林桂選

2005年4月13日上毛新聞掲載


気がつけば見えなくなった白い息
伊勢崎赤堀東小5年 諸田  遙
【評】息が白くなると、すぐに気がつきますが、見えなくなったのは気がつきません。後になってそう言えば白くないという気づき方ですね。
体育館出ると春風かおるなり
高崎豊岡小6年 白石 陽香
【評】室内から出たときの開放感と、春風が重なったのです。「かおるなり」に実感があります。体育館の暗さと外の明るさも対比されます。
母さんの前でとんだ二重跳び
前橋山王小6年 細野 龍矢
【評】授業参観で縄跳びをして見せたようです。「母さんの前で」に、緊張感と誇らかな気持ちの両方が感じ取れます。
残雪の光を放つ朝の山
吉井入野中1年江原 沙貴
【評】類想句が多いのですが、それでも「光を放つ」と「朝の山」の美しい関係は、作者の経験を通してのものとしてとりました。
夜桜に酔ったおじさん泣いている
安中一中1年杉本 敦美
【評】花見ではめをはずして、泣き上戸になっている小父(おじ)さん。酒と花が、小父さんの鬱屈(うっくつ)した日常を解き放っています。
のぼりざかがあってたいへん春の道
安中一中1年 間渕 紀史
【評】上り坂は季節を問わずにあるものですが、春の景色に彩られることで、新たな道として発見されているようです。感覚のいい作品です。
初夢は部屋いっぱいのゆでたまご
安中一中1年 高久 舞果
【評】初夢に見ると縁起がいいとされているものがありますが、実際に見るのは大変。夢見た本人の理解に苦しむゆで卵の夢の方が現実的です。
わたしの手天まで届く春の朝
安中一中1年 千本美穂子
【評】「天まで届く」の誇張表現に、春を迎えた開放的な思いが感じられます。思い切り背伸びをしてみたくなるような季節です。
クラスがえ今のクラスでいいのにな
安中一中1年 渋谷由希美
【評】一年間なじんだクラスには、自ずから愛着が生まれます。クラス替えはしなくてもいいのにと思えるのは、いいクラスだった証拠です。
夜桜やなんでおまえは美人なの
安中一中1年 吉田 壮吾
【評】「なんでおまえは美人なの」は、夜桜への呼びかけの言葉。夜桜の美しさを愛(め)でる思いが、言わせています。確かに人にたとえれば美人。
本を読みふうっとため息春の風
小野上中1年 斉藤 俊介
【評】「ふうっとため息」は、そのまま本の読後感です。どのような本だったのでしょう。ため息をつきたくなるような本も時には必要です。
教科書の厚さを思う三学期
小野上中1年 野村 翔平
【評】一年の学習をおえようとして、改めて教科書の厚さを思うのです。学んだ後で学習内容の豊富さを実感し直しているのです。
黒板にはじめの春がうかび出る
小野上中1年 樋田 亮介
【評】黒板にかすかに感じられる暖かさ。そこに「はじめの春」を感じ取りました。日射しが暖めるものは地面ばかりではありません。
卒業式太陽も歌う校歌かな
小野上中2年 朝比奈 亨
【評】卒業式の晴れやかな思いを、「太陽も歌う校歌」で表現しました。明るく大きな声で歌われる校歌の様子です。
卒業の涙で桜咲きにけり
小野上中2年 中沢 奈美
【評】卒業の思いと、春の到来の象徴である桜の開花をストレートに結んだ誇張表現。快作というべきでしょうか。大人には書けません。
やわらかな春風にぎりつめのびる
小野上中2年 朝比奈明子
【評】「つめのびる」へイメージの飛躍は、感覚的で、他の人が真似ができない鋭さがあります。ものがみな動き出す春の思いも感じられます。
雪どけのしずくのまぶしさ空の下
六合中2年 篠原 悠江
【評】「空の下」がいい。しずくは振り仰ぐような位置にあるのでしょう。その背後にはまぶしい空が春の面持ちで広がっているのです。
名残り雪別れのさみしさ積もりゆく
六合中3年 中沢  新
【評】類想のある句ですが、さみしさが積もるという思いは、作者にとって実感された大切な思いでしょう。卒業を迎えた作者です。
君がいた校庭の空風光り
下仁田中2年 伊豆島佳奈
【評】「いた」は、君がすでに不在であることを示します。君がいることで光り輝いた校庭の空と風も、今は思い出の風景なのです。
暖かい空に変えるよ桜の木
吉井中央中2年 花垣  茜
【評】桜の開花が、空の色のみならず温度も変えるというのです。誇張表現ですが、桜を言祝(ことほ)ぐ思いが見つけたものでしょう。