林桂選

2005年8月3日上毛新聞掲載


ソーダ水泡の向こうに白根山
吾妻高1年 唐澤 彩香
【評】避暑地の喫茶店のテラスでの一こまのように美しい絵の句です。あるいは夏合宿の一こまのよう。青春性も漂います。
光琳忌朝早くから遊ぶ猫
吾妻高1年 荻野 千佳
【評】涼しい朝は過ごしやすく、猫も上機嫌なのでしょう。猫は琳派(りんぱ)に似合いそう。近代の琳派菱田春草には「黒猫」があります。
夏祭りとくべつな日を思い出に
吾妻高1年 田村 朱宇
【評】夏祭りは「ハレ」の日であり、特別な日です。しかし、「思い出に」する意味での特別な日は、個人的な思いがこもるのでしょう。
蝉丸忌マンドリンの音色響き渡る
吾妻高1年 相京 詩織
【評】琵琶の名手と言われる蝉丸を偲(しの)ぶ縁を、マンドリンの音色に見つけています。琵琶ならぬマンドリン。面白い取り合わせです。
光琳忌雨ひとすじの美しさ
吾妻高1年 桑名志保里
【評】光琳の線描された水の表現を踏まえているのでしょう。肉眼では雨は筋に見えませんが、頭の中では鮮やかな線が見えています。
午後の風ポプラをゆらす光琳忌
吾妻高1年 中澤 瑞希
【評】光と風に満ちたポプラの木。おそらく校庭の点景なのでしょう。青春性豊かな描写と光琳忌との取り合わせの詩的距離感の妙。
新茶飲む学校帰りは僕の時間
明和県央高1年 佐藤 俊樹
【評】集団の緊張から解きほぐされて、ひとりに返る下校時間。「新茶」と言っても、缶かボトルのものでしょう。
雨音に時を忘れる蝉丸忌
吾妻高3年 平石 留美
【評】目が見えない伝説的な蝉丸を、雨音の中に感じています。聴覚世界に生きる蝉丸には、我々には分からない音が聞こえていたはずです。
海開き暮れて崩れた砂の城
前橋工高3年 吉沢 英範
【評】海開きの一日の終わりを、崩れた砂の白をクローズアップすることで、ドラマチックに描き出しています。「暮れて崩れた」がたくみ。