林桂選

2005年6月8日上毛新聞掲載


せんぷうき顔をまわして嬉しそう
前橋桃川小5年 田部 竜憧
【評】「嬉しそう」がいい。扇風機の首振りを、扇風機自身が楽しんでいる姿と見ています。大人になると見えなくなる感情の世界です。
はざくらはゆれてあそんでいるみたい
前橋桃川小5年 伊井 健太
【評】伊井君は、葉桜の揺れの中に、葉桜の感情を見つけました。葉桜の動きに、笑い声でも出していそうな世界が見えてきます。
一年生さくらの下でりっぱだよ
前橋桃川小5年 南雲 由衣
【評】「さくらの下で」という指定が効果的。一年生が一年生として一番輝いて見える場所です。待ち望んでいた晴れ姿でしょう。
弟はなんでもすぐに歌作る
前橋桃川小5年 中沢 鮎美
【評】即興で自分の気持ちや出来事を歌にしてしまう弟さん。作詞、作曲の名人です。テープにとって残してみれば、楽しいでしょう。
桜まう朝の校庭全力で
沼田小6年 高宮 栄佑
【評】「全力で」がいい。「全力」は桜の舞う姿でもあり、校庭の様子でもあり、子どもたちの姿でもあるように、広がりの中で読めます。
花ふぶき背中いっぱいのランドセル
沼田小6年 岡田侑里香
【評】「背中いっぱいの」がうまい。一年生の姿でしょう。小さな体で背負うランドセル。背中からあふれ出そうなランドセルです。
校庭のタイヤにすわり風を吸う
下仁田小坂小6年 八重樫拓也
【評】校庭に埋め込まれた遊具としてのタイヤ。そのタイヤに遊びを一休みして、さわやかな風を思いきり吸い込んで鋭気を養います。
新緑にかこまれほのかにあたたかい
下仁田小坂小6年 本多 美里
【評】日々新緑の世界が広がり、その緑に囲まれてゆきます。その微妙な感覚を「ほのかにあたたかい」と、うまく言い止めました。
山頂のさわやかな風歌ってる
吉井入野中1年 有賀 翔平
【評】山頂に出ることは、風の通り道に出ることです。その風のさわやかさ。「歌ってる」は、実感のある言葉です。
桜散り新芽がニョキニョキニョッキニョキ
吉井入野中1年 渡邊のぞみ
【評】「ニョキニョキニョッキニョキ」に言葉遊びのリズムがあります。花の後の葉桜への移行。その速さを感じさせる言葉です。
川の上アカシアのカーテンひきました
甘楽二中1年 高木 里奈
【評】川岸に沿ってアカシアの木があり、その花盛りには川の上に白いカーテンを引いたように見えるのでしょう。
美しき雲に浮いてる山脈よ
中央中等教育2年 諸田  司
【評】「雲に浮いてる」が上手(うま)い。たしかに、山もじっと見ていると、雲の流れで中に浮かび上がって感じられることがありますね。
陸上の緊張響く春の空
六合中2年 山口 清華
【評】「緊張響く春の空」が上手い。陸上競技の緊張感が、春の空にまで届いていそうです。競技会場の緊迫感が伝わります。
干しガキを干してる時は甘い風
妙義中2年 石井  徹
【評】この句の「干してる時」は、柿を吊(つる)している間はという意味でしょう。日に日に甘くなる柿に、風も日に日に甘くなります。
青春の僕らはまるで夏燕
高崎片岡中2年 工藤 京太
【評】燕の素早い動きは目を引きます。その動きを溌剌(はつらつ)とした自分たちの姿に重ねているのです。青春謳歌(おうか)。自祝の句です。
玄関のふりこ時計が刻む春
小野上中2年 宮 ゆりか
【評】変わることなく時を刻む時計。しかし、振り子時計には過ぎゆく時が見えそうな感覚におそわれます。惜春の情も湧(わ)いてきます。
ハンカチが真夏の準備始めてる
小野上中2年 宮 ゆりか
【評】ハンカチは夏の季語にもなっています。もちろん、ハンカチを整え真夏の準備をしているのは、宮さん自身。待ち遠しい夏です。
雨蛙坊主頭を探してる
小野上中3年 朝比奈明子
【評】雨蛙の目の動きを、じっと観察。そして、その動きを、坊主頭を探しているみたいだと解読。どこからこんな発想が湧いてくるのでしょう。
大会が終わったグランド風がやむ
小野上中3年 朝比奈 亨
【評】「風がやむ」に自分の気持ちも重ねられています。大会で高ぶった気持ちが、少しずつ静かになってゆくのを、見つめています。
太陽が真上に来た来た春の空
太田東中3年 池田  洋
【評】「来た来た」の繰り返し表現に、春の到来を喜ぶ気持ちが描かれています。冬よりもはるか高くまで来た太陽がまぶしく輝きます。
桜ちる横で短パン走ってる
妙義中3年 森  華菜
【評】「短パン」という言葉の斡旋(あっせん)が巧み。恐らく陸上部の練習でしょう。でも、「短パン」で、桜の風情にかかわらない姿に見えてきます。