林桂選

2004年7月27日上毛新聞掲載


暑いなぁとさけんでいるよ地球もか
甘楽小幡小6年 高木 里奈
【評】「地球もか」がおもしろい。思わず「暑いなぁ」と声に出して、きっと地球も同じ気持ちだと飛躍する想像力。このジャンプ力がすごい。
夏の日のプールの中も空の色
前橋桃川小6年 堤  菜摘
【評】「プールの中も空の色」が上手い。プールの中にも、上の空にも、夏の青空が広がっています。プール日和です。
台風でプールがもようをつくってる
前橋桃川小6年 榎本 理恵
【評】「で」「が」の使い方が面白い。模様を作っているのはプール自身です。台風はそのための道具、手段です。
風達が入りたいよとうなってる
前橋桃川小6年 荒木 瑞穂
【評】これは台風の風でしょう。うなり声のように聞こえる風の音。まるで家に入りたいと言っているようです。台風の恐怖が伝わります。
せん風機頭の中はまわってる
前橋桃川小6年 福本 悠介
【評】確かに扇風機が人間なら、脳味噌が回っていることになりそうです。発想がゆかいでおもしろい。
春が来たキズ一つないランドセル
前橋駒形小6年 川上 潤吾
【評】「キズ一つない」は、1年生の新品のランドセル。思い出の傷が増えた6年生のランドセルを持つ作者には感慨深いものがあります。
昼やすみ鼓笛の練習風にのる
下仁田小坂小6年 長井 菜摘
【評】昼休みの時間を使って鼓笛隊の練習に励んでいます。風が聞きにきて、みんなに知らせてくれます。
鎌倉のあみだにょうらいの大わらじ
下仁田小坂小6年 里見 優斗
【評】「の」「の」で畳みかけていって、最後に具体的な像である「大わらじ」を提示する書き方は、俳句的に優れたものです。
スイカ切り実を見て思うたね多い
新田綿打小6年 新  康平
【評】食べることばかり考えると果肉の方に目がいきますが、改めて見るとなんと種の多いことか。この句には視線の切り替えがあります。
台風が過ぎて喜ぶうちの犬
群馬上郊小6年 友松 直輝
【評】犬も同じように怖い思いで台風を過ごしていたのです。台風一過を喜ぶのも同じ。青空のもとしっぽをふっている犬の映像が浮かびます。
授業中倒れた若木気にかかる
小野上中1年 丸山  唯
【評】台風が過ぎ去った後の授業でしょう。倒れた一本の若木がいつもと違った風景を作り出しています。「気にかかる」のはそのため。
木の影へ冷たさにげる水無月や
小野上中2年 朝比奈明子
【評】「木の影へ冷たさにげる」は大人顔負けの上手い修辞。脱帽。「水無月」は旧暦の六月。現在の七月相当。暑い盛りです。
山の色はあきぬ風がひびいて
小野上中2年 飯塚 仁美
【評】「ぬ」は打ち消しの意味でしょう。山の色はどんなに見ても飽きがこないのです。「風がひびいて」が、その魅力をアップします。
ボール打つ音にも感じる暑さなか
小野上中2年 佐藤 絵理
【評】テニスボールでしょうか。湿度、温度の違いによっても音は違うのでしょう。炎暑の中のボールの音。そこからも暑さは伝わってきます。
息つぎのたびに夏吸うプールかな
小野上中2年 唐澤 秀行
【評】「夏吸う」の評価は分かれそうですが、表現として上手いことは間違いありません。空気と共に吸い込む夏。青春俳句です。
夏が来てヤゴのぬけがら流れてく
小野上中2年 佐藤 克紀
【評】「蝉の殻流れて山を離れゆく」(三橋敏雄)という句があります。流れ行く一つの抜け殻でも、さまざまなものが見えてきます。
すみっこの札に集まる夏のかげ
小野上中3年 唐澤 聖美
【評】「すみっこの札に集まる」が上手い。荷札か何かでしょうか。隅っこにつけられた札だけが小さな影を持っています。いかにも夏。
おにぎりのにぎりがあまい金曜日
小野上中3年 朝比奈紀子
【評】「にぎりがあまい」が面白い。お母さん作のお握りでしょうか。金曜日。お母さんにも一週間の疲れが溜まってきているのでしょうか。
授業中教科書ふわり風感じ
富岡南中3年 西沢亜莉沙
【評】教科書が風を感じているという視点がいい。教科書のページが反応するような強めで涼しい風がイメージできます。
いい天気つばめも通うよ学校に
前橋芳賀中3年 前田  瞳
【評】「いい天気」の象徴の現象として、学校に現れたツバメをとらえる視点が面白い。「も通う」に、作者の晴れやかな気分も入っています。
白富士の姿を見つつ麦の波
榛東中3年 清水 智美
【評】修学旅行の車窓吟でしょう。富士の残雪の白と、麦秋の黄色の対比が印象的。太宰治が富士に似合うと言った月見草も黄色です。
京の道青葉の下に旅行生
前橋広瀬中3年 根岸 一貴
【評】暑い日差しを避けて、木陰伝いに歩く修学旅行生。「青葉の下に」が情緒ある風情に感じられるところが京都。
学校の帰りに食べたゆすらうめ
沼田西中3年 澤浦亜理沙
【評】「食べた」は過去のこととして述べているのでしょう。小学校時代。帰り道も、体験、冒険の場だったのです。
弟に置いて行かれた登下校
沼田西中3年 野上 沙織
【評】弟さんも中学生になったのでしょう。一緒に登下校するはずが先に行ってしまったのです。弟さんの微妙な気持ちが分かる気がします。
鯉泳ぐ水面が涼し金閣寺
安中一中3年 鈴木ゆかり
【評】「水面が涼し」が上手い。ここでの鯉は錦鯉。錦鯉は夏の季語にもなっていて、まさに水面を涼しくするものです。
竜安寺涼風ふいて石を見る
境南中3年 鈴木 綾乃
【評】「竜安寺」「涼風」の頭韻が巧み。石庭を渡る涼風。石の景色ばかりでない、風の景色も見ていることになります。
京都のお寺をかざるよ蝉の声
境南中3年 山中 美奈
【評】「かざるよ」に、作者の心映えが感じられます。お寺の境内の樹木。その蝉の声もお寺の風物詩となっています。
梅雨の日に見えぬ山々さみしいか
下仁田中3年 新井 直人
【評】「さみしいか」の声がよく響きます。一般的に、感情的な言葉を使うのを俳人は嫌いますが、こういう響きを持つことが難しいからです。