鈴木伸一選

2004年9月28日上毛新聞掲載


かくれんぼかくれた時に秋を見た
妙義中3年 清水  勝
【評】「かくれんぼ三つかぞえて冬となる」(寺山修司)を連想。かくれんぼは、日常から遊離したような不思議な気分になる遊びですね。
かるがるとトンボにぬかれる持久走
妙義中3年 廣木 花恵
【評】「かるがると」がいい。持久走が苦手な自分を客観的、かつユーモラスに描いていますが、これは心にゆとりがないとできないこと。
缶コーヒー片手に月の白さかな
妙義中3年 清水  司
【評】「月の白さ」に、作者の内面の所在無さが投影されているようです。昼の月でもいいですが、夜の月に白さを感じたという方が鋭い。
風が呼ぶ秋の仲間を集めけり
小野上中3年 唐沢 聖美
【評】森羅万象がゆっくりと、秋の表情に変わってゆきます。むろん、その中には人間もいます。人間も、自然の仲間の一員なのですから。
教室の掲示物も日焼けして
小野上中3年 野村 大樹
【評】夏休み明けでしょう。休みの間に教室の掲示物も日に焼け、色が変わっていたのです。学校生活の中から季節感をとらえた点に共感。
日記帳記してあるのは虹の数
小野上中3年 佐藤 俊樹
【評】実際の虹というより、良い出来事などの象徴としての虹であるように思われます。そこには、ある種のはかなさも付きまといますが。
冷蔵庫なぜか開けてる秋の風
小野上中2年 唐沢 秀行
【評】意味もなく冷蔵庫を開けてみる。私も身に覚えがあるので、思わず苦笑してしまいました。「秋の風」のあっ旋が、たいへん効果的。
湖のカモの背中に秋風や
小野上中2年 朝比奈明子
【評】はるばる北方から渡ってきたカモの背を、秋風が吹き過ぎてゆきます。堅実な自然詠で、特に「背中」に焦点を絞って成功しました。
秋の空紙ヒコーキがよくに合う
前橋六中2年 斎藤  彩
【評】「ヒコーキ」というカタカナ表記が、透明感と寂寥(せきりょう)感を併せ持った秋の空の印象に、よく似合っています。もちろん、青空でしょう。
秋の空つかれた時にそっと見る
前橋六中2年 阿部紗代子
【評】中学生には中学生としての悩みや苦しみがあります。そんなときには、こうして秋の空をそっと見上げ、疲れた心を癒やしてください。
秋の空楽しみながら読書する
前橋六中2年 堀越  優
【評】秋空のさわやかさを楽しみつつ、読書も楽しんでいるという感じ。必要に迫られての読書でなく、楽しむための読書であるのがいい。
公園で秋がはじまる声がする
高崎片岡中1年 田中 雅大
【評】季節が発する声を聴き取るには、やわらかで、しかも謙虚な耳と心が必要。今後も、この耳と心をいろんな場面で生かしてください。
秋の空帽子と重なる赤い色
高崎片岡中1年 塩野谷麻衣
【評】秋の夕焼けの赤と、かぶっている帽子の色が重なり、季節感が一層増します。目を閉じても、その赤がまぶたの裏に残っている感じ。
運動会声をだせば意気投合
高崎片岡中1年 林  祐樹
【評】あまり親しくなかった者同士でも、ふとしたきっかけで意気投合することがあります。こういう出会いが、人生を豊かにするのです。
天の川くもの巣かかる夜空かな
境南中3年 中野多久実
【評】見上げたとき、目に映ったクモの巣。もちろん家の軒などにあるのですが、それを夜空そのものにかかっていると表現したのがいい。
松虫の声に聞き入る草木かな
境南中3年 今田  遥
【評】マツムシの美しい鳴き声に、じっと聞き入っている今田さん。それを直接書かず、まわりの「草木」に仮託して描いたのがよかった。
儚(はかな)いと思いながらも水をのむ
富岡南中3年 平井 優也
【評】心の中の得体(えたい)の知れない虚しさ。水を飲むことが救いになるかどうかは分かりませんが、とにかく何かをせずにはいられないのです。
窓ガラス映った満月手に入れた
下仁田中3年 諸星安里紗
【評】「手に入れた」に、若い人ならではの自意識が、好ましい形で表れています。モノではなく、精神的な美しさを手に入れたのですね。
夕立の雨のにおいが目にしみる
下仁田中3年 白鷹見奈子
【評】乾いてほこりっぽいグラウンドなどを夕立が激しく叩くと、独特のにおいがします。なるほど、「目にしみる」という感じですね。
秋の風窓辺花咲く音楽よ
下仁田中2年 伊豆島佳奈
【評】秋の花で飾られた窓辺。その美しさが、音楽のように心を潤してくれるというのでしょう。この感覚は、無理なく納得できますね。
風がふくすすきがゆれる日が落ちる
六合中3年 篠原 広平
【評】一見、事実の列記だけのようですが、思いのほか味わい深く、情景が印象に残ります。作者の目線に、ぶれがないからでしょうね。
空を舞うめだちたがりやあかとんぼ
沼田西中3年 大竹 伸幸
【評】赤トンボの鮮やかな色は、青空によく目立ちます。それをユーモラスに、親しみを込めて描きました。いかにも秋という雰囲気です。
たくさんの声がざわめく新学期
前橋桃川小6年 小原 真美
【評】新学期が始まったばかりのころは、まだ気持ちもふわふわして、何だか落ち着かないものです。そんな感じを、うまくとらえました。
夏休み毎日朝がはれだった
前橋桃川小6年 大崎 香奈
【評】この夏は晴れて暑い日が多かったですが、もう一方、晴れた空のように明るい気分で夏休みを過ごせた、というふうにも読めますね。
手の中にいろんな夢を六年生
前橋桃川小6年 神開 遼一
【評】小学生のうちにやっておきたいこと、中学生になったらやってみたいこと。いろんな夢を持ち、それに向かって進んでゆきましょう。
かみなりがピカッと光ってすきとおる
前橋桃川小6年 堤  菜摘
【評】いなびかりがひらめき、一瞬、闇の中に浮き上がる風景。それが再び闇へと消えてゆく様子を、「すきとおる」と感じたのでしょう。