林桂選

2004年7月13日上毛新聞掲載


大仏はたぶん足がしびれてる
前橋桃川小6年 高橋 卓也
【評】ずっと座っている大仏さまは、きっと足がしびれているはずだと思うだけで、身近に感じることができます。
春の空フワフワと光のシャボン玉
前橋桃川小6年 角田 周平
【評】「春の空」を、光のシャボン玉が飛んでいるようだとたとえているのでしょう。感覚的に鋭いものがあります。
妹は三才なのに作曲家
前橋桃川小6年 八木原 忍
【評】作詞家でもあるのでしょう。歌うことが楽しくて、次々と自分の歌をアドリブで繰り出します。「作曲家」といったところがゆかい。
水たまりあめんぼたちのプールびらき
下仁田小坂小6年 佐藤 梨菜
【評】水たまりにあつまったアメンボたち。それをプール開きに見たてました。きっと佐藤さんの学校のプール開きもあったのでしょうね。
祖母の庭みつのにおいがたちこめる
下仁田小坂小6年 佐藤 由希
【評】庭づくりに励んで、たくさんの花を咲かせたお祖母さん。それを「みつのにおい」でうまく表現しました。
我がかげにあめんぼあわてた水たまり
甘楽小幡小6年 高木 里奈
【評】アメンボをのぞきこんで思わず落とした影は、アメンボにはびっくりするような異変だったのですね。観察がよくできている句です。
弟がキリにこわがりもう帰ろう
前橋若宮小6年 下田  拓
【評】たしかに山道などで濃霧にまかれて視界がふさがれると、にわかに不安になります。弟さんの反応ももっとも。
赤ちゃんのこもりをしているせんぷう機
前橋山王小6年 手島 光希
【評】「こもりをしてる」がおもしろい。風を送り、首を振る扇風機。赤ちゃんは喜んで、その動きを目で追っているのでしょうね。
えだまめを育てて楽しつゆの雨
伊勢崎豊受小6年 小茂田和希
【評】枝豆を育てていることで、それまでいやだった梅雨を楽しいと思えるようになったのです。枝豆の気持ちで考えるからです。
教室のかべが今ではにぎやかに
小野上中1年 野村 詩織
【評】新しい学校の新学期の教室の壁は、展示物が少なくてがらんとしていますが、学校に慣れてくるころにはにぎやかになります。視点のいい句。
かき氷友の心を冷やして  く
高崎片岡中1年 佐俣ありか
【評】体を冷やすことが、そのまま心を冷やすことにつながることはありそうです。かき氷に心落ち着く友。笑顔でしょう。
いちご味のかき氷ににたフラミンゴ
吉井中央中2年 花垣  茜
【評】フラミンゴの色を、「いちご味のかき氷」にたとえた人がいたでしょうか。きっと二つの経験が結びついてできたものでしょう。
黒板に音して書くや白い夏
小野上中2年 飯塚 仁美
【評】「音して書く」がうまい。いかにも黒板。「白い夏」には「頭の中で白い夏野となつてゐる」(高屋窓秋)があります。秀作です。
雨の音電車とともに走ってく
小野上中2年 一場  萌
【評】雨音を引き連れ、ホームを離れる電車。相当な雨量の中の一こまでしょう。「雨の音」を主語にとったところが巧みです。
夏服に商売上手な京の町
沼田西中3年 市橋 雅史
【評】修学旅行生に、言葉巧みに売り込む人々。つい買って、後で安いものを見つけてショックを受けたりします。「夏服に」の季語が効果的。
好きな子に話しかけられさくらんぼ
沼田西中3年 春山 京子
【評】修学旅行の一こまのようです。旅行は普段話さない友達との会話が生まれたりするもの。さくらんぼに心を投影。
アサガオの若葉がでている小学校
富岡南中3年 山口 大輔
【評】アサガオを育てている小学校の花壇。その若葉を見ながら、自分のことも思い出しているのでしょう。「でている」が効果的。
草刈りの緑の匂い香る風
富岡南中3年 飯塚 彩音
【評】草刈り作業は草の匂(にお)いをいっそう強くさせます。風にその匂いを感じています。類句はありますが、畳みかけるような表現は巧みです。
麦の秋かられるさまを見とどける
下仁田中3年 吉田 祐平
【評】麦秋の畑が刈り取られ、消滅するまでをじっと見ているというのです。圧倒的な黄色の色彩が消滅することで景色は一変します。
晴れの日や鏡になれる水たまり
小野上中3年 吉沢絵理奈
【評】晴れて風もない一日なのでしょう。水たまりが水鏡に「なれる」日です。「なれる」という視点が面白い。
鉛筆も天をすべるぼたんかな
小野上中3年 佐藤 俊樹
【評】格調の高い句なので、中七の字足らずを「すべれる」などで整えたいところ。鉛筆画を見る視点が面白い。
銀閣へ万緑あるく哲学の道
安中一中3年 八木 大地
【評】哲学の道をおおう万緑。その下を銀閣寺に向かって歩きます。「銀閣へ万緑あるく」と省略の効いた表現が巧みです。
地主神社恋のお守り初夏の風
安中一中3年 新井 美穂
【評】旅行の第一目的は、地主神社でお守りを受けることだったのかもしれません。「初夏の風」がさわやか。
東大寺日陰の中で空見上げ
安中一中3年 白井 克行
【評】「日影の中で」が、いかにも大きな伽藍の東大寺を思わせます。強い日差しの中での旅のスケッチです。
涼しげに金魚が泳ぐ京扇子
安中一中3年 宮田 静奈
【評】京扇子の中を泳ぐ金魚。いかにも夏向きの涼やかな絵がらに目をとめています。女性ものの京扇子でしょう。
田の道を走ると蚊柱ついてくる
安中一中3年 阿高 智博
【評】不用意にも蚊柱の中に入ってしまって、しばし蚊柱に悩まされることになります。「田の道」「走る」の条件が効果的です。
私たちいつでも一緒さくらんぼ
水上中3年 石坂 有穂
【評】仲良しの二人である「私たち」。さくらんぼが二つならんでいるようにいつも一緒です。こう思うことができることがすばらしい。
ぶどう酒のしみ渡る空夏の暮
群馬大附中3年 三木 祐子
【評】ここでの「ぶどう酒」は、色彩の比喩(ひゆ)として使われているのでしょうが、「しみ渡る」は夕焼けの質感まで伝える力があります。