鈴木伸一選

2005年3月23日上毛新聞掲載


看板が大きく見える冬の朝
前橋桃川小6年 品川 愛恵
【評】冬の晴れた朝は空気が冷たく澄んで、いろんな物がかえってよく見えたりします。こんなときは、感覚も普段より鋭くなるのでしょう。
かぜひいてアイスをたべたらなおってしまった
前橋桃川小6年 ウォリス慶太
【評】「なおってしまった」と他人事のように書いたのが愉快。もちろん、風邪はつらかったと思うけど、ユーモアで吹き飛ばしたのかも。
登校班機関車みたいに歩いてく
前橋桃川小6年 岡田浩一郎
【評】みんなが白い息をはきながら、列を作って元気に歩いてゆきます。その様子は、なるほど「機関車」みたい。おもしろいたとえですね。
静かな日あれっと思うと雪が降る
前橋桃川小6年 荒木 瑞穂
【評】雪が降る前というのは、確かに不思議な静けさがあります。その微妙な雰囲気と、雪が降り出したときの軽い驚きが、よく出ています。
木々たちが春一番でゆれている
高崎豊岡小6年 清水 亮太
【評】春一番の強風に揺れる木々。大変そうに見える半面、春到来を喜んでいるようでもあります。清水君も、きっと喜んでいたのでしょう。
歩いてる自分も風ももう春だ
高崎片岡中1年 小倉 龍太
【評】風の暖かさといった外からの感覚に加え、自分の内側からも春という季節を感じ取っているのがいい。「もう」の一語が効いています。
空高くボールの行き先春疾風
高崎片岡中1年 三森 亮太
【評】空高く舞い上がったボール。そこを、ごうごうと音を立てて吹き渡る春疾風(はやて)。印象的な光景ですね。
花が咲き無表情な冬が去る
吉井入野中1年 江原 沙貴
【評】四季に表情があるとしたら、なるほど冬は最も表情に乏しいのかもしれません。一方、春は満面の笑顔ということになるでしょうか。
寄りそった鳥を見つめて思う春
小野上中1年 宮 ゆりか
【評】仲むつまじい2羽の鳥を見つめるというところに、思春期の作者の内面がうかがえる気がします。季節感も、よくとらえられています。
暖かく天日に干される黒板消し
小野上中1年 木暮 孝薫
【評】暖かな陽光を浴びて、いかにも気持ちよさそうな黒板消し。およそ詩にはなりそうもない黒板消しにも、ちゃんと詩情があるんですね。
アカシアのとげより痛い風が吹く
小野上中2年 長久保徴子
【評】日本でアカシアと言うのは、多くニセアカシア(ハリエンジュ)で、枝に鋭いトゲがあるのが特徴。そのトゲよりも痛い、冬の風です。
電柱がふるえていそうな雪の夜
小野上中2年 佐藤 絵理
【評】電柱というのは、意外と詩情を感じさせるものかもしれません。宮沢賢治も、「月夜のでんしんばしら」という名作を残していますね。
春近しテニスコートが見えてくる
六合中1年 山本 勇紀
【評】積もった雪が解けはじめ、隠れていたテニスコートが少しずつ見えてきたのです。学校生活を通して、春到来の喜びを描いたのがいい。
雪解けの滴が映した青い空
六合中2年 篠原 美咲
【評】たいへん清浄感のある俳句。雪の多い冬はいろいろ大変だと思いますが、半面、だからこそ書くことができた作品でもあるでしょう。
春ま近雲の過ち大雪に
六合中3年 市川 大昭
【評】もうすぐ春だというのに、予想外の大雪。なるほど雲が、季節を間違えてしまったかのようですね。
面接前タンポポを見ておちついた
富岡南中3年 山口 大輔
【評】面接試験は、だれしも緊張するもの。そんな中、可憐なタンポポを見て落ち着けたというのは、俳句に親しんでいたおかげでしょうか。
春一番洗たく物もうかれだす
富岡南中3年 富松阿友美
【評】「洗たく物が」ではなく「も」ですから、そこには作者のうきうきした気分も投影されているはず。
春一番まるで怒りをはらすよう
富岡南中3年 高橋  歩
【評】この「春一番」には、作者の鬱屈した感情が託されています。ただ、内にこもらず、外へ向けて発散しているので、それが救いです。