の空は、まだ乾ききらないで、水の感じが残っています。その水が反射するように空は輝きだします。
クローバーおし花にしてとっておく
前橋桃川小6年 下田まりも
【評】四つ葉のクローバーだったのでしょうか。押し花にして取っておくことにしました。毎日いいこどがある期待が持てるかもしれませんね。
青い空白い雲だけ春のもの
伊勢崎豊受小6年 板垣 敬介
【評】白い雲に春の長閑さが集まって、ぽっかり浮いているようです。季節は早くも夏に向かって動いているのに。
さくらちりでもまだ消えぬ春の風
伊勢崎豊受小6年 牧山かおり
【評】桜の名残が風に残っているというのでしょう。風は季節のさきがけでもあり、季節の名残でもあるのでしょう。
風が鳴り鈴の音も鳴る五月かな
伊勢崎豊受小6年 松浦エミリオ
【評】五月の爽快感を、比喩(ひゆ)的に表現。「風が鳴り」はともかく、「鈴の音が鳴る」まではなかなか出ない言葉です。
群馬県四方にそびえる春の山
伊勢崎豊受小6年 小林 優作
【評】群馬を取り囲む山々も、春が来るといっせいに春の山になります。すごい量と広がりで春はやってくるのです。
はすいけの心のもじをこいおよぐ
新田綿打小6年 渡辺 祐樹
【評】「鯉」に「恋」を掛けるようなことはしていないでしょうが、「心のもじ」を泳ぐ「こい」となると、読者には想像が広がります。
山の中空気がうまい春来る
新田綿打小6年 小倉佑一朗
【評】春にもいろいろあるでしょう。「空気のうまい」という春もあったかと、一読納得させられました。
春の日の日ざしをあびて風になる
佐波東小6年 高野 秀一
【評】「風になる」のは、高野くん。そして、日ざしを浴びたすべてのもの。春の日ざしの幸福感と一体感。それは風になったような気分です。
野球ではスコアをつけて代打いく
佐波東小6年 阿久津 新
【評】スコアラー兼代打の阿久津君。少人数のチームで、一人で何役もやってみんな頑張っているのでしょうね。
蚊にさされ鼻がピエロになりにけり
榛東南小6年 笠原 大良
【評】「なりにけり」に少しおどけが入っていて、俳句もピエロのようです。赤い鼻の自分をピエロに見たてるのは、簡単なようで難しい。
もえろ火よ明るくてらせ星空を
六合中1年 熊川 裕也
【評】キャンプファイヤーの火。星空を焦がすほどの火になれ、というのは今このときの充実感が思わせるものです。
湖の上にうっすら霧かかる
六合中1年 山本 優花
【評】湖は霧がかかりやすいものですが、それでも簡単に目撃はできないものです。早朝の榛名湖でしょうか。
寝ころんで宇宙に続く空を見る
前橋四中1年 書上  奏
【評】「宇宙に続く空」がいい。見えているのは青空。大気圏の内ですが、その先に広がる宇宙空間は心の中で想像して見るのです。
夕焼けがうつって家が美術館
高崎片岡中1年 小林 由佳
【評】窓枠を額縁に、美しい夕焼けが広がります。居ながらにして家は美術館に変わるのです。借景美術館とでもいったところです。
雲の峰ながめて走ってしらぬ町
高崎片岡中1年 近藤 千昭
【評】雲の峰を追いかけて知らぬ町まで来てしまったという童話のような一場面とも、雲の峰によって知らぬ一変する町の姿の表現とも読めます。
扇風機教師の声を遠ざける
高崎片岡中1年 岡田 仁美
【評】扇風機の風の中の至福感にいると、教師の声が届かないのです。別世界にワープした気分なのですね。
田植えどきおばあちゃんと泥だらけ
高崎片岡中1年 関根沙由美
【評】「おばあちゃんと」がいい。お祖母さんの田植えのお手伝いをしたのでしょうが、何か泥遊びのよう。お手伝いを楽しんだのでしょう。
どろどろにアイスクリームがとけている
高崎片岡中1年 堀   佑
【評】ちょっとした油断か、管理ミス。しかし、アイスは正直に、容赦なく「とけている」のです。「どろどろに」は無念の思がにじみます。
たくさんのマーガレットが空にむく
下仁田中1年 福田 有香
【評】「たくさんの」「空にむく」は、群生して上向きに花をかかげるマーガレットの花の咲き方そのものです。
ラケットで虫さされ掻く夏姿
小野上中2年 飯塚 仁美
【評】蚊に刺されることも増える夏のテニスの練習。無意識の内に、ラケットを掻く道具に使っています。視点が面白くて、愉快。
鹿達の後ろを歩く初夏の日に
下仁田中3年 磯田絵里菜
【評】奈良公園でしょう。鹿も行き交う人と同じように違和感なく歩いています。前を行くのは人ではなく鹿なのです。これも貴重な体験。
クワガタを見つけた先生はしゃいでる
下仁田中3年 諸星安里紗
【評】諸星さんの先生を見る目に余裕があります。クワガタなんか珍しくないのか、興味がないのか分かりませんが。
朝の風君の荷物も吹かれけり
小野上中3年 佐藤 慶太
【評】旅行の出発の場面。「朝の風」は、旅行への期待も乗せて吹いてきます。君の荷物も君の期待を乗せて、期待の風に吹かれています。
にんじんを食べて感じる暑さかな
小野上中3年 佐藤 一馬
【評】「にんじんを食べて」から「暑さかな」への飛躍が面白い。なぜ、ニンジンなのか不明。ただ面白いばかりです。
青々と漲る中に木霊して
小野上中3年 佐藤  陽
【評】夏山の空気を感じさせる作品。木々の緑が空気に流れ出しているような山脈を、木霊が渡っているのです。
雨上がり霧の中にも法隆寺
松井田北中3年 上原  惇
【評】雨上がりの後の霧に包まれる法隆寺。せっかくの旅行なのに残念とも言えますが、こんな趣の法隆寺はなかなかみられません。
衣更新たな気持ちがわきおこる
富岡南中3年 高橋  歩
【評】衣更(ころもが)えは、季節の変化とともに、気持ちも入れ替えることだったのだと分かります。