鈴木伸一選

2004年7月6日上毛新聞掲載


白い雲夏がきたからでかいなあ
小野上中2年 樋田 将治
【評】思わず口をついて出たような「でかいなあ」に、樋田君の感動の大きさがうかがえます。飾らない率直な書き方が、かえって魅力的。
二十分俳句を書こう梅雨の音
小野上中2年 飯塚 仁美
【評】日常生活に、俳句が定着してきたようですね。こんなふうにして書き続けてゆくことができれば、いい俳句がどんどん生まれますよ。
春過ぎて川の流れの早さかな
小野上中3年 佐藤  陽
【評】夏の到来と共に、流れの速くなった川。実際にそうなのでしょうが、心理的に速くなるように感じられるということもありそうです。
お守りを買い過ぎたかな京の旅
安中一中3年 田中 貴規
【評】私も経験があります。確かにお守りって、つい欲しくなるんですよね。それもまた、修学旅行のいい思い出として大切にしましょう。
鈴つきのちりめんさいふ夏の音
安中一中3年 桜井 結香
【評】「ちりめんさいふ」が、いかにも京みやげにふさわしい。小さな鈴の音を耳にするたび、夏の京都の情景が目に浮かぶことでしょう。
五月晴れ友と旅する京の町
安中一中3年 中嶋みなみ
【評】修学旅行の楽しさに弾む心が、たいへん素直に表現されています。一人旅もいいけれど、やはり仲のよい友だちとの旅は格別です。
もう夏ねそんな母の笑い声
下仁田中3年 磯田絵里菜
【評】日常の会話が、そのまま俳句になったような感じ。それだけに生活実感があり、楽しげな母子の笑い声も、確かに聞こえてきます。
田植えすみ明るくなった田んぼ道
下仁田中3年 下山 智代
【評】田に張られた水がきらきらと輝き、みずみずしい緑の苗の上を、風が通り過ぎてゆきます。気持ちまでも明るくなるような光景です。
滝の声いつからここにいただろう
下仁田中3年 下山 貴士
【評】音ではなく「声」。つまり、滝に一種の生命力を感じ取っているのでしょう。自己存在への問いかけと併せ、なかなか哲学的な内容。
川ぎりの立ちこめる中君想う
下仁田中2年 茂木 奏子
【評】川霧が立ちこめる幻想的な風景にたたずむ作者。まるで映画の一場面のようです。やや甘い内容も、作者の年齢には見合ったもの。
仲見世の明るい声の夏の空
吉井中央中2年 朝比奈 亮
【評】庶民的な活気にあふれた浅草の仲見世通り。晴れ上がった夏空に、人々の声が明るく響きます。そんな光景を、見事に活写しました。*吉井中央中の作品は、大沢ひとみ先生に指導していただいたものです。
夏空の雲行く先にぼくも行く
前橋広瀬中3年 狩野  玲
【評】未知の世界へのあこがれを感じますが、それをそのままで終わらせず、実際に自分の足で確かめに行こうという若々しい気概がいい。
夕立をわざと浴びて家に帰る
富岡南中3年 高橋  祥
【評】「わざと浴びて」に、共感しました。心の中にわだかまるものがあったりすると、こんな気分になることが確かにありますものね。
風鈴の金魚が風の中泳ぐ
富岡南中3年 塚田真梨菜
【評】着眼点がおもしろい。風鈴に描かれた金魚が涼しそうに泳ぐさまを、うまくとらえています。ただし、類想句があるかもしれません。
蛍の光幼き頃の子守歌
榛東中3年 松岡 孝行
【評】ホタルの光が幼いころの記憶を呼び覚まし、「子守歌」という言葉が浮かんだのでしょう。童謡のような懐かしさを感じさせる俳句。
桜咲く希望と不安あわせもつ
前橋芳賀中3年 岩崎 綾奈
【評】希望と不安が交錯する新3年生の胸の内が、よく分かります。今が盛りと咲くサクラを見ても、気持ちはどこか落ち着かないのです。
東大寺扇子買ったら風がふく
沼田西中3年 桜井あゆみ
【評】実際には、まだ扇子を使っていないのです。買った瞬間に感じた涼やかな気分を、「風がふく」で表したと読む方がいいでしょう。
青嵐何かを届けて次の場所
高崎片岡中1年 重成  航
【評】新緑の木々を揺らして吹く青嵐(あおあらし)は、私たちの心に、さわやかな思いを届けて通り過ぎてゆきます。他の風では、こうはいきませんね。
人間の苦しさ見ている夏の空
高崎片岡中1年 笹口 和秀
【評】「人間の苦しさ」は、かなり幅広く、また浅くも深くも解釈できる言葉。いずれにせよ、難しいテーマに取り組んだ点を評価します。
しんしんと緑がにおう妙義山
松井田臼井小6年 猿谷 雅人
【評】「しんしんと」という表現に感心しました。山の緑の深さはもとより、そのにおいまでもが、豊かな臨場感(りんじょうかん)と共に伝わってきます。
田んぼから田んぼへ蛙点呼する
前橋桃川小6年 高橋 裕子
【評】田んぼで1匹が鳴き出すと、それに応えるように次から次へと鳴き出すカエル。その様子を、「点呼」と表現したのがおもしろい。
学校のプールがたのしみ今日の朝
前橋桃川小6年 堀川 茉里
【評】朝起きて、すぐに空を見ます。今日はよく晴れて、プールに入れそうです。わくわくしながら登校する堀川さんが、目に浮かびます。
なつくればよるのおんがくゆめのうた
伊勢崎豊受小6年 ブライアン・アレシス
【評】ゆるやかに流れる音楽を聴きながら、いつしか夢の世界を旅しているのです。幻想的であり、また詩的な魅力を感じさせる作品です。
夏のそらくもがもこもこたのしそう
伊勢崎豊受小6年 町田 綾美
【評】もこもこした雲は、入道雲かな。町田さんが、いろんなことを楽しいと思える心の持ち主だから、雲も楽しそうに見えるんですね。
くもりでも風がないのではんそでで
前橋若宮小6年 春山 未夢
【評】春から夏へと季節が変わるころは、暑くなったり涼しくなったりで、着るものにも迷います。そんな様子を、うまくとらえました。
巣立ちした巣には風ふく今日の午後
下仁田小坂小6年 永井 梨沙
【評】ひなが巣立った後の鳥の巣は、風に吹かれて何となくさびしそう。「今日の午後」という部分で、そのさびしさがさらに際立(きわだ)ちます。
あつい中とにかくなげたボールなげ
前橋山王小6年 関 真希子
【評】陸上記録会かな。「とにかく」という言葉に、緊張感から夢中でボールを投げた関さんの心の中が、とても正直にあらわれています。*前橋山王小の作品は、谷栄子先生に指導していただいたものです。
りんごの葉雨にぬれても光ってる
沼田薄根小5年 松井 元輝
【評】みずみずしいリンゴの葉が、ぱっと目に浮かびます。松井君が、普段からリンゴの木をよく観察していることが、自然と分かります。