鈴木伸一選

2004年11月30日上毛新聞掲載


金色の風にふかれてトンボとり
片品武尊根小5年 千明大士郎
【評】トンボを追って、秋の野山を駆けめぐります。その伸び伸びとした気分が、「金色の風」というすぐれた発想につながったのでしょう。
校庭のふんいき変わる紅葉時
前橋大室小5年 山本瑠璃子
【評】毎日遊ぶ校庭も、たしかに季節によってちがった雰囲気が感じられるようです。中でも紅葉のころは、独特の華やかさがありますね。
たぶの木を風が起こす秋の朝
前橋桃川小6年 山口 真澄
【評】桃川小のシンボルである大きなタブの木が、朝、登校すると風に揺れています。その様子が、まるで寝起きみたいに見えたのでしょう。
母と共に座椅子でねむるねこの顔
前橋桃川小6年 當銀 祥依
【評】お母さんとネコの気持ちよさそうな顔が、目に浮かぶようです。家族みんなが、このネコをかわいがっていることもよく分かりますね。
けんばんは白い歯黒い歯むし歯の歯
前橋桃川小6年 八木原 忍
【評】ピアノなどの鍵盤を「歯」に見立てた例は多いのですが、この句の「むし歯」という発想はおもしろい。八木原さん自身のことかな?
お日さまももう冬仕度始めてる
前橋桃川小6年 榎本 理恵
【評】冬に向けて、いろいろと準備をします。そんなとき、ふと空を見上げたら、お日様も何だか冬仕度をしているような感じがしたのです。
夕暮れに雨水光る椿かな
前橋桃川小6年 高橋 裕子
【評】情景の切り取り方といい、言葉づかいといい、たいへん大人びた俳句です。雨に濡れたつややかなツバキが、ぱっと目に浮かびます。
秋が来て世界が急に変わってる
前橋若宮小6年 入沢  匠
【評】木々の葉が色づき、青空が高く澄み、色鮮やかな果物がたくさん実る。秋になると、確かにまわりの世界が一変したような気がします。
秋なのにでんでんだいこがなっている
前橋若宮小6年 川島由紀子
【評】「でんでんだいこ」は、雷のことでしょう。秋なのに雷鳴がとどろいてびっくりした様子が、ちょっとユーモラスに表現されています。
おどってるはっぱをみながら写生する
下仁田小坂小6年 永井 梨沙
【評】写生大会の一こまでしょうか。季節は書かれていませんが、「おどってる」とあるので、秋だということがおのずと想像されますね。
机には冬の寒さが積もってる
小野上中3年 唐沢 聖美
【評】整理が苦手な私などは、机の上にいろんなものが山積みです。そんな状態をあらためて眺めると、この句の寒さも一段と身にしみます。
太陽も目覚めが悪い秋の朝
小野上中3年 佐藤 慶太
【評】朝が苦手な人は結構いますが、作者もどうやらそのようです。そんないま一つすっきりしない気分が、太陽を通して表現されています。
星空を見上げて思う五丈原
小野上中3年 金子 裕明
【評】N三国志Oの英雄、諸葛孔明(しょかつこうめい)が陣没したのが、五丈原(ごじょうげん)。そのとき、赤い星が落ちたと言います。遠い昔に思いを馳(は)せたロマンが魅力的。
立冬や炬燵にもぐる猫のろく
小野上中2年 唐沢 秀行
【評】「ろく」という名前が、何と言ってもおもしろい。名付け親の洒落(しゃれ)たセンスを感じます。何気ない日常を、ユーモラスに活写しました。
消しゴムのカスが細かい十一月
小野上中2年 朝比奈明子
【評】秋から冬へと季節が変わるころのどこか落ち着かない感覚が、消しゴムのカスという微細なものを通して、うまくとらえられています。
ガラス窓なぞってみれば冬の風
小野上中2年 飯塚  啓
【評】作者は室内にいて、ガラス窓を指でなぞってみたのでしょう。その冷たい感触が、外で吹いている冬の風を意識させたのだと思います。
かくれんぼさわやかな風味方かな
下仁田中3年 吉田 祐平
【評】さわやかな秋風を味方につけたら、何だか自然の中にずっと隠れていられそうな気がします。自然との一体感が、とてもいいですね。
落ち葉見て瞳の中に青い鳥
高崎片岡中1年 采女  愛
【評】散り急ぐ落ち葉を見たとき、作者の心に詩的な感情が湧き上がってきたのです。「青い鳥」は、そうした感情の比喩(ひゆ)とも受け取れます。
初雪の舞い散る夜の鈴の音
高崎片岡中1年 乗附 朋美
【評】この鈴音は、作者の心の耳に聞こえてきたものと解釈したい。その方が、「初雪の舞い散る夜」のロマンチックな気分に合っています。
一滴の雨舞いおりる秋の空
六合中1年 篠原 明人
【評】ぱらりと落ちて、それきり降ってこない雨。気まぐれな秋空ですが、「舞いおりる」によって、雨がとても美しく感じられるのがいい。
落ち葉乗せ暖かくなった午後の庭
六合中1年 山口 清華
【評】落ち葉のたくさん積もった地面って、とても暖かいですよね。冬とは言え、太陽の光をたっぷり浴びた午後の庭なら、なおさらのこと。
野球場みんなの声が白くなる
六合中2年 中村 悠人
【評】冬の野球場。選手も声援を送る人たちも、声を出すと、一様に息が白いのです。それを、声そのものが白くなると表現したのがうまい。
霜降りてまぶたが重い冬の朝
六合中3年 中沢  新
【評】眠気でまぶたが重いということもあるでしょうが、同時に、寒さで憂うつな朝の気分が、そう感じさせるということもありそうです。
「たった一句」浮かばず窓の枯木見る
六合中3年 茂木 琢市
【評】できないときは無理をしなくていいのですが、そう開き直って肩の力が抜けると、意外と簡単に俳句が浮かんでくることもあります。
外に出て勉強忘れる秋の空
月夜野中2年 淺野間翔子
【評】澄み渡った秋空を眺めれば、やがて心も晴れ晴れとしてきます。気分転換が済んだら、あらためて勉強に取りかかることにしましょう。
街路樹や赤き実光る花水木
境南中3年 原島 実希
【評】秋、ハナミズキはつやつやした赤い実をつけます。「街路樹や」という書き出しで、その鮮やかな色合いが、ぱっと目に浮かびます。