鈴木伸一選

2004年12月28日上毛新聞掲載


ストーブを出すとはじまる冬の旅
赤堀小6年 石川 靖子
【評】ストーブを出すと、あらためて冬の到来を実感します。これからしばらく続く寒い日々を思い浮かべ、「冬の旅」と言ったのでしょう。
笑い声私もまぜてよ雪合戦
赤堀小6年 菅原 章帆
【評】一面真っ白の校庭に、笑い声がはじけます。雪合戦に加わりたいというより、むしろその笑い声の輪そのものに加わりたいという感じ。
雪やむと鳥が飛び出し銀世界
榛東南小6年 島 めぐみ
【評】雪がやむのを待ちかねたように、真っ先に空へ飛び出す鳥たち。気持ちよさそうなその姿に、積もった雪も一段とかがやいて見えます。
秋の道風でざわっと木がゆれる
榛東南小6年 神宮 夢乃
【評】秋の終わりごろでしょう。「ざわっと」という表現で、まるで身ぶるいをしたかのような木の様子が、はっきりと目に浮かんできます。
川の水さわってみれば冬がくる
下仁田小坂小6年 茂木  淳
【評】何気なく川の水に手を入れてみたら、予想以上に冷たかったのです。自分の体験を通して、冬のおとずれを感じ取ったところがいい。
手袋がみかん色の冬の朝
前橋桃川小6年 高橋 伶奈
【評】ミカン色の手袋は、見るからにあたたかそう。寒い冬の朝ですが、気持ちはとても明るいという感じがします。健康的で、いいですね。
ひよこみたい黄色いぼうし一年生
前橋桃川小6年 堤  菜摘
【評】かわいらしい1年生の姿が、目に浮かびます。堤さんの最上級生としてのやさしい気持ちが、ユーモアをまじえて表現されています。
もう土がかたくなっててほれないな
前橋桃川小6年 岩崎佐都子
【評】穴を掘って遊ぼうとしたら、校庭の土がすっかりかたくなっていたのでしょう。いよいよ冬だなあ、ってあらためて感じる瞬間です。
りんとした朝の空気が冬を呼ぶ
前橋桃川小6年 水出 奈美
【評】「りんとした」がいい。気持ちがしゃきっとするような冷たい朝の空気が、よく感じられます。晩秋の季節感を、うまくとらえました。
光ってるかがみの先には秋晴れが
前橋桃川小6年 蟻川 景介
【評】きらきら光る鏡。目を転じれば、鏡よりもさらに明るい秋晴れの空が広がっています。この世界が、まるで光に包まれたかのようです。
冬の朝しんとしていてちとこわい
群馬上郊小6年 山口奈保美
【評】冬は日の出が遅いので、朝も早い時間だと薄暗いし、人の姿もまばらですものね。そんなときの心細さが、正直に表現されています。
三門の一番上をみあげたよ
前橋桃木小6年 北沢 健太
【評】修学旅行で訪ねた鎌倉の円覚寺か建長寺でしょう。大きな三門の一番上を見上げたというところに、感動の大きさがよく出ています。
霜焼のできた日それは楽しい日
高崎片岡中1年 小山 健太
【評】霜焼けをうっとうしいというのでなく、肯定的にとらえているのがいい。どんな楽しい出来事があったのか、いろいろ想像されますね。
着ぶくれの私が走る通学路
高崎片岡中1年 山中 咲乃
【評】遅刻しそうなのでしょうか。防寒のために重ね着をした作者が走ってゆく姿は、何ともユーモラス。もちろん、当人は必死なのですが。
虎落笛走れ逃げろと鬼ごっこ
高崎片岡中1年 乗附 朋美
【評】「虎落笛(もがりぶえ)」は、寒風が竹垣などに吹き当たって笛のような音を出すこと。私には、風そのものが鬼ごっこをしているように思われます。
散歩中犬にマフラーまいてみる
六合中1年 市川  梓
【評】「まいてみる」という表現には、作者の茶目っ気も感じられますが、の根底にあるのは、愛犬に対するあたたかい思いやりでしょう。
雪野原やさしい光を受けとめる
六合中2年 篠原 悠江
【評】若々しく、そして清浄感に満ちあふれた俳句。一面真っ白の野に立てば、なるほど「やさしい光」も実感として了解できるでしょう。
白い雪子供が笑みを降らせてる
六合中3年 大塚 美紀
【評】現実的には、雪を見た子どもの顔に浮かぶ笑みでしょう。でも、同時に天上でほほえむ天使たちを思い描くことだって可能ですよね。
朝が来て雲も起き出す十二月
小野上中1年 宮 ゆりか
【評】雲はもちろんのこと、風も木も人も動物達も、みんな起き出してくるのです。こうして年の瀬のあわただしい一日が、また始まります。
右手だけ寒さを思う時間かな
小野上中1年 野村 恵子
【評】まだ教室の奥にまで日が差し込んでこない、午前中の早い時間の授業風景でしょうか。「右手だけ」という断定が、とても効果的です。
冬銀河蜜柑の色を染めにけり
小野上中2年 唐沢 秀行
【評】広大な冬銀河に対し、ミカンはいかにも小さいけれど、存在感では、決して引けを取りません。それが不思議であり、またおもしろい。
満足な点数取れぬ冬の風
小野上中2年 木暮渉
【評】「満足な点数取れぬ」という表現の元にあるのは、消極的なあきらめなどではなく、むしろ自身を叱咤激励する積極的な意志でしょう。
真っ白い紙に重なる寒さかな
小野上中3年 唐沢 聖美
【評】真っ白であるがゆえに感じる寒さに、深い共感を覚えました。その寒さは同時に、作者の内面のありようを物語ってもいるのでしょう。
冬の夜星たち運ぶ天つ風
小野上中3年 佐藤 弘起
【評】天を吹く風を言う「天(あま)つ風」は、いかにも和歌的な抒情(じょじょう)を感じさせる言葉ですが、ここでは、それがすんなりと俳句になじんでいます。
気のせいかケシゴム固い冬の朝
富岡南中3年 富松阿友美
【評】始終手にする消しゴムに、中学3年生としてのさまざまな思いが託されています。身近なものをきめ細かく観察するのは、とても大事。
雪かきをたのしみながら上を見る
富岡南中3年 寺本 成孝
【評】雪かきは重労働ですが、作者には、それを楽しめるだけの心の余裕があるのがいい。心に余裕があると、世界が違って見えてきます。
見上げれば枯木の中の白い空
境南中3年 藤村 恭平
【評】葉の落ち尽くした枯木の枝が交差し、そのすき間から、どことなく白っぽい冬の空が見えます。冷えびえと、心に染みとおる風景です。
空見上げ天地の間枯葉かな
前橋桂萱中3年 川鍋 芽依
【評】目線の置き方は前句と似ていますが、こちらは枯葉が枝に残った情景。天地の間にぽつんと浮かんだ枯葉は、いかにもさびしそうです。