鈴木伸一選

2005年7月13日上毛新聞掲載


雨になり大仏の前かさの花
沼田小6年 宇敷 百華
【評】鎌倉の大仏のまわりは、すごい人だかり。折からの雨にカラフルな傘の花がいっせいに開くのを、大仏はどんな思いで見ているのかな?
夏のよるにわで小さな花火する
群馬国府小6年 清水 俊秀
【評】たとえ小さな花火であっても、家族みんなが一緒なら、大きな花火に負けないくらい楽しいですね。こういう時間を、どうか大切に。
日本列島大きな海をひとりじめ
藤岡一小6年 山田 晋也
【評】現実の国際社会ではこういうわけにはいかないけど、それを離れ、遠く水平線を眺めての素直な思いと読めば、よく分かる気がします。
五月すえぼんやり見える江の島や
前橋広瀬小6年 長谷川 萌
【評】修学旅行の車中かと思います。目的地に近づき、江の島が少しずつ見えてきたのでしょう。それにつれて、期待もふくらんでゆきます。
バスの中きれいな海がもう夏だ
前橋広瀬小6年 笹治 大介
【評】内陸県の群馬に住む私たちは、やはり海を見ると特別な感動をおぼえるようです。この句にも、それが素直に出ていて、共感しました。
道を行きここちよくふく春の風
富岡高瀬小6年 五十嵐祥子
【評】五十嵐さんは、出会った人たちとあいさつを交わしながら歩いたのではないでしょうか。だからこそ、春風がいっそう心地よいのです。
夜空見て夏の神話を語りだす
中之条中1年 山田 礼子
【評】星にまつわる神話は、たくさんあります。夏だと、たとえばサソリとオリオンの話などを思い浮かべますが、山田さんはどうですか?
雨の音本を読むのにちょうどいい
中之条中1年 安済 里佳
【評】雨音が頃合いのBGMに感じられるときって、確かにあります。本好きの安済さんにとって、それは至福の時間と言えることでしょう。
梅雨のじき中学校にもなれてきた
中之条中1年 剱持 侑那
【評】入学から3ヶ月あまりがたち、中学校生活にもだいぶ慣れてきたのです。この調子で、うっとうしい梅雨どきも元気に過ごしましょう。
風鈴が風に押されて音を出す
吉井入野中1年 渡辺のぞみ
【評】「風鈴が風に吹かれて」では当たり前ですが、「押されて」というのは、渡辺さんの確かな発見と言えます。少し強めの風でしょうね。
放課後が虹で染まる梅雨の空
吉井入野中1年 松本 七重
【評】虹を見ると、いろいろな夢がふくらんできますね。この句から、松本さん自身も夢を持って中学校生活を送っていることが分かります。
釣り竿にズシリと重し夏の川
高崎片岡中2年 土谷 友崇
【評】竿にかかった魚の重さだけでなく、川そのものに重量を感じたというのが鋭い。夏という季節ならではの、自然の生命力が伝わります。
風鈴の音聴くぼくもゆれうごく
高崎片岡中2年 森田  親
【評】風の強弱により、風鈴はさまざまな音を奏でます。その変化につれて、心の中にもさまざまな思いが湧(わ)き上がっては消えてゆくのです。
団扇持ち一メートルが動けない
高崎片岡中2年 中沢 友香
【評】あまりの暑さで、わずかに動くことさえおっくうなのでしょう。こんなときは、団扇(うちわ)であおいでも「焼け石に水」なのかもしれません。
木下闇走る子供を包みこむ
高崎片岡中2年 中里 麻利
【評】「木下闇(こしたやみ)」は、夏の茂った木立の下の暗さのこと。「包みこむ」にやさしさを感じるか怖さを感じるかで、読後感がかなり変わります。
東京の葉っぱの上に蝸牛
安中一中2年 加藤 大夢
【評】東京は意外と緑が多いのですが、やはり都心部は、そうでもない。だからこそ、偶然目にしたカタツムリが印象に残ったのでしょう。
父の日が過ぎて月日が過ぎていく
小野上中3年 樋田 将治
【評】特別なこともなく父の日を迎え、その後も淡々と月日が過ぎてゆく。私としては、それもまた家族の幸せなありようなのだと思いたい。
太陽が夏を伝える河原かな
小野上中3年 木暮  渉
【評】炎天下の河原が目に浮かびますが、そこにはどこかすがすがしさも感じられます。豊かな自然が感じさせるすがすがしさなのでしょう。
夏の空十人十色の人の夢
前橋芳賀中3年 茂木 景太
【評】私たちの夢はみな違うけれど、それを認めて尊重し合うことが、結果として個々の夢の実現へとつながってゆくのではないでしょうか。
噴水の前で友達まっている
妙義中3年 吉岡 大地
【評】涼しそうな噴水の前というのは、待ち合わせにちょうどいい場所ですね。友情のさわやかさも伝わってくるようで、好感が持てます。
夏空にうす雲かかる京の町
太田東中3年 酒井祐希穂
【評】暑い京都の夏は、確かにこの句のような感じ。修学旅行俳句は、寺社仏閣など似た題材になりやすいのですが、この句は一味違います。
旅の途中鹿が私を追ってくる
前橋広瀬中3年 成田  英
【評】奈良公園のシカは、あまり人を恐れませんからね。シカせんべい目当てに追ってきたのかもしれませんが、ちょっと驚いたでしょう。
五重塔青葉も揺れる初夏の風
前橋南橘中3年 橋本 麻衣
【評】法隆寺や興福寺などの古寺が思い浮かびますが、いずれにしても正攻法の素直な書き方で、初夏のさわやかさがよく伝わってきます。