林桂選

2005年7月20日上毛新聞掲載


ぼくのふくおとうとが着るころもがえ
前橋桃川小5年 小見 和幹
【評】衣更(ころもが)えの季節。去年の自分の服が、今年は弟の服になっています。衣更えは、服のリレーのバトンタッチのようです。
きらきらと海がまってるりん海学校
前橋桃川小5年 新木  光
【評】輝く海が私を待っていると言います。もちろん、本当に待っているのは新木さんの方です。待ち遠しい思いを上手(うま)く表現しました。
夏の海友がひろったサクラガイ
下仁田小坂小6年 柳沢 大祐
【評】修学旅行の一こまでしょう。浜に打ち寄せられたサクラガイを拾った友。その美しい輝きと思い出が一緒になって心に残ります。
ひまわりやぼくより大きい笑い顔
前橋月田小6年 小竹 壱実
【評】ヒマワリの花を笑顔に見立てました。見立てとして独創的というわけではありませんが、「ぼくより」の中に、花への思いがあります。
麦のほのてっぺんひとつてんとう虫
前橋月田小6年 小池 和樹
【評】テントウムシは、飛び立つために高いところに登りつめます。ここでは麦の穂。テントウムシの赤、麦の穂の黄と色彩も鮮やか。
田に水を入れてかえるがなきだした
榛東南小6年 近藤  教
【評】田に水を張ると、喜びの声をあげるように一斉に鳴き出すカエル。田の中にあるカエルの世界を実感する瞬間です。
父さんのつりざお動く夏が来る
中之条中1年 関  沙織
【評】釣りが好きなお父さん。お父さんにとって夏は何より釣りの季節なのです。釣り姿を想像する中に、父への温かい思いのこもる句です。
ヒマワリがしずむ夕日にてらされる
妙義中2年 山田 美里
【評】のっぽのヒマワリだけに、西日を最後まで浴びていそうに思われます。夏の一日の終わりの寂しい思いも重ねられていそうです。
向日葵は私の初恋相手だよ
妙義中2年 林  美帆
【評】もちろん虚構。しかし、この虚構の中には作者の恥じらいもはぐらかしもあって、聞き手は悩ましい思いにかられることでしょう。
さくらんぼ一粒残ってガラスの器
高崎片岡中2年 船津満里奈
【評】最後の一つを食べるのは勇気がいります。みんながおいしいと思っているものならばなおさらです。ガラス器の中の一粒だけサクランボ。
夕焼けに照らされ今日も写真たて
高崎片岡中2年 山中 咲乃
【評】恐らく西向きの部屋の窓辺に飾られた写真たて。今日も夕焼けに照らされて一日を終えるのです。一日の終わりの寂しさが漂います。
走り出す僕と風と白いシャツ
高崎片岡中2年 松本小夜子
【評】白いシャツまでも走り出しているような躍動感は、「僕」の姿でもあります。女性は作者です。単なる自称の句ではありません。
出がけに母がかぶせてくれた夏帽子
高崎片岡中2年 塩野谷麻衣
【評】外遊びのときには、必ず帽子をかぶせてくれたお母さん。幼い思い出とは、こうしたささやかな場面であることが多いものです。
新緑から深緑となり国道一四四号線
赤城養護小児分校中2年 山口 慶太
【評】長野原から上田に抜ける国道144号線の、春から夏への変化を、「深緑」から「深緑」で表現。固有名詞を上手く使っています。
新学期気ままな猫の休みは終わり
赤城養護小児分校中2年 関口 和徳
【評】「気ままな猫の」は比喩(ひゆ)。自分が送った春休みの表現です。新学期の決意と、休みの終わりを惜しむ気持ちが相半ばします。
中央中等教育2年 諸田  司
 
ネクタイをゆるめて受ける午後の授業【評】暑い夏の授業。制服のネクタイもゆるめずにはいられません。感情的な言葉をおさえて、具体的に記述することが表現の力になります。
風鈴が仲見世通りに響いてる
安中一中2年 小板橋政善
【評】仲見世通りは外国人旅行客の多いところです。それは日本情緒が豊かに残っているからでしょう。作者はそれを風鈴に見つけました。
仲見世の夏よりあつい人だかり
安中一中2年 大竹  悟
【評】仲見世の夏の暑さ。そして人だかりの暑さ。その相乗的な暑さを、両者を比較することで面白く表現しました。
夏暑し髪が白髪になればいい
安中一中2年 広上 由季
【評】誇張表現が独特。黒髪よりも白髪の方が、光を吸収しない分暑くない気がします。それでも白髪がいいとは思わないのが普通でしょうに。
噴水を見ながら食べたチョコレート
安中一中2年 日田  巧
【評】日帰り旅行の一こまでしょう。噴水の見える公園でのしばしの休息。「チョコレート」という具体的な表現が効果的です。
日蔭続く伏見稲荷の鳥居かな
安中一中3年 中島 潤地
【評】「日蔭続く」が巧みです。稲荷山道にいくつとなく続く伏見稲荷神社の鳥居のようすを、見事に表現しています。
首筋に日が照りつける清水坂
安中一中3年 根岸 沙知
【評】厳しい陽射しの中での京都の散策。しかも上り坂。そのつらさが、首筋に集まっているような感じになっています。
友と行く京の都に夏が来る
安中一中3年 一場 絵梨
【評】「行く」「来る」という対照的な表現が面白い。友は同じ方向に向いていて、夏は反対の方向から来るのです。
校庭のボールを映す春の空
六合中3年 山口絵理香
【評】「映す」が難解。文字通り校庭のボールが春の空に映っていると理解する以外ないですが、それが何の思いの表現なのかは難問です。
引退ししばらく寝かす柔道着
前橋芳賀中3年 伊藤 洋祐
【評】中学校の部活動も引退。それまで毎日のように袖をとおしていた柔道着ともしばらくお別れです。「寝かす」に、思いがこもります。
グランドのタンポポふまずにボール追う
前橋芳賀中3年 駒倉 良樹
【評】ボールを追いかけることに一心になりきれていないことが、タンポポを踏まない優しい気遣いの姿ともなっています。練習の一こまです。
大仏やラムネ飲むかと問いかける
太田東中3年 佐口  萌
【評】「大仏」と「ラムネ」。私たちはこのようなミスマッチとも言える世界にいるのです。作者の問いの根本にあるものはこれでしょう。
かみなりに起こされ光る青葉かな
小野上中3年 佐藤 駿一
【評】「光る青葉」は、雷雨に濡れてのものなのか、雷光を浴びたものなのかは不明ながら、「起こされ」に雷の一撃が感じられます。