林桂選

2005年8月17日上毛新聞掲載


イチョウの木根元がピースしているよ
前橋桃川小5年 鯉渕 優介
【評】これは下向きのピースなのでしょうか。大きな木になって根のはりが幹にピースサインのような形を作っているのでしょう。
ふとんをねほしたあとはパンケーキ
前橋桃川小5年 塩野 綾菜
【評】暖かい空気を吸ってふくれあがったふとんを、パンケーキにたとえました。ふとんにパンケーキの質感を見つけた感覚がいいですね。
雨の日はキラキラ笑うあじさいです
前橋桃川小5年 武井 美久
【評】雨の日のアジサイは多い題材ですが、雨とアジサイが一体化した様子の「キラキラ笑うあじさい」という表現は独特で面白いです。
梅雨になる気持ちは夏へ向かいだす
新治新巻小6年 杉木 恵理華
【評】梅雨になると、気持ちは次のシーズンに向かっているというのです。人間には、嫌な気候と、待ち遠しい気候とがあるのです。
せんぷうき私が用意し姉すずむ
群馬国府小6年 佐鳥日奈子
【評】扇風機を用意したのは、当然自分が涼むためにしたのでしょう。しかし、その扇風機の前にいち早く陣取ったのは姉。面白い句です。
シャボン玉みんなでとばせこの空に
玉村南小6年 重田みな子
【評】「この空に」が印象的。きっと明るい青空なのでしょう。思いっきりシャボン玉を吹きたくなるような気分にさせてくれるのです。  
月夜の日やわらかい光とんでいる
松井田西横野小6年 平石 彩花
【評】月光の様子を、「やわらかい光」と表現しました。光には、強い弱いだけでなく、固いやわらかいという質感もあるのです。
夏の空雲の形がおいしそう
松井田西横野小6年 須藤なつみ
【評】何の形をしていたのでしょう。夏の美おい味しいものだから、冷たいアイスクリームやかき氷などでしょうか。
ご近所のふうりんの音ですずんでた
松井田西横野小6年 佐藤詩歩美
【評】「借景」があるなら、「借音」(?)もあってよさそうです。隣の家の風鈴の音でも、涼しさを感じるのに変わりはありません。
プールの中みんななかよくひかってる
藤岡一小6年 山田有理子
【評】プールの友達の様子を、「みんななかよくひかってる」と表現。上うま手い。特に「ひかってる」は、プールの中の動きまで感じさせます。
夏の夜武者人形がうごいてる
玉村南小6年 佐藤 史哉
【評】武者人形がどこにあるのかわかりませんが、「うごいてる」は、恐怖感の表現であることは間違いありません。
打順待つ帽子の中から汗一本
榛東南小6年 胡麻 鶴涼
【評】少年野球の試合の一こまでしょう。暑さと緊張感から、汗が筋になって流れ出ます。「帽子の中から」が具体的で臨場感を伝えます。
部屋の中はるな湖全体影映す
六合中1年 山口  梓
【評】榛名湖畔の宿の部屋でしょう。窓いっぱいに広がる榛名湖です。宿泊して初めて知る朝夕の時刻の湖の姿は新鮮な印象を伴います。
カッターをこいで吹く風すずしいな
六合中1年 山口  悟
【評】普通「すずしいな」と言ってしまっては、読者に詩的なメッセージは届かないのですが、この句は「こいでふく風」で生きました。
空を見て青見て風見て夏を見た
六合中2年 戸嶋 美和
【評】「見て」「見た」のたたみかける表現が印象的。見えるものが、段々抽象化され、夏にたどり着く構成も見事です。
授業中雨の臭いがじゃまをする
小野上中2年 野村 詩織
【評】授業に集中できない沈んだ気分が、雨の臭においを感じています。「じゃま」は、じゃまするものを見つけていたからではないでしょうか。
厚い雲プールの水を聴きに行く
小野上中2年 斎藤 俊介
【評】「厚い雲」は、プールが開かれない天候を暗示するのでしょう。でも、この句の魅力は「プールの水を聴きに行く」という詩的表現。
テスト中ちょうちょが地面におちていく
小野上中2年 飯塚 舞衣
【評】「ちょうちょが地面におちていく」は、テストのときの暗い心理と重ねた表現でしょう。富澤赤黄男の句を踏まえていそうです。
プール着を忘れて思う暑さかな
小野上中2年 佐藤 大樹
【評】プール着を忘れて、今日はプールに入れないと分かってみると、暑さが一層増して感じられるようになったのです。ユーモラスな一句。
暮れてゆく端居の私風ととも
高崎片岡中2年 佐々木正乃
【評】涼を求めてずっと端居を続け、夕暮れ時まで動かない「私」。夕べは夕べで涼しい風が出てきて、動けないのです。これもユーモラス。
入梅や草刈りをして日曜日
小野上中3年 唐沢 秀行
【評】梅雨入りのころから、草も急速に伸び出します。日曜日には草刈りのお手伝いをしました。生活の中の季節感豊かな句。
身長も蠅取り紙に当たる頃
小野上中3年 佐藤 克紀
【評】本当に今も蠅はえ取り紙を使っているのではないでしょう。フィクションとして、伸びた身長を滑こっけい稽に表現していると読むべきでしょう。
梅干しを干すと間もなく雨が降る
妙義中3年 吉岡由加里
【評】梅干しを作るために天日干しをしていると、すぐに雨模様の天気になってしまうのです。これも生活の中の季節感が豊かな句です。
せんぷうき教室の中のプリントとばせ
妙義中3年 渡辺 彩夏
【評】頼りない扇風機の風と、プリント学習が思うように進まないいらだちがあるのでしょう。一気に問題解決する方法を思いついたのです。
東大寺大仏の顔遠すぎる
前橋芳賀中3年 中村  歩
【評】大きな大仏の様子を「顔遠すぎる」と表現しています。大きい一方で、それゆえの遠さに気がついたところがこの句のよさです。