林桂選

2005年8月31日上毛新聞掲載


テスト中魚みたいにしずかすぎ
前橋大室小5年 奥村江理奈
【評】「魚みたいに」の比喩が新鮮。確かに魚は一言も発しない動物。水の中も静寂の世界。教室の空気も水のように重いのでしょう。
どろ田んぼぼくらが植えてみどり色
鬼石北小5年 引田 巧朗
【評】田植えをした後の満足感、誇らしさが、「どろ田んぼ」と「みどり色」の対比表現の中に感じ取れます。みどり色が広がるのが楽しみ。
せみの音緑をゆらす今日の午後
下仁田小坂小6年 森田 賢人
【評】「緑をゆらす」という誇張表現が、蝉しぐれの盛んなさまを伝えます。「今日の午後」に夏到来の感慨がこもります。
風鈴や風は空からやってくる
松井田九十九小6年 清水 那帆
【評】「風は空からやってくる」の表現力に脱帽。風鈴をゆらす風の渡り方を、大きく詩情豊かにとらえています。秀作です。
あさがおや小さいころの絵本棚
松井田九十九小6年 小板橋瑞穂
【評】アサガオが幼年を回想させる花としてとらえらえています。記憶によみがえるのは、何度も読み返した絵本を納めた棚。秀作です。
夏空やキラキラ光る法隆寺
松井田九十九小6年 加藤 和樹
【評】最も古い木造建築の法隆寺が、金閣寺のように光ることはありません。この輝きは夏の光の表現です。振り仰ぐ視線が感じられて見事。
あじさいのむらさき雨にとけている
沼田小6年 金井  力
【評】「雨にとけている」の誇張表現がいい。雨滴が凸レンズのようになって、花(がく)を拡大し、その中に色もとけ込んでいるようです。
プールからしぶきと笑いがはじけとぶ
沼田小6年 大竹 沙耶
【評】「はじけとぶ」がいい。プールの中で思い切り体を動かし、思い切り気持ちを解放させている様子が感じられます。
友達と自転車とばして風をあび
沼田小6年 生方  望
【評】友達との楽しいサイクリング。その晴れやかな気持ちが「とばして風をあび」に、こめられています。
さくらちるせつないようでおもしろい
松井田西横野小6年 徳田 賢一
【評】桜が散って行く様子は、はかない思いに誘われてせつないものです。でも、それも「おもしろい」というところが、この句のおもしろさ。
夕焼けが私の胸を焦がしてく
松井田西横野小6年 瀧澤 芳水
【評】同じような題材が多い句ではありますが、「私の胸を焦がしてく」という表現は、作者の強い思いに裏打ちされていて力があります。
ちょうちょたち子供の笑顔を配達だ
中之条中1年 山口わか子
【評】チョウを見ると表情が変わる子どもたち。それを「笑顔の配達」と表現。擬人化が、子どもとチョウの近い距離感の表現となっています。
海の声貝殻につめて持ちかえる
中之条中1年 吉田 知世
【評】旅の記念に貝殻を拾って持ち帰ったのです。その貝には「海の声」が詰まっていると考えました。もちろん、旅の思い出でもあります。
ひまわりと肩組できる背がほしい
下仁田中1年 小井土美貴
【評】「肩組できる背」がおもしろい。ヒマワリもさまざまですが、人の背丈を遙(はる)かに上回るのがイメージ。こんな高身長をどうするのでしょう。
梅雨の空俳句のアイデア降ってくる
小野上中1年 中橋 重明
【評】「降って湧(わ)いたように」というように、俳句が、時には外から自分を訪ねてくるという感覚でできることもあるのです。
扇子持ちさすがに見あきた夕日見る
中之条西中1年 桑原  栞
【評】夏の西日を「さすがに見あきた」といい、それでも「見る」という巧みさ。長い夏の夕刻のつれづれな様子が表現されています。
昼寝覚母の手伝い思い出し
高崎片岡中2年 山中 咲乃
【評】「昼寝覚」は夏の季語。昼寝から現実の世界に帰ってきて、昼寝前の記憶とつながります。その記憶が母の手伝い。視点のいい句です。
甲子園まっすぐ輝く君がいる
高崎片岡中2年 松本 奈菜
【評】意味の上では「まっすぐ」で切れるのでしょう。甲子園への真っ直ぐな思いが、「君」を輝かせているのです。
水色のえんぴつ見てる夏休み
小野上中2年 野村 翔平
【評】水色の鉛筆に涼感を得ているのでしょう。普段滅多に使うことのない水色の色鉛筆を前にするなかに、夏休み気分も漂います。
宿題のポスターに置く夏色や
小野上中2年 斉藤 千尋
【評】夏休みの宿題のポスター制作。夏の気分にふさわしく、色鮮やかな色遣いで描きます。「置く」の表現が巧み。
雨上がりせみに呼ばれて外に出る
中之条西中2年 生巣 成美
【評】雨が通り過ぎると、時を惜しむようにすぐ鳴き出すのがセミ。「せみに呼ばれて」が、雨上がりを知らせるようなセミの声をうまく表現。
ゆかたきて笑顔ではしゃぐ君が好き
妙義中2年 木村 優祈
【評】夏祭りなどで見かけた「君」の姿でしょうか。浴衣姿になることで、普段より一段と表情豊かになっている「君」に、想(おも)いは増幅されます。
水たまりふんではゆれる青い空
妙義中3年 清水 祥子
【評】水たまりに映った青空。踏めば青空が波打ち揺れます。題材は多くの友達が作るものですが、「ふんではゆれる」の表現が巧みです。
キラキラとプールを泳ぐ太陽や
小野上中3年 一場  萌
【評】夏の太陽を反射してキラキラ輝くプール。太陽がプールを泳いでいるようだと見立てています。夏のプールにあふれる光を見事に表現。
声響く体育館の影は濃く
小野上中3年 中沢 奈美
【評】季語はありませんが「影は濃く」に夏の季感があります。夏休みの学校。炎天の校庭に人影はないのに、部活の声が体育館から響きます。