林桂選

2005年9月28日上毛新聞掲載


本棚の作る影の中猫と寝る
埼玉熊谷女子高1年 入  瑞希
【評】自分の部屋と自分の姿でしょうか。自画像とでも呼ぶべき作品。「影の中」に自分を突き放して冷静に見る視線があります。
光射し空を吸い込む水たまり
埼玉熊谷女子高1年 村山 沙織
【評】水たまりを題材とする句は多いのですが、「空を吸い込む」という表現は見事です。誇張表現で水たまりの小世界に輝きを与えています。
ワイシャツに仄かに映る向日葵や
埼玉熊谷女子高1年 石原里枝子
【評】向日葵(ひまわり)の色とも言えないうような照り返しを、鋭く感得しています。油絵を描くならば、シャツに黄色の色も入れて描くことでしょう。
冷蔵庫スイカとアイスと私がいる
埼玉熊谷女子高1年 橋本 彩香
【評】最後に「私がいる」とユーモラスな落ちをつけています。ここでは冷蔵庫は涼むためのものです。類題は多いのですが、書き方が面白い。
冷蔵庫すいかの香る夏休み
埼玉熊谷女子高1年 鈴木 東春
【評】どこか夏休みののんびりした感じが漂っている句。「香る」は、実際の匂(にお)いというよりは、スイカの存在感を言っているようです。
日本一暑い場所で部活動
埼玉熊谷女子高1年 岡田瑛里加
【評】熊谷は館林と並んで、夏に最高気温を記録することの多い場所です。夏の部活の厳しさを「日本一暑い場所」に託して表現しています。
とこ夏の温度はあるが海はなし
埼玉熊谷女子高1年 飯嶋 優香
【評】この句も暑い熊谷がテーマ。気温だけなら常夏(とこなつ)並みだが、常夏のイメージに付きものの海がないのです。ただ暑いばかりなのです。
今日よりももっといい日の明日かな
埼玉熊谷女子高2年 野口 史織
【評】仕掛けも衒(てら)いもない句ですが、誰にもこんな気持ちで生きている時期があったのを、思い出させてくれます。毎日が真剣な証拠。
スタートはいつもここから風がふく
渋川青翠高2年 野寺 未鈴
【評】「ここから」とは、自分の立っている場所という意味でしょう。いつも自分の立ち位置が自分のスタート台なのです。これも真剣な句。