鈴木伸一選

2005年2月23日上毛新聞掲載


花ならぶ冬の日曜あったかい
前橋桃川小6年 品川 珠緒
【評】「花ならぶ」から、花屋さんの店先などが思い浮かびます。陽気が暖かいのはもちろんですが、品川さんの心の中も暖かなのでしょう。
みんながね歌うたったら空晴れた
前橋桃川小6年 白井まりあ
【評】みんなが心を一つにして歌ったから、こうして晴ればれとした気分になることができたのです。すてきなクラスだなあ、と思います。
白いいき犬もねこもみな同じ
富岡高瀬小6年 吉田 愛理
【評】「犬もねこも」の後には、「人間も」という言葉が続くはず。寒いときに白い息をはくのは、みな同じように生きている証拠ですよね。
書き初めのすみのにおいも風にのる
下仁田小坂小6年 神戸詩央里
【評】すがすがしい墨のにおいが漂ってくるようです。紙に筆をおろすときは緊張するものですが、それもまた、いかにもお正月らしい気分。
冬がきてみかんの果汁あまにがい
下仁田小坂小6年 神戸 祐二
【評】暖房の効いた部屋で飲む、冷たいミカンジュース。甘さの中に少し苦味が混じって、おいしいですね。冬の季節感も、よく出ています。
リコーダー吹き出す音は冬の風
小野上中1年 野村 詩織
【評】寒さで指がこごえて、なめらかな音が出ないのでしょう。ぎこちないその音色を聴いていると、寒さが余計に感じられてくるようです。
太陽に伸ばした片手があったかい
小野上中1年 宮 ゆりか
【評】「両手」なら、春爛漫(らんまん)という雰囲気。「片手」だと、まだ寒さの残る初春の感じ。寒さを感じるからこそ、この暖かさが貴重なのです。
すきとおる定規にうつる雪景色
小野上中1年 樋田 亮介
【評】透明な定規と雪景色に現実的な接点はないのですが、それを結びつけるのが、言わば「詩」の力。浮かんでくる映像が美しいのがいい。
なんとなく草をむしって春をまつ
小野上中2年 飯塚 仁美
【評】この句のどことなく物憂い気分は、すでに春という季節を先取りしている感じ。俳句を続けていると、季節に敏感になってゆきますね。
雪がとぶ晴れてる空が窓の外
小野上中2年 一場  萌
【評】教室の窓から、風花の飛ぶ晴れた空が見えます。学校という空間と、その外にある世界。この両者をつなぐのが、窓というわけです。
雪雲を照らす太陽異空間
小野上中2年 飯塚  啓
【評】ぶ厚い雪雲が割れて、日が差します。光に照らされた雲は神秘的な色に染まり、何だかこの世のものではないように思えたりします。
水道の水もぬるむや部活後
小野上中2年 佐藤 未菜
【評】主に春先の湖沼や河川に言う「水温む」を、水道の水にうまく転用。学校生活を通してとらえた季節感ですから、説得力がありますね。
久しぶり暖かい日に俳句書く
小野上中3年 佐藤 俊樹
【評】寒さが続いた後、久しぶりにおとずれた暖かい日。俳句を書くという行為を通して、その日をいとおしむ思いが、よく伝わってきます。
スキー教室友のまつげに雪積もる
前橋六中1年 内田みちる
【評】スキー教室の俳句でありながら、スキー自体を描いていないところがミソ。こんなふうに、着眼点をちょっと変えてみるのは大事です。
残雪を踏みしめ軽くはずむ足
高崎片岡中1年 小板橋啓太
【評】庭の隅や木の陰などに残っている雪を、ちょっと踏んでみたのです。軽くはずむ足は、春の到来を喜ぶ気持ちのあらわれでしょうね。
春雨のアンニュイ気分の梅こぶ茶
高崎片岡中1年 佐々木正乃
【評】アンニュイに紅茶やコーヒーなどでなく、梅こぶ茶を持ってくるのが、言うならば俳句独自の滑稽(こっけい)味。こういうユーモアは貴重ですよ。