林桂選

2005年7月6日上毛新聞掲載


弟は種に名前をつけている
前橋桃川小5年 中沢 鮎美
【評】どれも大切なタネ。その思いをこめて、名前をつけている弟さん。私たちがみんな名前を持っているのも、きっと同じなのでしょう。
海岸は宝石みたいに光ってる
前橋山王小6年 堤 ほのか
【評】「宝石みたいに」という、何のてらいもないたとえが、ここでは効果的。海岸で白く砕けて輝く波への素直な賛歌になっています。
サーフコースター坂登りそれから風の旅
前橋山王小6年 木暮 大樹
【評】「サーフコースター」は、横浜八景島シーパラダイスのアトラクション。「風の旅」に、海上のコースターの感覚が込められています。
ブルーフォール体も心も落っこちた
前橋山王小6年 佐藤 正人
【評】同じく、百メートルの高さから百二十五キロで垂直落下するアトラクション。心と体が分解して落下するほどのスピード感です。
すなの城波にさらわれ負けいくさ
前橋山王小6年 関口 泰紀
【評】砂浜遊びの砂の城作りは定番の一つですが、最後には波にさらわれることになります。それを負け戦の城作りと見た批評の感性は鋭利。
段葛にふくそよ風は緑色
前橋山王小6年 赤嶺 健人
【評】段葛は、鎌倉鶴岡八幡宮に通じる古道。二の鳥居から三の鳥居までの道が現存。「そよ風は緑色」が古道の印象を伝えています。
はちまんぐうかくれイチョウに春の風
前橋山王小6年 茂木 優太
【評】鎌倉鶴岡八幡宮の大銀杏。源実朝殺害のため公暁が隠れていたと伝えられています。「春の風」に遙(はる)かな歴史の時間を感じているのです。
弟がたんぽぽの綿とばしてた
前橋大室小6年 高坂 未来
【評】タンポポの綿毛を吹いてひとり遊びをしている弟さんを、偶然見かけたのでしょう。姉の優しい視線が感じられる作品です。
雨の音雨の日だけの音楽隊
沼田小6年 川端 奈美
【評】雨音は雨の日にだけ出現する音楽隊。そう考えれば、雨の日も楽しくなるかもしれません。雨の日が待ち遠しくなるかもしれません。
新緑のパッチワークだ初夏の山
沼田小6年 江森あずさ
【評】新緑といっても株の違いや木の種類の違いによって、色合いが違っています。それを「パッチワーク」にたとえて、見事に表現しました。
アカシアの香りいっぱい部屋に増す
前橋新田小6年 曽根 美幸
【評】アカシアの花を部屋に持ち込んだとも、窓を開けたら香りが入ってきたとも考えられます。ともかく、アカシアの存在感が満ちています。
草笛の音が聞こえた夏の昼
玉村芝根小6年 萩原  知
【評】どこからともなくかすかに聞こえた草笛。「夏の昼」は、音の方向も場所も定かでないぼうぼうとした時空を現しているようです。
ねむくてネお空と地面がくっつきそう
六合中2年 山口  優
【評】くっつきそうなのは瞼(まぶた)。でもその視界には、空と地面が一つになるようなあやふやな世界が広がっています。
教科書のページめくって夏さがす
小野上中2年 須藤 泰志
【評】「夏さがす」へのイメージの飛躍がおもしろい。教科書に掲載されていないものを探す行為の意味が、問いとして読者に返ってきます。
入道雲京都へのぼる笑い声
小野上中3年 朝比奈明子
【評】修学旅行の仲間とともに、京都に向かう途中。その談笑の声も段々と京都に近づいてゆきます。「京都にのぼる笑い声」の把握は見事です。
奈良の鹿太陽あびて輝く背
月夜野中3年 山田亜矢香
【評】鹿の毛艶(けづや)の美しさを、「太陽あびて輝く背」で表現。毛などの質感は、実際に見ないとわからないだけに、見ると心動かされます。
清水の舞台から見る三日間
月夜野中3年 柳橋 蓉子
【評】「見る三日間」が上手(うま)い。清水の舞台から京の街を見ながら、過ぎ去った旅行の三日間を思い出しているのです。
東大寺大仏見ようと二歩下がる
月夜野中3年 林  里美
【評】その全体像を見るためには後ろ下がりをしなければならないほどの大きさなのです。大仏の大きさを言うレトリックとして巧みです。
金閣をきれいに咲かす池若葉
月夜野中3年 高橋 良宗
【評】池に映った若葉を葉として、花のように見える金閣寺。金閣寺の輝きを花にたとえるという見方が斬新です。「池若葉」の造語も見事。
指触れて波紋の渡る蓮の池
吉井中央中3年 松本 理瑠
【評】「波紋の渡る」が上手い表現。指を触れてできる小さな波紋でも、蓮(はす)にまで渡ってゆくのです。静寂に満ちた庭園の池でしょう。
東大寺鹿のとなりを歩いてく
吉井中央中3年 松本 卓士
【評】東大寺の庭は、鹿が人間と同じようにいる空間。前を、後ろを、隣を、鹿が歩きます。その不思議な感覚を言いとめています。
第一次枕大戦・ァ椏s
吉井中央中3年 池田 弥典
【評】定番とも言える修学旅行の旅館での枕投げ。その気分をそのままに踏まえた比喩(ひゆ)表現を創作しました。「枕大戦」は愉快です。
いちご狩り麦わらぼうしをかごにして
沼田薄根中3年 田村 紗恵
【評】麦わら帽子を入れ物代わりにしての苺(いちご)狩り。露地栽培の自家のいちご園でしょうか。ほのぼのとした感じが上手く表現されています。
万緑の山の影から雲来る
沼田薄根中3年 五島  優
【評】夏の景色を大きく表現。この雲は入道雲でしょうか。緑の山の上にかかる白くまぶしい雲。「来る」に沸き立つ雲の動きを感じます。