林桂選

2005年3月16日上毛新聞掲載


ぞうきんをしぼる手いたいもう冬だ
富岡高瀬小6年 山口しおり
【評】「いたい」がいい。冷たいのもとおりこすと、痛い感じになります。ゾウキン絞りに感じる冬。まじめに掃除にとりくめばこそです。
くもりぞらかんのんさまも見えぬ空
群馬上郊小6年 関根 悠貴
【評】「かんのんさま」は、高崎観音でしょう。関根君のところから、観音様が見えないことが、曇りの目安になるところがおもしろい。
マラソンのくるしさはきだす白い息
前橋桃川小6年 大竹  諒
【評】「くるしさはきだす」が上手(うま)い。ただ息をするのではなく、苦しい思いも一緒に出していると感じているのです。
さむすぎて話もできないとうこうはん
前橋桃川小6年 ヴォリス慶太
【評】寒すぎて、話し声も出てこない登校班の様子です。もちろん、はしゃぎ回るような友達もなく、前を向いての行進状態です。
ビー玉が笑いかけたよわたしにね
前橋桃川小6年 高橋 伶奈
【評】ビー玉の中にはいろいろな色が、いろいろな形で入っているものがあります。それがビー玉の表情になって、笑いかけ、話しかけてきます。
冬の空くもは凍らずふわふわだ
前橋桃川小6年 角田 周平
【評】本当は凍っているのかもしれませんが、雲はふわふわの綿菓子のように見えます。地上よりも雲の方が暖かいように見えるから不思議です。
雨上がり宝石色した通学路
前橋桃川小6年 高藤くるみ
【評】「宝石色した」がいい。あちらこちらに雨粒を残している雨上がり。それを宝石色と感じる高藤さんの感覚に、宝石が潜んでいます。
目玉焼き上下左右にかたむく目
前橋桃川小6年 八木原 忍
【評】目玉焼きの目玉を真ん中におさめるのは、なかなかむずかしいことです。上下左右のいずれかに寄って、表情をつくります。
とうこうはんみんなの影がおどってる
前橋桃川小6年 蟻川 景介
【評】朝日に長く伸びた登校班の友達の影。みんなの動きが影になると、どれも踊っているように見えるから不思議です。
エンピツを持ってもあったか春の午後
前橋桃川小6年 品川 珠緒
【評】鉛筆のあたたかさに春を感じるといいます。春は、こうしたかすかな感じの違いからやってくるのでしょう。
書き初めで一歩前へとびでる字
下仁田小坂小6年 長岡 里菜
【評】「一歩前へ」がおもしろい。次の字のスペースと飛び出すいうことなのでしょう。元気な字の書き初めが目にうかびます。
ドキドキの墨の香りと書き初め大会
下仁田小坂小6年 永井 梨沙
【評】書く前から緊張する書き初め大会。それは墨の香りからはじまります。墨の香りに気がついたことがいいですね。
春の空小鳥と一緒に靡(なび)いてる
高崎片岡中1年 木村 将人
【評】「靡いてる」がおもしろい。空も小鳥も靡くような、風が吹いているのでしょう。冬から春の風への変化を表現したのでしょうね。
残雪のように宿題残ってる
高崎片岡中1年 茂木 瑞葵
【評】残雪のように、あちらこちら虫食い状態で残っている宿題。どれも完成していないのかもしれません。どれから溶かしましょうか。
カーテンの光の奥に春がいる
高崎片岡中1年 中里 麻利
【評】一日の光を受けて暖かくなっているカーテン。確かにそこは何処(どこ)よりも早い春の住みかです。「いる」の擬人化も効果的。
春一番そこまで私の帽子が欲しいか
高崎片岡中1年 篠原真太郎
【評】類句がない訳ではありませんが、春一番を擬人化し、帽子を欲しがる悪戯(いたずら)者に見立て、呼びかけた文体は、おもしろいです。
白息をはきのぞきこむ木の新芽
六合中1年 山口 清華
【評】新芽は思いのほか早く用意されているものです。まだ冬の白い息を吐きながら、新芽に目をとめます。春を待つ思いがあります。
「おい止まれ」聞くはずのないおどる雪
六合中1年 山本 直哉
【評】風花のような雪なのでしょうか。踊るようにして降る雪のおもしろさを、ユーモラスに描き出しました。
雪げしきそれを見たあとカレーを食べる
前橋六中1年 藤田  彬
【評】スキー教室での作品のようです。昼食はカレーだったようです。でも、作品は雪景色とカレーの取り合わせに仕上がりました。
空にいるそんな感じのリフトだな
前橋六中1年 渡辺 悠介
【評】そんなに高いところにいる訳ではないのですが、リフトに乗ったときの浮遊感が、「空」を思わせるのです。
ねこやなぎくすくす笑う青い空
小野上中2年 飯塚 仁美
【評】「くすくす笑う」は、ネコヤナギの様子であり、青い空の様子でもあるのでしょう。春の訪れの雰囲気を笑いとしてとらえています。
ベランダに風が吹くなり春近し
小野上中2年 佐藤紗也加
【評】類句もありそうですが、教室につながるベランダは、最も身近で、風を感じ、春を感じる場所であることでしょう。身近に感じる春です。
友達と白い息見て笑いあう
小野上中3年 茂木  光
【評】何でも面白い時期。白い息を吐いているだけで面白いのです。私も「放課後のポプラの幹を笑ひあふ」と書いたことがあります。
真夜中の秒針消したい受験生
月夜野中3年 馬場 裕美
【評】時間が過ぎてゆく速さを感じさせる秒針。せめて秒針だけでも消したいもの。受験まで残り時間の少なくなった思いです。
厳寒の中にも一つ光あり
下仁田中3年 吉田 祐平
【評】寒さの中での光。それがまだ暖かさを伝えないものであっても、明るいというだけで、希望や勇気が与えられることがあります。
学んでも不安ばかりがつのる冬
前橋桂萱中3年 武田 恵梨
【評】受験勉強は、すればするほど不安になるもの。理解するとともに、理解していないところも分かってくるからです。でもみんな同じです。
窓の外つららたちの大合唱
六合中3年 山本 由樹
【評】氷柱の様子が、視覚ではなく、聴覚に転じているところが面白い。長短不ぞろいの氷柱たちは、いろいろな声を出していることでしょう。
雪だるま明るい風を運びけり
六合中3年 山本 彩乃
【評】雪が、雪だるまになることによって生まれる雰囲気。雪だるまの存在感が、風を明るいものに変えてしまうのです。