林桂選

2004年9月21日上毛新聞掲載


算数のじゅぎょう中でも風遊ぶ
前橋若宮小6年 春山 未夢
【評】算数の授業で必死の自分の姿と、気ままに遊んでいる風を対比して、自分の姿を哀れんでいるかのようです。
雨がふり新品のかさまわしたよ
前橋若宮小6年 川島由紀子
【評】新品のカサが雨降りを楽しいものに変えてくれました。回したのは、その気持ちの表れです。
ホームランあの青空に打ってみたい
前橋若宮小6年 田島  涼
【評】青空に吸い込まれるような大きなホームランを打ったらどんなに気持ちがいいでしょう。そんな気持ちにさせる青空です。
夏雲のお花畑が空かざる
下仁田小坂小6年 神戸詩央里
【評】夏雲をお花畑に見たてるという大胆な句。でも夏雲は雲の中でも表情があるから、確かにお花畑に相応(ふさわ)しいかもしれません。
空向かう階段みたい山の木々
前橋四中1年 書上  奏
【評】字余りになっても、「空に向かう」の方がいいと思います。木を階段に見たてたのがおもしろい。ジャックの豆の木みたいですね。
空の下秋のにおいが遊んでる
前橋六中1年 星野 未帆
【評】目にはさやかに見えぬ秋が、既ににおいとして漂っているというのです。空の下というスケールの大きな限定が、ここでは効果的です。
夏終わるプールに入ることもなく
赤城養護小児医療分中1年 関口 和徳
【評】一度もプールに入ることなく終わった夏。初めての経験かもしれません。行く夏を惜しむこんな気持ちもあるのです。
答案の紙がにごるやこの季節
小野上中2年 佐藤 絵理
【評】必死で書いている答案用紙が、手の汗で汚れてしまうのです。いかにも夏。「にごる」がうまい表現です。
犬小屋の隣がにぎやかなつめの実
小野上中2年 佐藤 絵理
【評】犬小屋の近くにナツメの株があるのです。ナツメの実がみのってくると、下の犬ばかりでなく、自然と上の実にも視線が向きます。
山の色すうっと目が冷たくて
小野上中2年 飯塚 仁美
【評】山の緑の涼感を、目が冷たくなると表現。誇張表現ですが、実感が伴います。中七の字足らずが処理できるともっとよくなります。
ひまわりの影が濃くなり蝉時雨
小野上中2年 唐沢 秀行
【評】「ひまわり」「影が濃くなり」「蝉時雨」と、濃厚過ぎるくらい濃厚な夏の表現が重なっていますが、確かにその効果があがっています。
なんとなく本が読みたい秋の午後
小野上中2年 野村 成美
【評】読書の秋とは言いますが、午後のつれづれに読書を思い立つのは確かに秋らしい心の動きです。心が少しずつ内に向いてゆく季節感。
コンパスのねじをゆるめる残暑かな
小野上中3年 佐藤 俊樹
【評】ネジをゆるめて動きを調整するコンパス。その「ゆるめる」という行為とどこか遠くで詩的に響きあう残暑。秀作です。
秋風が時計の針を進ませる
小野上中3年 茂木  光
【評】たしかに、秋に向かうときの時間の進みは早くなったような感じがします。秋風が吹いて進める時計の針に不思議な実感が伴います。
稲妻が心に響く屋根の下
沼田西中3年 市橋 雅史
【評】稲妻は光。しかし、鋭い光は心では大きな音で響いているのです。「屋根の下」にいる自分を確認する視線も面白い。
鈴虫の声響きわたる祖父母宅
沼田西中3年 野上 沙織
【評】鈴虫を飼育しているか、静かな環境に生活しているのでしょう。それがいかにも、静かに生活するお祖父(じい)さんお祖母(ばあ)さんらしいのです。
風求め外に出てみれば夏の月
下仁田中3年 坂口 直也
【評】仲秋の名月は見に出そうですが、夏の月は暑さしのぎに外に出て、偶然発見するのが相応しそうですね。
暑い夏風鈴の音大好きで
下仁田中3年 神戸 円香
【評】風鈴の音が大好きなことが、暑い夏も大好きにしているのでしょう。「大好きで」の言い差しが効果的。
宿題に追われて見上げる天の川
下仁田中3年 大林 祐貴
【評】宿題の手を休めて、しばしの休息で見上げる天の川。夏休みも終盤の最後の追い込みです。
シブすぎて拾った山に栗返す
富岡南中3年 中沢 眸美
【評】「山に」「返す」という言い方がおもしろい。栗は山の持ち物という発想です。渋皮を丁寧に取る心の余裕がなかったのかな。
消しゴムで小さく残る夏を消す
富岡南中3年 三田 裕也
【評】夏の名残の最後は、自分で意志的に断ち切る必要があるのかもしれません。どんな小さなことでも。「消しゴム」はその気持ちの表れ。
帰り道歩くとトンボがよってくる
富岡南中3年 綿貫 卓也
【評】たくさんの赤トンボが漂うように飛んでいる情景が思い浮かびます。「歩くと」「よってくる」でうまく表現しています。