鈴木伸一選

2004年10月19日上毛新聞掲載


水たまり波紋広がる墓参り
小野上中2年 中沢 奈美
【評】墓参りをして、故人のおもかげをさまざまに思い浮かべます。そんな作者の心の中が、水たまりを踏んで広がる波紋に象徴されています。
秋風をかけぬけクツは秋色に
小野上中2年 長久保徴子
【評】さわやかな秋風の中を駆け抜けると、履(は)いていた靴も秋の色に染まっているというのです。何色か、私もいろいろ想像してみましょう。
青春の風がふくなり秋の色
小野上中2年 佐藤紗也加
【評】「青春の風」というストレートな表現は、へたに使うと嫌味になりかねないのですが、この句では素直に受け入れることができます。
公園の水飲み場にも秋の風
小野上中3年 佐藤 俊樹
【評】口に含んだ水がひんやりとして、秋の到来を実感させます。「水飲み場」という日常的な風景が、とても詩的なものに見えてきます。
雨降りに足音消えるさるすべり
小野上中3年 野村 大樹
【評】夏のあいだ中、咲き続けるサルスベリ。とても目を引く樹木ですが、それでも雨の日には人影もなく、心なしかさびしそうに見えます。
ため息の切れる間のない九月かな
小野上中3年 中沢 瑞希
【評】途切れることのないため息の理由は何? 受験生としての迷いなどとも思われるし、がらりと変わって恋の悩みなどとも思われます。
月明かり銀輪回して道を行く
小野上中3年 金子 裕明
【評】月明かりの道を自転車で行く金子君。その名の通り車輪が銀色に光り、いつしか夢とうつつの境を走っているような気がしてきます。
春休み買った消しゴム丸くなる
小野上中1年 野村 克貴
【評】学習に落書きに、さまざまな用途で丸くなった消しゴム。ただそれだけのことが、なぜか読者の心に残ります。それが、人の心の不思議さ。
ひがんばな夕日で光る赤い橋
妙義中1年 茂木 由吏
【評】ヒガンバナが列をなして咲く土手を歩いているのでしょうか。その花と同じ色の赤い橋が行く手に見え、折からの夕日に光っています。
通学路秋へ導く彼岸花
妙義中1年 田辺沙緒里
【評】白いヒガンバナもありますが、この句ではやはり赤でしょう。季節を違(たが)えず、いっせいに咲き出すヒガンバナは、確かに秋へと導く花。
夕焼けにたらす指先風なぞる
沼田西中3年 桜井あゆみ
【評】夕焼けの中を吹き抜けていった風。作者は、その跡をなぞるかのように、そっと指を動かしてみたのでしょう。とても美しい情景です。
帰り道秋を見たくて上を向く
下仁田中3年 今井 英里
【評】澄んだ高い空は、最も秋を感じさせるものの一つ。つまり空を見ることは、秋という季節そのものを目(ま)の当たりにすることなのです。
全身で受ける風は果実のかおり
下仁田中3年 飯島 雅士
【評】「全身で受ける」という大胆な表現に青春性が感じられ、好印象を持ちました。季語はないのですが、秋の季感は色濃くありますね。
放課後にベランダ出れば秋の空
下仁田中3年 神戸 円香
【評】学校生活の中から俳句を生み出すというのは、とても大切なこと。それには漫然と過ごさず、毎日を新鮮な目で眺めることが肝心です。
下校時前に秋雨背後に灯火
下仁田中3年 坂口 直也
【評】秋も深まってくると、下校時はずいぶん暗くなります。雨も灯火も何となくさびしく見え、帰宅の足も、つい速くなってしまいます。
秋の雲僕の心とおなじ形
下仁田中3年 坂口 卓也
【評】雲が様々に形を変えるように、心模様も刻々と変わってゆきます。形があって形がないという意味で、両者は同じだと言えるでしょう。
秋の日は窓辺で眠る僕と猫
下仁田中3年 吉田 祐平
【評】おだやかな秋のある日。かわいがっているネコのそばで、作者もしばしまどろんだのでしょう。静かに、幸せな時間が流れてゆきます。
友達と見上げて語る秋の空
下仁田中3年 柳沢 秀美
【評】広々とした秋空を見上げながら語り合ったのは、将来の夢や希望などであったことでしょう。友情のすがすがしさが伝わってきます。
すんだ空中学最後の夏終わる
六合中3年 冨沢 陽太
【評】夏が去ってゆくにつれ、透明度を増してゆく空。それが、かえってさびしいのです。中学生として過ごす最後の夏だったのですから…。
勉強中妹の声よく響く
六合中3年 篠原 千明
【評】私も周りの音がわりと気になるたちなので、勉強に集中できずにいる作者に同情します。それでも、やっぱり妹はかわいいんですよね。
明日が来る朝顔の花開きだす
境南中3年 金井 千奈
【評】「明日が来る」がいい。開きはじめるアサガオに明日、つまり未来への希望を感じ取っているわけで、それがいかにも若々しい印象。
いつもより少し冷たい秋の風
境南中3年 関口 里紗
【評】むろん、秋のはじめと終わりでは風の冷たさが違いますが、一方、自分の心理状態によって、冷たく感じたりすることもあるでしょう。
台風の向こうに青き空がある
境南中3年 津久井 寛
【評】台風が来そうなときというのは不安なものですが、その不安を消そうとするかのように、台風一過の青空を思い浮かべている津久井君。
学校に行く日の空にも赤とんぼ
館林四小6年 稲葉 貴世
【評】休みが終わって学校に行く日も、休みの日と同じく、たくさんの赤トンボが飛んでいます。いってらっしゃい、と言っているみたいに。
稲ほ刈る人のまわりに赤とんぼ
館林四小6年 飯島 英昌
【評】田畑では、イネの刈り入れ作業の真っ最中。そのまわりを何匹もの赤トンボが軽やかに飛び交っている、いかにも秋らしい光景です。
秋の色犬との散歩で見つけたよ
前橋桃川小6年 品川 珠緒
【評】愛犬のいる生活は、心を豊かにしてくれます。だからこそ散歩の途中でも、秋という季節をぱっと感じ取ることができたのでしょうね。
近いけど手にはとどかぬ赤とんぼ
下仁田小坂小6年 神戸詩央里
【評】赤トンボはすぐ近くを飛んでいるように見えるけど、やっぱり手は届かないのです。その微妙な距離感を、じょうずに表現できました。