鈴木伸一選

2005年12月14日上毛新聞掲載


マフラーで隠した顔と恋心
吾妻高1年 綿貫  南
【評】相手への好意は、自然と顔に出てしまうものです。それと悟られないようにマフラーで隠そうという作者の純情に、ほろりとしました。
さくさくと呼びかける霜知らんぷり
吾妻高1年 山本 梨江
【評】サクサクという音を立て、霜が作者に呼びかけています。作者は、そ知らぬふりですが、もちろん心の中でちゃんと応えているのです。
もみじ散る時間が止まる森の朝
吾妻高3年 沢入 麻里
【評】音もなく散り続ける紅葉。森という場所柄、雑木(ぞうき)紅葉かも知れません。またその方が、この句の深々とした気息にふさわしいでしょ?う。
鳥たちが春に向かって飛んでいく
富岡実業高2年 小林 真基
【評】「春」は、季節としてのそれであると同時に、夢や希望の比喩(ひゆ)と読むことも可能でしょう。正攻法の素直な詠み方に、好感が持てます。
静かな夜君を待ってる神無月
富岡実業高2年 清水 裕太
【評】陰暦十月は、八百万(やおよろず)の神が出雲大社に集い、他の地には不在になるとされています。下五の伝統性と上五中七の現代性の配合が面白い。
こうもりの背を追いかけてあかね雲
共愛学園高3年 金子 寿美
【評】夏の夕暮れ。あかね色の空を、コウモリが盛んに飛び回っています。作者はしばらくの間、その敏捷(びんしょう)な動きに見とれていたのでしょう。