鈴木伸一選

2005年6月29日上毛新聞掲載


種もみが水をのむよ一日で
前橋桃川小5年 高柳亜理沙
【評】水にひたした種モミ。ぐんぐん水を吸って、きっと立派なイネに育つことでしょう。高柳さんの感動が、よく伝わってくる俳句です。
あったかい大仏の中さわったら
前橋桃川小6年 古沢 慎也
【評】鎌倉の大仏は中に入ることができますが、実際にさわってみたら、意外と温かかったのです。これも、修学旅行の楽しい思い出の一つ。
掃除したプールが笑っているみたい
玉村芝根小6年 柳内 菜摘
【評】夏に向けて、プール掃除(そうじ)をしたのです。みんなのおかげでぴかぴかになったプールは、うれしくて、何だか笑っているように見えます。
プールの日一番のりはあめんぼだ
前橋月田小6年 天田恵里香
【評】待ちに待ったプールの日。張りきってプールに行ったら、天田さんより早く、すでにアメンボがすいすいと泳いでいたというわけです。
青空にひまわりさいて夏が来た
榛東南小6年 駒形 美保
【評】ヒマワリが地面に咲くというのではなく、青空そのものに咲いているかのように表現したのがいい。夏到来の喜びが、よく出ています。
つゆなのにつばめのかさはいつもない
中之条中1年 吉田 大介
【評】降り続く雨の中でも、ツバメは飛んでいます。その姿に、傘がなくて大変そうだなあ、と思った吉田君。やさしい心の持ち主ですね。
せみの声夏の一歩がまた進む
六合中1年 篠原 早紀
【評】「一歩」は作者自身の歩みとも、季節自体が進むこととも読めます。どちらかというのでなく、両方を合わせて読むのがいいでしょう。
新緑を包む優しい白い雲
六合中2年 押野 美瑛
【評】自然へのやさしく素直なまなざしが、作品全体から感じられます。自分の住む土地に、こんなふうに愛情を持って接したいものです。
授業中雲は流れる夏が来る
六合中3年 麻野沙央織
【評】授業中、ふと窓の外に目をやれば、真っ青な空を白い雲が流れてゆきます。義務教育最後の年の大事な夏が、もうじきやって来ます。
黒板に初夏の日ざしが反射した
妙義中2年 小林 悠香
【評】学校生活の中から初夏の季節感をとらえたのがいい。まぶしさに思わず目を細めた作者の様子まで、何となく想像できそうな俳句です。
夏近し見なれた景色がよそよそしい
小野上中2年 宮 ゆりか
【評】季節の変わり目は、見なれた景色も、どこか普段と違う表情になるようです。もっとも、それに気づくには、豊かな感性が必要ですが。
休み明け鉛筆はしる青あらし
小野上中2年 飯塚 泰志
【評】青葉を揺らして吹き渡る風が、青嵐。休み明けで気力満タンの飯塚君が懸命に勉強している様子も、青嵐のように颯爽(さっそう)とした印象です。
弟が飲み物探す暑さかな
小野上中2年 野村 翔平
【評】私も暑い日は家に帰るやいなや、冷蔵庫を開けて冷たい飲み物を探してしまうことがよくあります。少し行儀が悪いかもしれませんが。
木の色は夏の思い出夏の色
小野上中2年 丸山  唯
【評】「色」と「夏」をそれぞれくり返し、印象的なリズムを生み出しているのがいい。自然を愛する気持ちがないと書けない作品でしょう。
たんぽぽも一緒に加わり新学期
赤城養護小児医療センター分校中2年 井上 勇佑
【評】新学期は、自分の気持ちもおのずと新鮮になります。そんなときは動植物をはじめ、周囲のいろんなものが友達のように思えてきます。
郭公が鳴いて始まる夏休み
高崎片岡中2年 後藤 正樹
【評】私の家の近くでも毎年、夏の到来を告げるようにカッコウが鳴きます。作者にとっては、その声が夏休みの始まる合図というわけです。
部活から帰って来たよ夕焼と
高崎片岡中2年 松井美早紀
【評】夕焼けは一年中見られますが、特に夏が美しいので、夏の季語とされています。昼の熱気がまだ残る夕刻の情景を、素直に描きました。
真夏の日悲鳴をあげる扇風機
前橋芳賀中3年 湯浅 拓人
【評】あまりの暑さに、扇風機の風量を最大にしているのでしょう。「悲鳴」は扇風機のモーター音でもあり、作者の内面の声でもあります。
夏の空視界もゆがむむし暑さ
前橋芳賀中3年 片貝 友美
【評】蒸し暑さは身体だけでなく、精神的にもつらいものです。そんな感じが、「視界もゆがむ」という表現を生んだのではないでしょうか。
外に出て夏のにおいをかいでみる
前橋芳賀中3年 織田 美咲
【評】人工的なにおいではなく、自然のにおいにこそ夏のおとずれは実感される。外に出るのは、そうした自然のにおいを嗅(か)ぐためなのです。
いつまでも桜の花びら目にうかぶ
太田東中3年 桜井 賢太
【評】美しかったサクラの花も、今は散り尽くしてしまいました。しかし、作者の脳裏には大切な記憶として、いつまでも残っているのです。
さも赤く咲いていたるバラの花道
太田東中3年 鳥羽麻里子
【評】赤いバラの咲く道は、作者のために用意された舞台への花道であるかのようです。独特な書き方に、作者のすぐれた美意識を感じます。
えんむすび大吉よりも吉がいい
吉井中央中3年 吉田 美咲
【評】修学旅行での作のようですから、たぶん京都の清水寺にある地主神社を詠んだものでしょう。おみくじは願い通りに吉と出ましたか?
あつすぎてみやげのうちわつかいけり
吉井中央中3年 菊地 太朗
【評】京都は暑いですからね。みやげの団扇(うちわ)を使わずにはいられなかったというのも、よく分かります。総ひらがな表記も、なかなか印象的。
日盛りや鹿も私も一休み
安中一中3年 戸塚 大介
【評】修学旅行で訪れた奈良公園での一こま。人間もシカも同じように木陰で一休みしているというところに、巧まざるユーモアを感じます。