鈴木伸一選

2005年11月16日上毛新聞掲載


読書の秋長い本だとねむくなる
前橋大室小5年 神沢 美穂
【評】自分のことをユーモラスに描きました。でも、これから神沢さんが成長してゆくにつれて、長い本もどんどん読めるようになりますよ。
帰り道もう夕やけが見えている
松井田西横野小6年 桑原 幸佑
【評】秋の夕焼けでしょう。すっかり日が短くなった秋だからこそ、「もう」という言葉に込められた驚きが、実感として伝わるわけですね。
手の中に秋ひとりじめ妙義山
松井田西横野小6年 桑原 孝朗
【評】いろんな木の実などを、たくさん拾い集めたのでしょうね。そのうれしさが、「秋ひとりじめ」という表現になったのだと思います。
夕がたの校舎の色はオレンジ色
松井田西横野小6年 鈴木 晴香
【評】校舎が夕日に照らされ、美しいオレンジ色に染まります。見慣れた校舎が、何だか違う雰囲気です。
熊鈴をつけて歩いた秋の道
下仁田小坂小6年 新井  純
【評】クマ除(よ)けの鈴を鳴らしながら、秋の彩り豊かな山道を歩いたのです。ちょっとスリルのある、思い出深い遠足になったことでしょう。
運動会最後の鼓笛よかったよ
鬼石北小6年 野口 李紗
【評】6年生には、運動会が鼓笛演奏の最後の晴れ舞台。「よかったよ」に、満足感が素直に出ています。
目の前の秋の夕やけとどかない
中之条中1年 綿貫 仁志
【評】目の前に大きく広がる秋の夕焼け。手を伸ばせば届きそうに見えながら、どうしても届くことはできません。それが、胸に痛いのです。
秋の朝僕がいるのは霧の中
中之条中1年 青蛛@佑弥
【評】よほど深い霧だったようです。登校時の情景かと思いますが、作者には、まるで別世界に迷い込んだかのように感じられたのでしょう。
朝の風霧のスカーフ連れてくる
中之条中1年 高平 彰子
【評】風の流れによって動いてゆく霧を、やわらかなスカーフに見立てました。霧という自然現象を、抒情(じょじょう)的なまなざしでとらえたのがいい。
秋の風さむいうらにわとおりすぎる
中之条中1年 本多 祐子
【評】裏庭というのは、どこか寒々として、さびしい感じがするものです。そこを通り過ぎて行ったのは秋風でしょうか、作者でしょうか。
秋の空みんなにとどけぼくの声
中之条中1年 五藤  廣
【評】作者が本当に届けたいのは実際の声ではなく、むしろ心の中の熱い思いなのではないでしょうか。大丈夫、きっとみんなに届きますよ。
木がゆれて風がふいてる秋の朝
六合中1年 本多  文
【評】風が吹いて木が揺れる、では常識的。本多さんは逆に、揺れる木を見て、吹いている風を発見したのです。その発想の転換がよかった。
席がえで紅葉見える窓側へ
六合中2年 山本美津希
【評】窓側の席になり、美しい紅葉がよく見えるのです。休み時間になったら、たっぷりと眺めましょう。
太陽が枯れ葉に光る月曜日
小野上中2年 野村  楓
【評】「麗(うるわ)しき春の七曜またはじまる」(山口誓子)と季節は違っても、明るく前向きな意志など、野村さん作も共通する点があるようです。
ストーブのコードにつまずく部屋の中
小野上中2年 丸山  唯
【評】危険なので注意しなければいけませんが、一方、こうしたことからも冬の到来というのは実感されるんだなあ、と思ったりもします。
入り込む制服の袖秋の風
高崎片岡中2年 提箸  太
【評】そで口あたりに、ひやりとした秋風を感じた作者。季節感を「制服」によってとらえたところに中学生らしさが出ていて、好印象です。
冬の朝初霜おりる風静か
沼田西中2年 藤塚 崇文
【評】霜は、よく晴れて風のない明け方に多くできます。静まり返った大地と空が目に浮かび、たいへん清浄な気持ちになってくる作品です。
柿の色私の遺伝子さわぎだす
妙義中3年 山田 早織
【評】家族揃って、カキが大好物なのでしょう。色づいた実を見ると思わず食べたくなるのも、どうやら遺伝子のなせる業(わざ)だというわけです。
すきとおる夜につつまれ秋響く
妙義中3年 山田あゆみ
【評】秋という季節に特有の空気の透明感を、繊細な感性でとらえました。「響く」も大音響ではなく、身体にすうっとしみ込んでくる感じ。
肌寒し眠る仔ねこをそっと抱く
下仁田中3年 岩井 友美
【評】「肌寒し」は事実であると共に、心理的なものでもありそうです。晩秋の物悲しさを感じた作者の心が、ぬくもりを求めたのでしょう。