林桂選

2006年2月15日上毛新聞掲載


稲刈りは田んぼの散ぱつ丸ぼうず
前橋桃川小5年 武井 美久
【評】確かに散髪。どの田んぼの髪形もひとつで丸坊主です。刈田はどこか寂しい感じがするのに、武井さんの田んぼは気持ちよさそうです。
おんぷがねそらをとんでくがっしょうだ
前橋桃川小5年  関  綾香
【評】合唱の高らかなみんなの声。「おんぷがそらをとんでく」は、言い得て妙。どこかマンガの一場面のような表現でもあります。
雪ふればコンコンきつねあらわれた
前橋桃川小5年  青木 詩織
【評】手袋を買いに来た子ギツネの童話を踏まえています。「あらわれる」でなく「あらわれた」。想像の世界では現実になっているのです。
お年玉制服代へと変わってく
下仁田小坂小6年  永井 悠貴
【評】春には中学へ進学。お年玉は制服を作るために、「お母さん貯金」になったのでしょう。でも、大切な制服になることでしょう。
冬の空星の中から雪がふる
榛東南小6年 内田 菜月
【評】「星の中から」がうまい。快晴の夜空。風が運んできた風花でしょうか。闇から急に現れる雪は、まさにこんな感じです。
寒がって新聞とりいく自分いる
榛東南小6年 宿原 悠生
【評】新聞を取るのが、宿原くんの仕事でしょうか。冬の寒いときも出て行かなければなりません。自分を見る眼の「自分いる」がおもしろい。
神様はさいせん箱がお年玉
藤岡一小6年  諏訪 達彦
【評】確かにおさい銭は、神様へのお年玉と言えそうです。ポチ袋と違う、大きなさい銭箱をうらやましい気分になっていそうです。
冬の空ドーンと重たい雲のかげ
前橋大室小6年 佐藤 陽一
【評】「ドーンと重たい」の誇張表現がおもしろい。空をおおう雪雲の重たい感じは、このくらい強く言ってもいいくらいに思えます。
飛行機の雲が一筋冬の空
吉井入野中1年 三木 啓至
【評】飛行機雲が切る空。その表情も季節のよって随分違って見えることでしょう。「冬の空」に入った一筋は、厳しい表情に思えます。
白い息駆けだす友の先を行く
下仁田中1年 神戸詩央織
【評】白い息をはきながら走しりだす友だち。でも、白い息はいつもその前にあります。白い息は追い越せないのです。視点がおもしろい。
初日の出今年の街が光りだす
小野上中1年  中橋 重明
【評】「光りだす」のは、初日を受けてに違いありませんが、新年の新たな思いに輝いてもいるのです。「今年の街が」の表現の巧みさ。
テスト中吹雪にゆれる針葉樹
小野上中1年 小野 敦也
【評】揺れるのは針葉樹だけでなく、作者の心も一緒でしょう。テスト中に、針葉樹に目が向き、思いが向いているのですから。
雪道に足あとつけてまた明日
中之条中1年 平形友里香
【評】雪道での別れの一場面でしょう。雪道に足跡を残しながら、別れの言葉を交わします。「足あと」に今日一日が重なっています。
垂れさがる氷柱はまるで鷹の爪
中之条中1年 田中 峻平
【評】色は随分違いますが、形は確かに似ています。色が違うことで誰も気が付かなかった「類似」を、見つけたのがこの句の手柄です。
弟は雪を家に持ってくる
中之条中1年  小野李旺馬
【評】まだ幼い弟さんなのでしょうか。雪遊びの雪を持ったまま、家に入ってきたのです。いくら遊んでも、雪と遊び足りない思いの弟さん。
雪が降り姉はねこで僕は犬
中之条中1年 吉田 勝平
【評】童謡の歌詞を踏まえての作品です。寒がりのお姉さん。雪がうれしい作者。「ねこ」「犬」の表現がほほ笑ましい。
初電話受話器の向こうに元気あり
高崎片岡中1年 佐々木正乃
【評】「元気あり」がうまい。初電話した友達のはつらつとした弾む声。声から元気が伝わってくるのです。一番うれしい新年のあいさつでしょう。
左義長の炎と燃える青い空
高崎片岡中2年  笹口 和秀
【評】「炎と」「燃える」のですから、「青い空」も燃えているのです。左義長の大きな炎を表現する誇張としてスケールが大きい作品です。
書き初めの筆に伝わるおおあくび
高崎片岡中2年  酒本 典明
【評】書き初めとしてはお行儀が悪いのですが、句としてはユーモラス。あくびの証拠が墨跡の乱れとなって残ってしまうのです。
麦の芽と一緒に私は伸びていく
高崎片岡中2年  茂木 瑞葵
【評】寒い季節を選んで伸びようとする麦の芽。その芽に自分を重ねて見ています。力強い書き方と相まって、強い決意を感じさせます。
校舎から校舎へ渡り走り出す
小野上中2年 野村 恵子
【評】幾棟かある校舎を移動して授業を受けているのでしょう。「走り出す」のは始業の時間が迫っているのか元気ゆえか、どちらかでしょう。
日脚伸び春先のことを考える
小野上中2年 吉沢 朋和
【評】日が短いうちは春を身近に思うことはないのに、日脚が伸びてくることで、春を思う気持ちが生まれてくるのです。気持ちの機微。
ストーブに集まる手には単語帳
小野上中3年  佐藤 加奈
【評】受験を間近にした級友たち。ストーブに集まる休み時間も勉強です。緊迫した空気が教室に満ち、休み時間も静かそうです。
燃えさかる影が集まるどんど焼き
小野上中3年 朝比奈明子
【評】「燃えさかる影が集まる」がうまい。炎も大きくなると影を持ちます。どんど焼きの火の大きさを、これで見事に表現しています。
試験前灰色の空見ないふり
小野上中3年 佐藤 未菜
【評】「見ないふり」ですから実際は見てしまっているのです。でも、試験前の思いが、心雲させる空を避けたいとも感じたのです。
冬休みやりたい事をやらぬまま
妙義中3年 吉岡由加里
【評】「やれぬまま」ではなく「やらぬまま」。本当にやる気になればできたのにという後悔の思いがあるそうです。
寒椿紅白そろって縁起よし
妙義中3年  清水 祥子
【評】偶然、白椿(つばき)と紅椿を見たのでしょう。それが「縁起よし」の思いにつながってゆく思考回路がゆかい。受験間近も影響しているでしょう。