鈴木伸一選

2005年11月2日上毛新聞掲載


リズムよくあおぞらのしたいねをかる
群馬国府小5年 石綿 優彦
【評】授業で育ててきたイネが、いよいよ刈り入れの時季となりました。「リズムよく」というところに、うれしい気持ちがよく出ています。
しんこきゅうつめたい空気むねにしみる
前橋桃川小5年 高柳亜理沙
【評】最近はだいぶ涼しくなって、空気もすうっと胸にしみ込んでくる感じです。からだの内側からきれいになってゆくような気もしますね。
雨の日ももみじは静かに色変える
前橋大室小6年 山本瑠璃子
【評】人間の勝手な思惑(おもわく)とはかかわりなく、季節は静かに、でも確実に進んでゆきます。そんな自然のありようを見つめた、大人顔負けの句。
赤とんぼ夕やけ目指して一直線
前橋大室小6年 森田 悠介
【評】夕焼け目指して飛んでゆく赤トンボに、森田君の姿がダブります。「一直線」というところに、ひたむきさが素直に出ているのがいい。
せみの声アイスがだんだんとけていく
前橋山王小6年 茂木 優太
【評】実際は暑さのせいですが、それ以上に、じりじりと焼けるかのようなセミの声で、アイスがとけてゆくみたいに感じられるのでしょう。
そのかどを曲がるとかおるキンモクセイ
前橋山王小6年 栗原わかな
【評】いつも通る道なのでしょう。だから、角を曲がるとキンモクセイのいいにおいがしてくることも、あらかじめ分かっているのですね。
まるまって大福のようこたつのねこ
前橋山王小6年 岡田 結花
【評】こたつの中で丸まっている白ネコを大福もちに見立てた、楽しい俳句。寝ているネコには悪いけど、思わずさわってみたくなりますね。
白球を追いつつ聞こえる虫の声
前橋山王小6年 山口 祥生
【評】野球で外野の守備についていたのでしょうか。飛んできたボールを追っているさなかも、草むらでは虫たちが盛んに鳴いているのです。
ハードルを飛ぶ時感じる秋の風
前橋山王小6年 加島  葵
【評】ハードルを飛び越すときって、気持ちいいですね。「ハードルをとびこす瞬間ヒョウになる」(小6佐藤拓也)という句もありますよ。
木の下で休んでいると小鳥来る
妙義中1年 小林 拓実
【評】すぐそばまで小鳥が近寄ってきたのです。小鳥には、作者が自然と心を通わせることのできる人だと分かっていたのかもしれません。
秋の風私といっしょに読書する
中之条中1年 桑原 成美
【評】よく晴れた秋のある日。窓辺で、あるいは屋外で、心地よい風を感じながら本を読んでいるのでしょう。まさしく「読書の秋」ですね。
落ち葉散るそれが今日の思い出だ
沼田西中2年 大竹 彩香
【評】何も特別な出来事だけが記憶に残るわけではありません。心さえ豊かなら、日常の中にも大切な思い出の種はきっと見つかるはずです。
秋の雲さわさわうかぶ今日の朝
六合中2年 山本美津希
【評】高い青空に浮かんだ秋の雲。その軽やかな印象を、「さわさわ」という擬音でうまく表現。今日もいい日になりそうな予感がしますね。
鼻歌が天まで届く秋の朝
小野上中2年 飯塚 泰志
【評】ふと口ずさんだ鼻歌でさえ、澄んだ空をどこまでも昇ってゆきそうに思える秋の朝。何とも気持ちのいい俳句で、素直に共感できます。
本棚のすき間に秋が入り込む
小野上中2年 宮 ゆりか
【評】本を抜き取ったあとのすき間に、秋の気配(けはい)が忍び込んだというのです。ちょっと感傷的なのは、本の内容がそうだったからでしょうか。
カルメ焼きこげ臭さ残る秋の空
小野上中2年 野村 翔平
【評】カルメ焼きを作ると、ざらめの独特なにおいがします。秋祭りか運動会の情景でしょうが、ある種の懐かしさと共に印象に残る句です。
パソコンの画面の上をすべる秋
小野上中3年 朝比奈明子
【評】私も始終パソコンを使いますが、そこに季節感を覚えたことはありません。その点、朝比奈さんはしっかり季節感をとらえていて見事。
大歓声間をぬって秋の風
前橋芳賀中3年 松井 実咲
【評】体育祭の情景でしょう。白熱した競技が終わり、次の競技が始まるまでの間はしばらく静かで、そこを秋風が吹き抜けてゆくのです。