鈴木伸一選

2005年5月18日上毛新聞掲載


夜中には信号きっとさびしそう
前橋桃川小5年 申  玄祉
【評】夜中になると、ずっと点滅している信号。人や車の行き来も絶えて、いかにもさびしそうな感じです。情景が、よく見えてきますね。
春がきてママのせなかにてんとう虫
前橋桃川小5年 小林優衣子
【評】楽しげな話し声が聞こえてきそうな俳句。場所はどこであれ、あたたかな日の光や心地よい風の肌ざわりなどが、よく伝わってきます。
アリの顔よく見るといつもおこってる
前橋桃川小5年 鯉渕 優介
【評】図鑑で調べてみたら、アリの顔って、確かに怒っているような感じでした。鯉渕君はよく観察しているなあ、と感心させられました。
あくびしてポッと花さくはなみずき
前橋桃川小5年 武井 美久
【評】ハナミズキのつぼみがあくびをして、その拍子に花が開いたと感じたのです。のどかで眠くなるような春の雰囲気が、よく出ています。
のびてゆくわたしは春につつまれて
松井田西横野小6年 平石 彩花
【評】平石さんくらいの年齢というのは、からだも心もいちばん成長するとき。あたたかな春に包まれ、伸びやかに育ってほしいと思います。
しんがっきかぜとさくらのハーモニー
松井田西横野小6年 田村香奈絵
【評】新学期のはずむような気分が、「ハーモニー」という言葉から、よく伝わってきます。すてきなことが、いっぱい待っていそうですね。
春風にのった一年やってくる
沼田小6年 小材 麗加
【評】最上級生の小材さんから見ると、1年生の子たちは、ずいぶんかわいく映るでしょう。あたたかな風に乗って来た、春の妖精みたいに。
桜ちり夏に近づく声がする
沼田小6年 生方  望
【評】サクラの花が散ると、若葉の緑がぐんと濃くなり、近づく夏を感じさせます。生方さんの心の耳に、自然があげた声が聞こえてきます。
自転車をこいだら太陽あたたかい
下仁田小坂小6年 本多 美里
【評】一生懸命に自転車をこいだら、からだがぽかぽかしてきました。こんなときは日差しのあたたかさも特別、心地よく感じられるのです。
緑色山が季節を運んでる
中之条中1年 小渕 彩香
【評】山の色の変化を見ていると、季節の移り変わりが、確かによく分かりますね。だから、「季節を運んでる」という把握が生きるのです。
チューリップ今日もいきいきさいている
中之条中1年 金井 実紀
【評】「今日もいきいき」という表現に、作者の姿が重なって見えます。チューリップも作者も、みんなを元気にする明るさを持っています。
太陽が春のまなざしてらしてる
六合中1年 中村 真唯
【評】太陽が、春のまなざしのようなおだやかな光で、皆を照らしているということでしょう。ようやく春になった喜びが、よく出ています。
ひなたぼこひざしの中の昼休み
六合中1年 田所 鉄平
【評】季節は冬。寒さに負けず校庭で運動するのもいいけれど、ときには、こうして日なたでのんびり友達と話したりするのも楽しいですね。
春の日がテニスボールの影映す
六合中2年 山本 勇紀
【評】冬に比べて、どこか日差しが濃くなったように感じられる春のある日。テニスコートに映ったボールの影も、春の喜びに弾むようです。
風使い風をおこして桜散る
沼田西中2年 栗原 春香
【評】「風使い」という名の魔法使いが、本当にいそうな気がしてきます。作者のすぐれた詩才を物語る、イマジネーション豊かな俳句です。
雲流れゆっくり飛んでる春の風
高崎片岡中2年 山田  睦
【評】春ののどかさをよくとらえた、素直な表現。ただ、「流れ」「飛んでる」といったイメージの重複する言葉は、少し整理したいですね。
草もちが仲よさそうに会議中
高崎片岡中2年 田中 雅大
【評】何個かの草もちが、器に盛られています。それが、頭を寄せ合って会議をしているように見えたのでしょう。おもしろい着想ですね。
ふりこ時計小さな春を刻んでる
小野上中2年 宮 ゆりか
【評】振り子の揺れに、「小さな春」を見て取った感性がいい。こう表現されてみると、確かに春の雰囲気が伝わってくるから不思議です。
教科書が汚れはじめて春終わる
小野上中2年 小池 芳法
【評】新学期が始まって一カ月ほどもたつと、だいぶ普段の生活が戻ってきたという感じがします。教科書の汚れも、目立ち出すころですね。
夏浅し花びんの花が光ってる
小野上中3年 中沢 奈美
【評】初夏の陽光には、真夏の容赦ないまぶしさと違って、すっと染み透るようなすがすがしさがあります。その辺りを敏感にとらえた作品。
さんしょうの香りまぶしい日曜や
小野上中3年 野村 成美
【評】香り高いサンショウの芽は、春を感じさせる食材。普通、「香り」を「まぶしい」とは言いませんが、ここではそれが生きています。
山々が青あらしを待つ休みの日
小野上中3年 佐藤 絵理
【評】「青嵐」は、青葉のころに吹き渡る強い風。とてもさわやかでみずみずしい感じがします。そんなイメージが、若い作者にぴったり。
筆箱が大口あけて春を飲む
小野上中3年 長久保徴子
【評】「大口あけて」という大胆な表現が目を引きます。筆箱のような身近なものも、とらえ方や描き方によっておもしろくなるという好例。
目に映る空の青さと葉の青さ
前橋芳賀中3年 中根麻友美
【評】一口に「青さ」と言っても、空と葉とでは違う青です。それぞれの美しさを知ることで、私達の心はさらに豊かになってゆくでしょう。
春風の音が聞こえる窓の外
妙義中3年 佐藤佳那実
【評】おだやかに吹く春風のイメージからすれば、音はあまり聞こえないでしょう。だとしたら、これは作者の心の耳がとらえた音ですね。