林桂選

2005年12月21日上毛新聞掲載


雨の日はやねのタイコがなっている
前橋桃川小5年 下田 真実
【評】雨で屋根が音を出すという俳句は、多くの友だちが作っています。でも「やねのタイコ」とまで表現できる人はなかなかいません。
風吹くといろんな草が声くらべ
前橋桃川小5年 鯉渕 優介
【評】風に吹かれる草木。生まれる音はさまざまです。それを「声くらべ」と言っています。風はそれをいろいろなところに届ける係でしょうか。
富士重工火花が散っておどってる
群馬国府小5年 大山 尚子
【評】自動車工場の社会科見学でしょう。溶接の火花を「散っておどってる」と表現するなかに、大山さんの感動が出ています。
放課後のチャイムが私にまたあした
群馬大附小5年 福島沙也加
【評】下校時を知らせる学校のチャイムでしょう。「またあした」と、学校が言ってくれているように聞こえます。
葉が落ちて雪が降ったら中学生
下仁田小坂小6年 永井 悠貴
【評】中学生になるまでの時間をカウントダウンで待つ時期になりました。落ち葉に雪と季節感を使ってのカウントダウンが情感を深めます。
赤とんぼ江ノ電追いかけ飛んでいる
榛東南小6年 池田 翔汰
【評】江ノ電のどこかのどかな雰囲気を、「赤とんぼ」「追いかけ飛んでいる」と、赤トンボとの関係で見事に表現しています。
蟋蟀(こおろぎ)や入場無料の演奏会
吉井入野中1年 八木 颯平
【評】秋の虫たちの声。それを「演奏会」に例えるのは珍しくありません。でも「入場無料」とまで考える人は多くありません。
ユキンコが風に乗って雪になる
中之条中1年 斉藤 真衣
【評】ユキンコは雪虫(綿虫)の方言。雪の降り出す季節に現れます。風に漂う雪虫。それがやがて本物の雪に変わりそうな天候なのです。
ゆきんこがキラキラ舞う空深き青
中之条中1年 平形友里香
【評】こちらの雪虫は、晴れわたった日に飛んでいます。「深き青」は、晴れわたったゆえの厳しい冷え込みを感じさせます。
落ちきった木の葉を燃やす父一人
中之条中1年 富沢 美咲
【評】落葉しきった木の枝々の寂しい様子が浮かび、そこにどこか寂しそうな様子で落ち葉焚(た)きをする父の姿が重なります。「一人」が効果的。
冬の空澄んだ空気が星磨く
六合中2年  黒岩 剣大
【評】冬の星の輝きは澄んだ空気の賜物(たまもの)。それを空気が星を磨いたのだと詩的に表現。類想がない訳ではないが、よい感性は作者のものです。
冬の午後日だまり探して本を読み
妙義中2年 小林 悠香
【評】「読み」は「読む」の方がよいでしょう。「切れ」は俳句の大切な要素。ほんの少し暖かいところ、そこが読書に集中できる場所なのです。
ストーブのぬくもり感じる文ぼう具
小野上中2年 丸山  唯
【評】ストーブの近くに置かれたままの鉛筆や消しゴムやノートが、暖かくなっていたのです。暖かい部屋の様子を文房具で描いています。
ストーブに兄の手母の手自分の手
小野上中2年 野村 克貴
【評】ストーブにかざされた家族の手。季節の寒さと共に、家族のぬくもりを伝える句になっています。兄、母、自分と畳みかけた表現が効果的。
手のひらにのった落ち葉があたたかく
小野上中3年 小野有香里
【評】「あたたかく」がいい。乾ききった落ち葉の質感をうまく表現しています。それも手のひらに載せることで獲得したものです。
教室の日なたに集まる足の数
小野上中3年 佐藤 絵理
【評】頭数といいますが、足の数で人の数を認識するという斬新な視点がこの句のみそ。頭数の倍になる訳で、賑(にぎ)わいを伝えることに成功。
祖父宅の秋が深まる土壁や
小野上中3年 中沢 奈美
【評】今時珍しくなった土壁を持つ祖父の家。そしてそこに土壁ゆえの季節の反映を感じ取っているのです。晩秋と土壁はよく似合います。
いつの間にポケットにある冷たい手
六合中3年 本多 知紀
【評】気が付くとポケットに入れている冷たくなった手。自分の無意識の行動の中に、厳しい寒さを感じ取っています。
昼休み落ち葉が私をあせらせる
下仁田中3年 小金沢みずほ
【評】残り少ない中学生生活、間近に迫った受験。それを落ち葉の様子に悟ってしまったのです。落ち葉はなぜか人の心を急かせます。
制服が歩いているね一年生
前橋桂萱中3年 木村  栞
【評】「制服が歩いている」とは、まだ着こなしきれていない様子の表現。始まったばかりの中学生活に緊張している一年生の姿です。