林桂選

2005年5月25日上毛新聞掲載


高校で見る青空は少し濃い
明和県央高1年 佐藤 俊樹
【評】新しい環境で学ぶ四月。簡単に言うことができない思いを「少し濃い」にこめています。空の濃さは生活の濃さでもありましょう。
休み時間ぶらんこ乗った小鳥かな
吾妻高1年 中沢 瑞希
【評】あちこちに飛び、降りる小鳥。ある休み時間、ブランコの上に降りた姿を目撃。「乗った」ように見えたのは自分の遊びの気持ちの反映。
黄水仙どの花よりも美しく
吾妻高1年 上村 華織
【評】「ナルシシズム」は、水仙に化した美青年の名に由来します。これを踏まえたかどうかではなく、水仙にはそんな風情があるのです。
ホウレン草私の弁当うめつくす
吾妻高1年 中曽根 藍
【評】「うめつくす」に、困惑の表情が重なって見えてきます。予想を超えた多さ。そして、必ずしも好きという訳でないおかずです。
夕暮のかげにおわれて早歩き
渋川青翠高2年 上原百合花
【評】「かげにおわれて」がいい。心せく感じを、上手(うま)く表現しています。この影は自分の影と考えると、その感じがよりはっきりします。
名前書く油性のにおい目にしみる
渋川青翠高2年 野寺 未鈴
【評】新学期、教科書等に名前を書きます。その油性ペンも新しいもの。初めてキャップを取ったときの匂(にお)いです。「目にしみる」が上手い。
金魚鉢ほっぺたくっつけいい気持ち
高崎北高2年 黒沢美沙紀
【評】頬(ほお)を金魚鉢につけ、クーラー代わりにします。もちろん、涼しそうに泳いでいる金魚の姿に誘われてのことに違いありません。
部活動夏の匂いへ投げる槍
高崎北高2年 阿部 祥久
【評】「夏の匂い」という抽象的な言い方が、ここでは効果的。広いフィールドを感じさせ、草いきれまで感じさせます。
紅梅が白梅のあと追いかける
高崎北高2年 太田  礼
【評】紅梅と白梅の開花時期が微妙にずれているのです。それを「あと追いかける」と言っています。豪華な梅の花の世界を感じさせます。
街歩く人の上に日傘かな
高崎北高2年 飯野 悠衣
【評】萩原朔太郎は、帽子の下に顔があると言っていますが、人の上に日傘があるというのはその逆の視点です。面白い句です。
桜木の根元の草まで輝いて
利根商高3年 中島 静香
【評】満開の桜のまばゆさを、根元の草の輝きを言うことで表現しています。想像の世界では、この方が桜も輝いて感じられます。
恋終わり桜も散って大人になる
利根商高3年 滝沢 沙織
【評】恋が終わり、桜が終わる、この終わるという感覚の中で、大人になってゆく自分を感じ取ってもいるのです。
雪残る畑眺める道祖神
利根商高3年 小川華菜美
【評】残雪の畑。その路傍の道祖神。静かな風景ですが、「眺める」という擬人法で、「道祖神」に命が宿り、風景に命が宿ります。
清明や野に砲丸をぽんぽんと
北海道大2年 山野犠恵子
【評】「清明」は、ちょうど年度初めのころに当たります。部活動も、新たな思いで始まる時期です。「ぽんぽんと」が上手く感じを伝えています。