鈴木伸一選

2006年3月22日上毛新聞掲載


 中之条中1年 金井 実紀誰もいない静かな道に春が来た
   若葉の部    
【評】自然を見つめるおだやかなまなざしに、読み手の心も癒やされます。春到来の喜びが、波紋のように心に広がってくるのを感じます。
     中之条中1年 蟻川 千恵グラウンド春が近づき明るいな
【評】実際に日差しが明るくなったということもあるでしょうが、同時に、春の予感に弾む作者の心がとらえた明るさでもあったようです。
     中之条中1年 山田 礼子飛んでいるヒバリは空の作曲家
【評】ハイドンに「ひばり」という題名の弦楽四重奏曲がありますが、実際の鳴き声も、名曲に負けないくらいの美しさを持っていますね。
     中之条中1年 割田 涼太春の風スキップしながらやってきた
【評】軽やかに吹く春風には、なるほど「スキップ」という言葉がぴったりです。この句を読んで、私の足どりも自ずと軽やかになりました。
     中之条中1年 金子 瑠実青い空雲たち今日は定休日
【評】雲一つない青空が、ぱっと目に浮かんできます。「定休日」という言葉も効果的です。ただ、季節をはっきり書いた方がよかったかも。
   高崎群馬南中2年 間  英梨冬の夢瞳に写りし雪の華
【評】「華」という文字は、華麗な美しさを感じさせると共に、たちどころに消え去ってしまう夢のごときはかなさも漂わせているようです。
   高崎群馬南中2年 今井  望菓子売場ピンクがいっぱい春の味
【評】視覚と味覚の両方で、春を満喫している今井さん。いかにも春らしい楽しげな気分にあふれた作品で、素直に共感することができます。
   渋川小野上中1年 小野 敦也二度寝する春の日照ってる部屋の中
【評】おだやかな春の日差しが部屋に満ちているのを確認し、あらためて眠るのです。安心しきったような作者の顔が、目に浮かぶようです。
   渋川小野上中2年 佐藤 大樹卒業式大きくうつる雲の影
【評】三年生たちと別れるというのは、やはりさびしいものです。雲の影が大きく感じられるのも、そうしたさびしさのせいなのでしょう。
   渋川小野上中2年 飯塚 泰志シャーペンを握れば春のあたたかさ
【評】中学生にとって特に身近な文房具を通して、春の季節感をとらえたところがいい。気持ちもなごみ、学習もはかどるに違いありません。
   渋川小野上中2年 斉藤 千尋制服の袖をめくって春を呼ぶ
【評】全体に作者の伸びやかな感性がうかがえ、好印象です。特に、「春を待つ」ではなく「呼ぶ」というところが、若々しく能動的でいい。
   渋川小野上中2年 後藤 栄貴春風を感じる朝の鳥の声
【評】心地よい風に吹かれ、春の到来を実感した朝。あちこちから聞こえてくる鳥たちのさえずりも、どことなくうきうきしているようです。
   渋川小野上中3年 佐藤 未菜夕日受け静かに光る教室や
【評】卒業間近のさびしさが、文字通り静かににじみ出ているようです。佐藤さんの喜びも悲しみも、すべて知っている教室なのですものね。
   渋川小野上中3年 朝比奈明子すみれ咲くつぼみの中で春抱いて
【評】寒さに耐えながら、つぼみの中に少しずつ春の息いぶき吹を蓄え、今、ここに美しく花開いたスミレ。朝比奈さんの姿が、自ずと重なります。
   渋川小野上中3年 佐藤 絵理伸びかけの水仙の芽が雨誘う
【評】ひと雨ごとに春が近づき、そのたびにスイセンの芽も伸びてゆきます。もちろん、雨は植物だけでなく、私たちの心も潤うるおしてくれます。
      六合中3年 本多 知紀ふと見上げる卒業前の青い空
【評】卒業間近の作者には、空の青さが、かえって胸にしみるのです。美しくも切ない俳句だと思います。
      妙義中3年 佐藤佳那実卒業式もう戻れない三年間
【評】「もう戻れない」という述懐から、作者の万感の思いが伝わります。何だか目頭が熱くなりました。