林桂選

2005年1月12日上毛新聞掲載


先生の声がおかしい冬の朝
前橋桃川小6年 小鮒 尚輝
【評】風邪をひいたのでしょうか。いつもと違う先生の声。朝最初に気がついたことなのです。ここにも冬があります。
ブランコが冬さびしそう悲しそう
前橋桃川小6年 高橋 卓也
【評】冬の寒さの中、乗ってくれる人もなくなって、元気なく下がっているブランコ。「さびしそう悲しそう」と畳みかけの表現が巧みです。
窓ガラス光がさしこむ日曜日
前橋桃川小6年 高橋 卓也
【評】いつもより少し寝坊する日曜日。いつもより少し気持ちに余裕のある日曜日。「光がさしこむ」でうまく表現しています。
マラソンで顔がぽかぽかりんごかな
前橋桃川小6年 荒木 瑞穂
【評】マラソンでほてった顔。きっとリンゴのようにまっ赤になっていることでしょう。リンゴのような自分の顔を想像しながら走ります。
ひえた風友だちの声あたたかい
伊勢崎名和小6年 長谷見早紀
【評】冷え寒くなってゆく風の中だからこそ、暖かく感じられる友だちの声。元気に学校へゆくことができる力の源です。
船の上みんなで見てた水平線
新田綿打小6年 西貝 幸恵
【評】修学旅行で、みんなで乗った船の思い出でしょう。水平線が、一番の見学材料。みんな海なし県群馬の子どもたちです。
秋ごろの大仏さわって冷たいよ
新田綿打小6年 服部  慎
【評】大きな鎌倉大仏。秋冷(しゅうれい)期の体は冷たくなっています。まさに伽藍(がらん)のない大仏の体です。
マラソンの走るとちゅうの秋の木だ
赤堀小6年 湯沢 一幸
【評】マラソンの苦しさを紛らわすために、いろいろなことを考えたり、見たりします。「秋の木」は、そうした目で見つけた宝物です。
鎌倉の歴史を想う大銀杏
前橋桃木小6年 長沢 礼香
【評】八幡宮の実朝暗殺の場となった大銀杏(おおいちょう)を見ての思いでしょう。「歴史」を現実のものとして実感した修学旅行です。
クリスマスまどべにたつと別世界
榛東南小6年 一倉 彩乃
【評】「クリスマス」という特別な思いが見せる景色というものがあります。いつもの景色も別世界になるのです。
雪つもり校舎が大きなケーキかな
高崎片岡中1年 提箸  太
【評】校舎全体を白いクリームのケーキに見立てました。発想がおもしろい。「雪つもり」が新たな校舎像を提供してくれたのでしょう。
散歩してリードを持つ手悴めり
高崎片岡中1年 富沢 陽介
【評】犬との散歩。リードを持つ手も冷たくなる季節です。「悴(かじか)む」は、冬の季語。場面場面で感じる季節感こそ生きたものです。
着ぶくれと言っているけど違う母
高崎片岡中1年 富田佐知子
【評】だからと言って追求するというのではありません。母の言い訳を、笑顔で受け止めているのです。母の気持ちも分かる大人になりました。
兄の次冬至の柚子に爪の跡
高崎片岡中1年 酒井 省吾
【評】兄の後に入ったユズ湯。浮いているユズに兄の爪の跡を見つけ、兄の風呂での過ごし方に思いをはせています。秀作です。
雪の中新聞少年走りこむ
高崎片岡中1年 内田 健太
【評】新聞配達の少年。雪が降り、積もる中に飛び込んでゆくのです。少年への感情を抑えた表現が、効果的です。
指先が悴みファスナー閉められず
高崎片岡中1年 松本 綾芽
【評】何気ない動作も、寒さの中では難しい動作になります。ファスナーを閉める動作まで指先の器用さを必要とするようになっています。
クリスマス今日のあしあと雪に残す
前橋六中2年 阿部 紗弓
【評】雪の足跡によって明日に残る今日。クリスマスの雪の足跡なら、サンタの足跡も混じっているかもしれないと想像すると楽しくなります。
友と見る星満開で寒さにたえる
六合中2年 山本  栞
【評】「星満開」に満天の星が感じられます。その星の魅力が、寒さにうち勝つ力になります。冬の澄んだ夜空です。
ふり返る後ろで風が笑ってる
月夜野中3年 田村 由真
【評】音がしたのでふり返ると、冬の風が吹いているばかり。音は、いたずら好きな風の笑い声のように思われてきます。
サッカーをしている僕らは冬の風
小野上中3年 佐藤 俊樹
【評】いまや一年中行われて季節感がなくなってしまいましたが、サッカーは冬のスポーツとして、季語になっています。
秋の朝本をめくると風が吹く
小野上中3年 平形 良季
【評】ここでも風は、物理的な風であるとともに、心の風でもあるのでしょう。本の世界が、心に送り込んでくる風です。
学校のたなが光る冬の朝
小野上中3年 平方 良季
【評】リズムを整えるには「光る」より「輝く」の方がいいかもしれません。この光の正体は霜なのでしょうか。
冬の風なぜか寂しい水たまり
小野上中3年 佐藤  陽
【評】冬の水たまり。それはやはり寂しい様子でしょう。「なぜか」という自問のなかにこそ寂しさは住んでいます。
星月夜ひとりきりの鵺が鳴く
前橋桂萱中3年 坂爪 芽生
【評】怪鳥とされる鵺(ぬえ)に「ひとりきり」という孤独を発見しているところがいい。受け入れらレない者の孤独を投影しています。
しんしんと雪積もりゆく寒さかな
前橋桂萱中3年 小寺沙也加
【評】雪が降り積もること以外には書いていないシンプルさ。そのシンプルさがこの句の魅力です。雪のさまがクローズアップされます。
後輩の部活の姿が目にしみる
下仁田中3年 吉田 祐平
【評】部活動を引退した三年生。生き生きと部活動をする後輩の姿を見てうらやましい思いです。目の前にあるのは受験の重圧です。
雪投げてガラスをわっちゃダメですよ
境南中3年 蓮沼 信幸
【評】くだけた口語表現がこの句の魅力です。雪に興奮し、また和んだ仲間の雰囲気を伝えます。雪が仲間との心の距離を縮めています。