鈴木伸一選

2005年10月5日上毛新聞掲載


運動会風にむかってはしりぬけ
群馬国府小5年 住谷 美樹
【評】「ゴールにむかって」では当たり前ですが、「風にむかって」は、力いっぱい走った後のすがすがしさがよく伝わる、とてもいい表現。
校庭は運動会を待っている
前橋桃川小5年 塩野 綾菜
【評】運動会の前日。準備もすっかり整った校庭が、本番を今か今かと待っているようなのです。もちろん、塩野さんも同じ思いでしょう。
にごる川ぼくたち行って晴れた空
鬼石北小5年 茂木 佑太
【評】授業で神流(かんな)川へ行ったそうです。何日か前の雨で水はにごっていたけれど、空はよく晴れていました。みんなの心がけがいいからかな。
夏の朝ブランコこいでる風がいる
下仁田小坂小6年 永井 悠貴
【評】人間ではないものを人間のように描く方法を擬人(ぎじん)法と言いますが、これがとても効果的。風は、遊び相手を待っていたのでしょうか。
えんがわですずしく思う秋の夜
下仁田小坂小6年 森田 賢人
【評】風がよく通る縁側にすわって、秋のおとずれをしみじみ感じます。私の家には縁側がないので、森田君がうらやましく思えてきます。
マーチングパッと楽器の花が咲く
沼田小6年 島崎 久美
【評】いろいろな動きを交えて演奏するマーチングバンドは、とても楽しいですね。「楽器の花が咲く」で、その様子をうまく描きました。
夕やけがにあうグランド秋の風
中之条中1年 設楽 勇貴
【評】青春ドラマの一場面を見るようですが、中学生の今だからこそ、それを素直に書けるのでしょう。思い切り部活に打ち込んでください。
秋の空やさしい色にそまってる
中之条中1年 宮内 杏子
【評】夕焼けも、夏と秋とでは印象が異なります。秋の夕焼けを「やさしい色」と感じたのは、何より宮内さんの心がやさしいからでしょう。
秋の空空のわたあめ売り切れ中
中之条中1年 吉田 知世
【評】雲をわた飴(あめ)に見立てるのは常套(じょうとう)的ですが、「売り切れ中」というのは、吉田さんの新発見。真っ青な秋空が、ぱっと目に浮かびます。
梨がきた母に届いた里だより
中之条中1年 山田 礼子
【評】お母さんの実家から、ナシがたくさん届きました。おいしくいただきながら、お母さんとふるさとの話に花を咲かせたことでしょう。
宿題を忘れてしまう秋の夜
中之条中1年 金井 実紀
【評】もちろん、本当に宿題を忘れたのではないでしょう。ただ、そんなふうに思ってしまうくらい涼しくて、気持ちのいい秋の夜なのです。
電車のり夏の駅から秋の駅
吉井入野中1年 小板橋洸徳
【評】季節の移り変わりを、電車の移動になぞらえて表現。ふと気づいたら、自分のまわりがすっかり秋の雰囲気になっていたのでしょうね。
秋の空私の本だなふえていく
前橋六中2年 荒川  舞
【評】蔵書が増えてゆくというのは、うれしいものです。秋空の下、荒川さんは買ったばかりの本を大事そうに抱えているのかもしれません。
新人戦終わってしまってからっ風
前橋六中2年 原田  怜
【評】「終わってしまってからっ風」という表現は、新人戦の結果が、作者にとって不本意なものだったことを暗示しているように思えます。
秋の蝶風を追いかけ消えてゆく
高崎片岡中2年 塩野谷麻衣
【評】秋の蝶には、どこかさびしく、はかないイメージがありますが、それを素直に表現。特に「風をおいかけ」の余韻が、心に残ります。
秋の風枯れたひまわり静かにゆらす
前橋大胡中2年 大沢さとみ
【評】風に揺れる枯れたヒマワリはさびしげな印象である半面、季節のうつろいの中、どこか安らいだ雰囲気も感じられるように思われます。
夏祭りみんなと行けば心に残る
前橋大胡中2年 富岡 瑞穂
【評】友だちと一緒であることが、祭りの楽しさを何倍にもふくらませてくれるのです。だからこそ、その思い出も長く心に残るのでしょう。
秋らしい空気をすって今日始まる
小野上中2年 宮 ゆりか
【評】秋になると空気にも、夏にはないすがすがしさが感じられてきます。気持ちも晴れ晴れとして、今日一日が楽しく過ごせそうですね。
学校のチャイムが告げし夏の終わり
小野上中2年 斉藤 千尋
【評】学校生活の中から、季節の移り変わりをとらえたのがいい。チャイムの響きも、ゆく夏を惜しんで、どこかさびしそうに聞こえます。
秋風を背中で感じる部活かな
小野上中2年 佐藤 大樹
【評】吹き過ぎてゆく風が、どことなくひんやりしていたのです。特に、それを背中で感じたというのが、いかにも秋風らしいと思います。
ライ麦やつぶの数だけ秋の雲
小野上中3年 朝比奈明子
【評】ライ麦は、黒パンの原料。その穂についた粒のようにたくさんの小さな雲が、ふわりと空に浮かんでいます。何ともさわやかな秋の日。
雨音に秋が迷子の木曜日
小野上中3年 野村 成美
【評】台風の影響で雨が激しいときなどを思い浮かべます。そんなときは秋のさわやかさも、迷子のようにどこかへ行ってしまいますものね。
あざやかな気持ちを歌う小鳥かな
小野上中3年 飯塚 仁美
【評】秋のそう快感を体現するかのような、小鳥たちの声。聞く者の気持ちも、自然と新鮮になってきます。伸びやかな感性が魅力的な作品。
本読めばおちばがそっと落ちてくる
妙義中2年 田辺沙緒里
【評】一枚の落ち葉が、作者の心に、静かに波紋を広げたような感じがします。読書という日常的な行為が、たいへん詩的に描かれています。
稲の穂を風がしずかになでている
妙義中2年 茂木  弥
【評】黄金色に実った稲穂の上を、静かに秋風が吹いてゆきます。「なでている」というとらえ方に、作者のやさしい心根が感じられます。
カブト虫捕まったのにいばってる
妙義中3年 島ノ江翔太
【評】捕まえられてもなお、角を振りかざし、ふてぶてしい様子のカブトムシを、ユーモラスで、ちょっとシニカルな視点から描写しました。