鈴木伸一選

2005年11月30日上毛新聞掲載


お母さんゴミ出しめがねがくもってる
前橋桃川小5年 田部 竜憧
【評】寒い朝、ゴミを出してきたお母さんの眼鏡が、家に入ると同時に曇ってしまいました。がんばるお母さんに、田部君も感謝しなくちゃ。
ブランコに乗るといい風やってくる
前橋桃川小5年 清水 美沙
【評】ブランコをこげばこぐほど、体中に風を感じますね。それはブランコでしか味わうことのできない、とても気持ちのいい風なのです。
秋の空みんなキラキラいねをかる
鬼石北小5年 飯塚久瑠美
【評】学校で育ててきたイネが、いよいよ刈り入れとなりました。晴れた秋空の下、金色のイネもみんなの心も、キラキラかがやいています。
大空に大仏の顔がうかんでる
榛東南小6年 信沢 友菜
【評】鎌倉の大仏は、高さが約十一メートルあります。見上げたら、空を背景におだやかな顔が浮かんでいるように感じられたのでしょうね。
大仏の手の中あそぶあかとんぼ
榛東南小6年 胡麻鶴 涼
【評】お釈迦様の手の中を飛び回ったのは孫悟空。こちらの赤トンボは大仏のやさしいまなざしに見守られ、のんびり遊んでいるような感じ。
わたり鳥風と仲良くやって来た
榛東南小6年 横沢 早季
【評】「風と仲良く」に、はるばる旅して来た渡り鳥に対する、横沢さんのやさしい気持ちを感じます。ゆっくりと羽を休めてほしいですね。
赤とんぼ雲のうえにはいけないよ
下仁田小坂小6年 八重樫拓也
【評】現実はこの句の通りだけど、その一方、雲の上にまで飛んで行こうとする赤トンボの物語を想像してみるのも、なかなか楽しいですよ。
秋晴れの大空めざす大いちょう
藤岡一小6年 太田れもん
【評】修学旅行先の鎌倉での俳句。鶴岡八幡宮の大イチョウはさまざまな歴史を秘め、今も秋晴れの空に向かって、すっくと立っています。
大仏もきっとすずしい秋の風
藤岡一小6年 小倉  光
【評】鎌倉の大仏は外に座っているので、暑さ寒さをじかに感じて大変そう。でも、この句では秋風の涼しさに、ほっとした表情に見えます。
中之条中1年 小渕 結香秋の道映画にでそうないい風景
【評】私は大の映画ファンなので、この句を見た途端、好きな作品のワンシーンがいくつも浮かんできました。小渕さんなら、どんな映画?
きりの中犬と一緒に走りぬける
中之条中1年 福島 弘樹
【評】霧の中というのは神秘的である半面、ちょっと不安を感じたりもします。「走りぬける」には、そんな気分も込められていそうです。
ゆきんこが教えてくれた遊び場所
中之条中1年 山田晏寿美
【評】宮沢賢治の童話を思わせるような夢のある作品。「遊び場所」も現実か非現実か不分明で、かえってそれが読者の想像力を刺激します。
秋の道銀色の風吹いている
吉井入野中1年 篠崎 春奈
【評】銀色のススキの穂などがぱっと思い浮かぶため、「銀色の風」という詩的なフレーズも、感覚的にすんなりと了解することができます。
お手玉が空中に舞う秋の空
小野上中2年 宮 ゆりか
【評】たいへん印象鮮明な作品。ただ「空中」とあるので、「秋の空」の「空」は不要。「秋の昼」「秋の風」など、いろいろ考えられます。
紅葉の色始発から終点まで
小野上中2年 野村 健太
【評】木の葉が薄紅葉から真っ赤になり、最後は枯れて散ってゆく。その一部始終を、しっかり見ていたのでしょう。観察は俳句の要諦(ようてい)です。
クッションとはずみが違う落葉かな
小野上中2年 野村 詩織
【評】掻き集めた落ち葉の上に座ってみます。本物のクッションより柔らかく、しかも弾力があって、たいそう気持ちよかったことでしょう。
夜空見て火星を探す子猫かな
小野上中3年 長久保徴子
【評】ちょうど今、火星が地球に接近しています。夕方、東の空に赤く輝いているのを、子ネコと一緒に長久保さんも見たことでしょうね。
新聞が冬の寒さを書いてくる
小野上中3年 佐藤 絵理
【評】新聞の見出しに「この冬一番の寒さ」といった活字が躍り出すと、冬も本番だなあ、と思われます。季節感のとらえ方がシャープです。
あくびして食べちゃいそうだよ秋の山
六合中2年 山本美津希
【評】彩り豊かな秋の山は、離れた所から眺めると、なるほどおいしそうな食べ物に見えなくもありません。作者の茶目っ気が楽しいですね。
しみじみと初霜降りた朝景色
六合中2年 山口 清華
【評】初霜が降りた朝。空気は冷たいけれど、静かで、どこかすがすがしい景色が眼前に広がっています。冬の到来を、しみじみ感じますね。
夕焼けで真っ赤に染まった美術室
六合中3年 篠原 美咲
【評】夕焼けに美しく染まった美術室それ自体が、一つの芸術作品であるかのように思われます。学校生活の中に「美」を見出したのがいい。
実物と絵が別ものの紅葉かな
妙義中3年 渡辺 彩夏
【評】紅葉の美しさを絵に写し取るというのは、なかなか大変なこと。思い通りに描けないで、もやもやとした気分が、よく伝わってきます。
炬燵出し猫と一緒に夢を見る
妙義中3年 吉田 春佳
【評】こたつに入って夢を見る。そんな幸せな時間を、ネコと分かち合いたいという作者。ネコは、作者にとってかけがえのない友なのです。