林桂選

2005年12月7日上毛新聞掲載


雨の日の夜の時間は森の中
前橋桃川小5年  塩野 綾菜
【評】雨の降る夜の時間感覚を「森の中」ととらえました。不思議な時間の進み方と、独立した空間の感じをうまくとらえています。
登校班集合場所に落ち葉ふる
前橋桃川小5年  高柳亜理沙
【評】登校班の集合場所には木があります。その木が集合の目標になっているのかもしれません。その木に巡る季節。「落ち葉ふる」がいい。
三日月をながめてはずむ家族の輪
群馬国府小5年  森山美沙紀
【評】「家族の和」ではなくて、「輪」。それこそ家族が輪になって月を見上げているのです。輪の動きが、家族の気持ちの表現になります。
おそろいにしてもあいぞめ形がちがう
群馬国府小5年 原田 真希
【評】仲のよい友達とおそろいになるように絞りをかけて染めたのに、できあがってみると違っています。藍(あい)染めのおもしさと難しさ。
登下校ポケットの中あったかい
群馬国府小5年  石綿 優彦
【評】ポケットの中が暖かいということは、外は寒いということになります。もう少し寒くなれば、手袋の登場になるのでしょう。
勉強をしている時に葉が落ちる
群馬国府小6年  上原茉里亜
【評】葉が落ちるのを見ているなら、勉強に行き詰まっていそう。「葉が落ちる」が想像の世界のものならば、勉強ははかどっていそう。
より道で秋の並木を眺めたり
群馬国府小6年 斉藤 健太
【評】この並木は銀杏(いちょう)でしょうか。「寄り道で」がおもしろい。遠回りでも、美しい秋の並木を選んで下校するのです。
江ノ島の景色は全部青い海
藤岡一小6年  山口 美穂
【評】「全部青い海」という誇張表現が生きています。これで何が印象に残ったかが描けています。どの景色にも海が入っているのです。
秋風と大いちょうがしゃべってる
藤岡一小6年  町田 奈緒
【評】大銀杏は、鎌倉八幡宮のものでしょう。風に揺れる銀杏のざわめきが、会話を思わせます。由緒のある銀杏。どんな話なのでしょう。
江ノ電は銀杏トンネル入ります
藤岡一小6年  黒沢 祐佳
【評】江ノ電は、びっくりするような近さの家々をぬって走っています。「銀杏トンネル入ります」も、江ノ電ならではの表現。
秋風にあたって笑うよ大仏が
藤岡一小6年  笠本 玲樹
【評】「笑うよ」がいい。大仏に読み取った表情は、読み取った人の気持ちでもあります。大仏に向かう笠本さんの気持ちが出ているのです。
紅色に染まった木々はしゃべってる
下仁田小坂小6年  柳沢 大祐
【評】紅葉の色彩が持つ華やぎを、「しゃべってる」と表現。秋は、木々が一番おしゃべりな季節なのかもしれません。
秋の空みんなと走るの最後かな
沼田小6年 高野 恵美
【評】運動会か持久走大会でしょう。六年生の行事は、学校最後の行事ばかり。どの行事をしても、いろいろな思いが去来します。
江の島に秋風ふいて日が昇る
榛東南小6年  臼井ひとみ
【評】秋風が吹くのも、日が昇るのも、江の島という場所を得て、改めて新鮮な感覚でとらえることができるようになっています。
山の色なぜか最近明るいな
前橋芳賀中1年 笹川沙也香
【評】色彩に着目するのではなく、「明るいな」と明度に着目して山を表現するのは斬新。確かに夏より秋の山の方が明るいでしょう。
風がふき落ち葉がまう空すんでいる
中之条中1年  本多 祐子
【評】一句に一動詞で整理するとよいと言われます。ただこの句のように「ふく」「まう」「すむ」が一連の世界の変化を表すこととなれば別。
かまきりもみんなと一緒に稲を刈る
中之条1年 唐沢 由弥
【評】稲刈りの時期に、カマキリを目にすることが多いのは確か。「蟷螂(とうろう)の斧」も稲刈りができそうな感じがしますね。
自転車のうしろにトンボが座ってる
妙義中2年 並木麻由美
【評】「座ってる」がいい。止まったところが後部座席であったために、後ろに乗せた友だちのような感覚が生まれている言葉だからです。
カーテンが俳句の材料隠してる
小野上中2年 飯塚 泰志
【評】外の景色を「俳句の素材」としたところがみそ。病床の子規は当時珍しいガラス戸を虚子に贈られ、外の世界を俳句に詠んだのでした。
台所静まりかえり水の音
小野上中2年  野村  楓
【評】「水の音」が効果的。静寂をより強調するような水の小さな音。それはいかにも台所の音でもあります。夜の無人の台所でしょう。
消しゴムの角も丸まる寒さかな
小野上中2年  野村 翔平
【評】角の丸まった消しゴムが、寒さで丸まった姿に見えるというのです。ユーモラスな見方で、寒さを表現しています。
林檎むく皮がつながる夜長かな
小野上中3年 中沢 奈美
【評】「林檎(りんご)」「夜長」と季重なりですが、ゆったりとした情感を演出しています。「つながる」にも充足感が感じられます。
青空に寒さつき刺す外へ行く
六合中3年 山本  栞
【評】晴れ上がった朝の寒さ。「突き刺す」がよく表現しています。それゆえに「外に行く」ことは辛く、覚悟が必要です。
美しき初冬の夜の星々よ
六合中3年 山本 信介
【評】俳句で「美しき」と説明すると、読者のイメージが広がりません。しかし、この句はそれでリズムを作ることに成功した希有な例です。
空の雲見上げていると咳ひとつ
妙義中3年  柳世  葵
【評】「咳(せき)ひとつ」を、「作者」のものとするか、他の人のものとするかで、句の解釈が違ってきます。後者の解釈の方がドラマ性は出ます。